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業務妨害罪とは?威力業務妨害罪と偽計業務妨害罪の違いや事例

業務妨害罪

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

業務妨害罪とは

1.業務妨害罪の要件

業務妨害罪の要件は、人の業務を妨害することです。「人」は自然人だけではなく、法人その他の団体も含まれます。

 

 

2.業務妨害罪の「業務」とは

業務妨害罪の「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して行う業務のことです。

 

 

会社や店の営業活動が典型的な業務ですが、営利目的の活動に限られません。例えば次のような活動も業務妨害罪の業務にあたります。

 

・政党の政治活動

・労働組合の組合活動

・学校の教育事業

・NPO法人の活動

 

 

もっとも個人的な趣味や娯楽は業務にはあたりません。

 

3.業務妨害罪の「妨害」とは

業務妨害罪の妨害は、実際に人の業務を妨害することではなく、妨害するおそれがある行為で足りるとされています。

 

 

妨害するおそれがある行為をすれば、実際は被害者の業務に何ら影響が生じなかった場合でも業務妨害罪が成立します。

 

 

4.業務妨害罪と告訴

業務妨害罪は被害者の告訴がなくても起訴できる非親告罪です。実務でも告訴状が提出されるケースは少ないです。ただ、被害届も出ていなければ事件化する可能性は低いでしょう。

 

 

5.業務妨害罪の種類

業務妨害罪には威力業務妨害罪と偽計業務妨害罪の2つのタイプがあります。

 

 

どちらも業務を妨害するという点では同じですが、妨害の手段が異なります。「威力」で業務を妨害するのが威力業務妨害罪、「虚偽の風説」または「偽計」で業務を妨害するのが偽計業務妨害罪です。

 

 

6.威力業務妨害罪と偽計業務妨害罪の違い

威力業務妨害罪と偽計業務妨害罪の違いは、被害者にプレッシャーをかけるか否かです。

 

 

被害者にプレッシャーをかけて業務を妨害するのが威力業務妨害罪、それ以外の方法により業務を妨害するのが偽計業務妨害罪です。

 

 

7.業務妨害罪の罰則

威力業務妨害罪も偽計業務妨害罪も罰則は同じで、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

 

 

8.業務妨害罪の時効

威力業務妨害罪も偽計業務妨害罪も時効は3年です。

 

 

これらの犯罪は民事の不法行為にもあたります。民事の時効は被害者が損害と加害者を知ったときから3年または妨害行為のときから20年です。

 

 

威力業務妨害罪とは

1.「威力」とは

威力業務妨害罪の「威力」とは、人の意思を制圧するような勢力のことで、わかりやすく言うと相手にプレッシャーをかけることです。

 

 

客観的にプレッシャーを受けるような行為であれば、実際にプレッシャーを受けていなくても威力にあたります。

 

 

【威力の具体例】

①暴行・脅迫によってプレッシャーをかける

②大声を上げてプレッシャーをかける

③物を壊すことによりプレッシャーをかける

④集団によりプレッシャーをかける

 

 

2.威力業務妨害罪の具体例

①暴行・脅迫によるもの

業務中のバスの運転手を殴打した

 

 

②大声を上げるもの

長時間にわたって店に居座り大声で理不尽なクレームを言い続けた

 

 

③物に向けられたもの

電車の線路に置き石をした

 

 

④集団によるもの

駅の構内において多数でデモ行進したり座り込みをした 

 

 

⑤その他

猫の死がいを同僚の事務机の引き出しに入れた

 

偽計業務妨害罪とは

1.偽計業務妨害罪の2つの種類

偽計業務妨害罪は、虚偽の風説を流布したり、偽計を用いることによって人の業務を妨害することです。

 

 

2.「虚偽の風説を流布」とは

「虚偽の風説」とは客観的な真実に反することをいいます。そのため、真実を言っても偽計業務妨害罪にはなりません。

 

 

「流布」とは不特定または多数の人に伝わることを言います。加害者が不特定多数の人に直接伝える必要はなく、順次、伝わっていって結果的に不特定多数の人に広まる場合も「流布した」といえます。

 

 

虚偽風説の流布は偽計の一例であり、偽計の中に含まれるというのが通説です。

 

 

3.「偽計」とは

「偽計」とは威力以外の不正な手段を用いることです。具体的には、人を欺いたり、錯誤や不知を利用したり、誘惑したり、策略を講じること等です。

 

 

4.偽計業務妨害罪の具体例

・電話料金を免れるためにマジックホンを電話回線にとりつけた

・店の入り口付近に「本日休業」と書いた紙を掲示した

・デパート売り場に置かれた商品の布団に多数の縫い針を混入した

・有線放送用の電線をひそかに切断した

 

 

電話による業務妨害

電話を手段とする業務妨害をまとめると次のようになります。

 

 

1.犯行予告

イベントの主催者や市役所、学校等に電話して、爆破予告や殺害予告をした場合は、威力業務妨害罪が成立します。ネット掲示板やSNSに犯行予告の書き込みをした場合も同様です。

 

 

2.過度のクレーム

店に何度も電話し執拗にクレームを言い続けた場合は、威力業務妨害罪が成立することがあります

 

 

3.無言電話

店や会社に何度も無言電話をかけると偽計業務妨害罪になり得ます。中華料理店に3か月足らずの間に約970回にわたって無言電話をかけ続けたケースで、偽計業務妨害罪が成立するとした判例があります(東京高判昭和48年8月7日)。

 

 

4.虚偽の注文電話

他人の名前をかたって飲食店に電話をかけ、虚偽の注文をすると、偽計業務妨害罪になります。

 

 

5.虚偽の通報

いたずら目的で警察に嘘の通報をした場合は偽計業務妨害罪が成立します。

 

 

業務妨害罪の関連犯罪

1.信用棄損罪

信用棄損罪は、虚偽の風説を流布したり、偽計を用いることによって人の信用を棄損することです。偽計業務妨害罪と手段や罰則は同じですが、結果が異なります。

 

 

人の信用とは、経済的な側面における人の社会的な評価のことです。

 

 

例えば、何の根拠もなく「あの会社は資金繰りが厳しい」とか「あの店では不良品が売られている」等とネットの掲示板やSNSに書き込むと信用棄損罪になることがあります。

 

 

2.公務執行妨害罪

公務執行妨害罪は、暴行・脅迫によって公務を妨害したときに成立する犯罪です(3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金)。

 

 

暴行・脅迫に至らない威力によって公務を妨害した場合は、警察のような権力的な公務については、自力で妨害を排除できるため業務妨害罪は成立しません。

 

 

これに対して、市役所の受付など非権力的な公務については、自力で妨害を排除できないため、業務妨害罪が成立します。

 

 

業務妨害罪の弁護活動

業務妨害罪は被害者がいる犯罪ですので、処分にあたって、「被害者に慰謝の措置をしているか」、「被害者の許しを得ているか」がポイントになります。

 

 

そのため、被害者との間で示談をとりまとめることが最も重要な弁護活動になります。

 

 

示談金の内訳は、営業上の損害や対応を余儀なくされたことに伴う費用がメインになりますが、担当者に精神的なダメージを与えた場合は慰謝料もお支払いした方がよいでしょう。

 

 

起訴前に示談が成立した場合、前科・前歴がなければ不起訴になる可能性が高いです。

 

 

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