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保釈と病気
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
病気治療の必要を理由とする保釈請求
☑ 逮捕前からガンで放射線治療を受けていた
☑ 勾留中にお腹が痛くて救急搬送されたら医師に胆のう炎の疑いと言われた
☑ 留置場で血を吐いてしまった
このように、重い病気にかかっていたり、その疑いがある場合は、治療の必要性を理由として保釈請求することが考えられます。
保釈には権利保釈と裁量保釈があります。
権利保釈は、証拠隠滅のおそれといった例外的な事情がない限り許可されるタイプの保釈です。裁量保釈は、勾留が続くことによって生じる被告人の不利益などを考慮し、裁判官が適当と認めるときに許可されるタイプの保釈です。
治療の必要性を理由とする保釈は、勾留中に適切な治療を受けられない被告人の不利益に配慮するものであるため、裁量保釈になります。
⇒裁量保釈
病気治療の必要を理由とする保釈請求のポイント
病気治療の必要を理由として裁量保釈を請求する場合のポイントは次の3つです。
① 現在の健康状態を裁判所に説明する
② 留置施設で適切な対応がとられていないことを裁判所に指摘する
③ 今後の治療計画を裁判所に説明する
以下、3つのポイントを個別にみていきます。
① 現在の健康状態を裁判所に説明する
既に病院にかかっている場合は、保釈請求の際に弁護士がカルテや診断書を裁判所に提出します。
逮捕・勾留される前から通院していた場合は、通院先の病院からカルテや診断書を取り寄せます。逮捕・勾留後に留置施設から外部の病院に救急搬送された場合は、その病院からカルテを取り寄せます。
一度も病院にかかっていない場合は、本人から留置施設の職員に申し出てもらい、まず外部の病院や拘置所の医務室に連れて行ってもらい、その後にカルテを取り寄せます。
カルテの取り寄せは、本人に委任状を書いてもらい、弁護士が病院に請求します。医療機関によっては、本人の家族であれば、委任状なしで請求できるところもあります。家族に請求してもらった方が、委任状の差し入れなどに要する時間を省略できますので、よりスピーディーに保釈請求につなげることができます。
拘置所の医務室で治療を受けた場合、拘置所の窓口でカルテの開示を請求することはできません。通常は、弁護士照会によってカルテ開示を請求しますが、弁護士照会は時間がかかるので、公判でも治療の必要性を主張することを前提として、裁判所による公務所照会を利用することも考えられます。
② 留置施設で適切な対応がとられていないことを裁判所に指摘する
本人が重い病気にかかっているか、そのおそれがあるにもかかわらず、留置場や拘置所で適切な治療を受ける機会が与えられていない時は、弁護士がそれらの事情を裁判所に指摘します。
留置場の職員は、必要に応じて本人を病院に連れて行ってくれたり、医師に処方してもらった薬を本人に交付してくれますが、精密検査や入院、手術の手配までしてくれるわけではありません。
拘置所内の医務室でも、レントゲンやCTスキャンなどの基本的な検査はしてくれますが、精密検査や手術まではしてくれません。また、拘置所の職員が外部の専門病院に連れて行ってくれることもめったにありません。
裁量保釈を請求するにあたって、このような事情を弁護士が裁判所に指摘します。
③ 今後の治療計画を裁判所に説明する
保釈請求に際して、保釈後に病気の治療をどのように行っていくのかを弁護士が裁判所に説明します。
本人が身柄拘束されている状態で、いきなり入院や手術の予約はできませんので、まずは保釈後に病院に行き、医師の診察を受けることになります。保釈後に行く病院をあらかじめ決めておき、保釈されたらすぐに身元引受人が本人を病院に連れて行きます。
逮捕前から通院している病院がある場合は、保釈後もその病院に通院することになります。
留置場から救急搬送された場合は、まずは搬送先の病院に行くことになるでしょう。事前に弁護士がその病院に連絡し、保釈後に行ってもよいかを確認します。行ってもよい場合は、病院の職員とのやりとりを電話聴取事項報告書にまとめ、保釈請求の際に裁判所に提出します。
病気治療の必要と逃亡の可能性
裁量保釈にあたっては逃亡のおそれがあるか否かも考慮されます。
重い病気にかかっていたり、そのおそれがある場合は、逃亡の可能性も低くなると考えられます。なぜなら、逃亡することにより、事実上、治療を受けることができなくなるためです。
裁量保釈の請求に当たっては、病気治療の必要だけではなく、逃亡のおそれが低くなることもあわせて主張すべきです。
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