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住居侵入罪とは?要件・罰則・時効について解説
このページでは、刑事事件の経験豊富な弁護士 楠 洋一郎が住居侵入罪の加害者側が知っておくべきことを解説しました。ぜひ参考にしてみてください!
住居侵入罪とは?要件について解説
住居侵入とは、正当な理由がないのに他人の住居に侵入することです。住居侵入罪は建造物侵入罪、邸宅侵入罪、不退去罪とあわせて刑法130条で規定されています。
【刑法130条】
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以下では住居侵入罪の要件について解説していきます。
1.「住居」とは
住居侵入罪の「住居」とは、一軒家やマンションの一室など、人が日常的に生活している場所のことです。空き家は住居ではなく「邸宅」にあたります。ホテルの客室のように、一時的であってもある程度継続的に使用されている場合は住居にあたります。
アパート・マンションの居室やベランダは、居住者の専有部分ですので、住居にあたります。
共用部分の廊下、階段、エレベーター等は、住居にあたるという考えが一般的ですが、居住者が管理している居室と異なり、管理組合等が管理しているため、邸宅や建造物にあたるとする考えもあります。
建物部分だけでなく、塀で囲まれた庭も住居の一部になります。
2.「侵入」とは
住居侵入罪の「侵入」とは、居住者の意思に反する立ち入りのことです。居住者の承諾があれば侵入にあたらず、住居侵入罪は成立しません。
承諾は居住者の真意に基づいてなされることが必要です。脅迫されて無理やり承諾させられたり、「宅急便です」と嘘を言われて承諾した場合、その承諾は無効となります。
3.「正当な理由なく」とは
住居侵入罪は正当な理由なく住居に侵入したときに成立します。
「正当な理由なく」とは「違法に」という意味です。他人の住居に承諾なく立ち入った場合は、特別の事情がない限り、正当な理由がないものとみなされます。
住居侵入罪の未遂とは?
住居侵入罪が成立するためには、住居内に体の「全部」が侵入している必要があります。
もっとも、庭やベランダも住居に含まれますので、これらのスペースに立ち入れば、たとえ室内に一歩も入っていなくても住居侵入罪は既遂になります。アパート・マンションの共用部分に立ち入った場合も既遂になります。
そのため住居侵入未遂になるのは以下のようなケースに限られます。
☑ 空き巣目的で塀をよじ登ろうとしているときに通行人に見つかり逃げた場合
☑ 侵入しようとしてドアノブを回したが鍵がかかっていて侵入できなかった場合
住居侵入罪の罰則は?
住居侵入罪の罰則は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。初犯で被害者と示談をしなかった場合、略式起訴され罰金10万円になることが多いです。
住居侵入罪は親告罪?
住居侵入罪は親告罪ではありません。そのため、被害者の告訴がなくても起訴できます。警察でも被害届はとりますが、告訴状までとることは通常ありません。
住居侵入罪と他の犯罪との関係
住居侵入は、それ自体が目的というよりも、窃盗や盗撮、不同意わいせつ等他の犯罪の手段として行われることが多いです。住居に侵入した後、目的とした犯罪を実行した場合、住居侵入罪と目的とした犯罪の両方が成立します。
刑法で、2つの犯罪が手段と目的の関係にあるときは、最も重い刑によって処断すると定められています。これを牽連犯(けんれんはん)といいます。
【刑法54条1項】 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。 |
例えば、住居に侵入した後に室内で窃盗をした場合は、住居侵入罪と窃盗罪が成立しますが、重い窃盗罪の刑罰(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)を基準として刑が言い渡されます。
住居侵入罪の時効は?
住居侵入罪の時効は3年です。
住居に侵入した後に窃盗や不同意わいせつといった他の犯罪をした場合は、住居侵入と他の犯罪は牽連犯の関係になり、重い犯罪の刑罰が科され、時効についても重い犯罪が基準になります。
事例 | 時効 |
女子トイレ(建造物)に侵入した後に盗撮をした場合 | 3年(撮影罪) |
事務所(建造物)に侵入した後に窃盗をした場合 | 7年(窃盗罪) |
住居に侵入した後に不同意わいせつをした場合 | 12年(不同意わいせつ罪) |
住居侵入後に不同意性交等をした場合 | 15年(不同意性交等罪) |
住居侵入罪で不起訴になるには?
住居侵入罪で捕まった場合、必ず処罰されるわけではありません。不起訴になれば、刑事裁判にならないため、処罰されず前科もつきません。
これに対して、起訴されれば刑事裁判になるため、無罪にならない限り、処罰され前科がつきます。起訴・不起訴を決めるのは検察官です。
検察官の取調べの時までに被害者との間で示談が成立していなければ、起訴される可能性が高いです。初犯の方の場合は、略式起訴され罰金になることが多いですが、罰金であっても前科になります。
住居侵入の被害者は、加害者と関わりたくないと思っています。そのため、示談を希望する場合は、弁護士に間に入ってもらって被害者と交渉することになります。