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介護殺人等
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
介護殺人等の類型
ケース | 成立する犯罪 | 法定刑 |
介護者が殺意をもって被介護者を殺害したとき | 殺人罪 | 死刑、無期懲役、懲役5年~20年 |
介護者が殺意なく被介護者に暴力を振るって死なせてしまったとき | 傷害致死罪 | 懲役3年~20年 |
介護者が被介護者に殺害を依頼されて殺害したとき | 嘱託殺人罪 | 懲役または禁錮6ヶ月~7年 |
被介護者の同意を得て、介護者が被介護者を殺害したとき | 同意殺人罪 |
【介護殺人等】逮捕に至る流れ
①被害者の死亡後、アザ等の異常を発見した医師の通報により、検視が行われます。
②検視により、被害者が暴行に起因する症状により死亡したものと判断されると、医師による司法解剖が行われ、被害者の死因や暴行との因果関係が調査されます。
③被疑者に対する取調べや目撃者・関係者に対する事情聴取が行われます。
④これらの捜査の結果、被疑者の暴行によって被害者が死亡したと判断されれば、極めて高い可能性で逮捕されます。
【介護殺人等】逮捕後の流れ
逮捕後に勾留され、約3週間身柄拘束された後、起訴されるか、処分保留で釈放されます。殺人罪で逮捕された後、検察官が殺意を立証できないと考えた場合、傷害致死罪で起訴されることもあります。
介護殺人・傷害致死のケースでは、被疑者も高齢者であることが多く、肉親の死亡や自身の逮捕などにより、肉体的にも精神的にも極限状態におかれていることが少なくありません。そのような状況で、殺意がなかったにもかかわらず、「死んでもいいと思っていました。」等という調書を作られてしまうと、殺人罪で起訴される可能性が高まります。
自白調書をとられていれば、刑事裁判で「殺すつもりはありませんでした」と主張しても、裁判員に納得してもらうことは難しくなります。取調べに適切に対応するためには、通常の被疑者以上に弁護士によるサポートが必要になります。
介護殺人等と裁判員裁判
殺人または傷害致死で起訴されると、いずれの場合も裁判員裁判で審理されることになります。起訴前の段階から裁 判員裁判の経験豊富な弁護士を選任した方がよいでしょう。
*嘱託殺人、同意殺人で起訴された場合は通常の裁判で審理されます。
以下では 、殺人または傷害致死で起訴されたケースを解説します。
(1)容疑を認めている場合
裁判では執行猶予の獲得を目指します。執行猶予を獲得するためには、以下の要素がポイントになります。
①犯行の悪質性(計画性・反復性の有無、凶器の有無など)。
②犯行に至る経緯や動機
③本人の反省
④遺族の思い
身内の人間によって大切な家族を奪われたご遺族も、悲しみや怒り、自責の念で憔悴しています。弁護士が間に入って、カウンセラー等の力も借りながら、加害者とご遺族の関係修復に力を尽くします。裁判では、ご本人やご家族の口から、事件についての率直な心情や関係修復へのプロセスを話してもらいます。
(2)無罪を主張する場合
無罪を主張する場合、あるいは、起訴された犯罪とは異なる犯罪が成立すると主張する場合、裁判員裁判が始まる前の準備段階(公判前整理手続)で、弁護士が裁判官と検察官に対し、具体的にどの点を争うのかを示し、争点を明らかにします。
例えば、無罪を主張するのであれば、転倒など他の機序によっても死亡したことを説明できるか否かが争点となります。殺人罪で起訴されたが傷害致死にとどまると主張する場合は、殺意の有無が争点となります。同意殺人であると主張する場合は、同意の有無が争点となります。裁判員裁判では、この争点を中心として、審理が行われることになります。
検察官は、有罪を立証するため、証拠書類を裁判所に提出したり、証人尋問を申請します。例えば、死亡に至る機序が争点となる場合、その点について鑑定医に証人として出廷してもらい、証言させることが考えられます。弁護士としては、鑑定医に対して反対尋問をして矛盾点を明らかにしたり、弁護側の協力医に証人として出廷してもらいます。
【裁判員裁判のページ】
ウェルネスの解決実績
介護傷害致死の裁判員裁判で執行猶予を獲得(このケースでは保釈も認められました)。
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