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恐喝罪とは?成立要件や恐喝罪になる言葉について解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
目次
恐喝とは?弁護士が解説
恐喝とは、相手を怖がらせる程度の脅迫や暴行を加え、「金をよこせ!」とか「借金を免除しろ!」といった財産上の要求をすることです。「怖がらせる」という点がポイントです。
恐喝行為により金品を交付させた場合は恐喝罪が成立します(刑法249条項)。借金の免除など財産上の利益を得た場合は恐喝利得罪が成立します(刑法249条2項)。
【刑法】
引用元:刑法|e-Gov法令検索 |
恐喝罪の罰則は?
恐喝罪の刑罰は10年以下の懲役です。脅迫罪と異なり罰金刑がありませんので、簡易な略式裁判で審理されることはなく、起訴されれば公開の法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されます。
恐喝罪の成立要件は?
恐喝罪の成立要件は、相手を怖がらせる程度の脅迫や暴行を加え、金品を交付させたり、財産上の利益を得ることです。
1.「脅迫」とは
恐喝罪の脅迫とは、相手を怖がらせるような害悪の告知です。害悪の告知が相手を怖がらせるにとどまらず、反抗できなくなる程度にまで達していると、恐喝ではなくより重い強盗になります。
害悪は明示する必要はなく、「言う通りにしないとどうなるかわかってるんだろうな!」等と暗示する方法でもよいとされています。また、言葉や文書ではなく、動作や態度によって害悪を告知してもよいとされています。
恐喝罪の脅迫にあたるか否かは、行為者と被害者との関係(以前から脅されていたか)や行為者の立場(犯罪グループの一員か)、当時の状況(ホテルのロビーか密室か)等の事情をふまえて判断されます。
2.「暴行」とは
恐喝罪の暴行とは、相手を怖がらせる程度の有形力の行使をいいます。暴行が相手の犯行を抑圧する程度に達していれば、恐喝ではなく強盗になります。
3.「怖がらせる」とは
恐喝といえるためには、相手を怖がらせる必要があります。不安にさせたり困惑させるだけでは恐喝にはなりません。相手を怖がらせる程度かどうかは、「一般の人が怖いと思うかどうか」で判断します。
たまたま相手が勇気のある人で怖いと思っていなくても、一般の人が怖いと思うような言動があれば、恐喝になります。
逆に一般の人が怖いと思うような言動でなくても、相手が非常に憶病であり、加害者がそのことを知って脅迫や暴行を加えた場合は、恐喝になります。
恐喝未遂とは?
脅迫や暴行によって財産的な要求をしたけれども、相手が要求に従わなかった場合は恐喝未遂罪が成立します。
相手が怖いと思っていなかったが、「面倒くさい」等の理由で金品を交付した場合、恐喝行為と金品の交付との間に因果関係がないため、恐喝未遂罪になります。
恐喝未遂罪の罰則も10年以下の懲役ですが、未遂に終わったことを理由として5年以下の懲役に減軽することできます(未遂減軽)。
【刑法43条】
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【刑法68条3号】
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恐喝罪の時効
1.刑事事件の時効
恐喝罪の時効は7年です。恐喝未遂罪も7年です。時効が過ぎると起訴できなくなるため、逮捕されたり家宅捜索されることはありません。
2.民事事件の時効
恐喝は民法上の不法行為(民法709条)になるため、民事で損害賠償請求されることもあります。
損害賠償請求権の時効は、被害者が損害及び加害者を知ったときから3年です。3年以内であっても恐喝被害を受けたときから20年が経過すると、賠償請求権は時効により消滅します。
恐喝罪になる言葉
次のような言葉は恐喝になり得ます。被害者がお金を払えば恐喝罪、払わなくても恐喝未遂罪になります。
①カツアゲ
路地裏で被害者を取り囲み「1万円を出さないとボコボコにするぞ!」と言った。
②ぼったくり
キャバクラで法外な金額を請求し「払うまで帰さないぞ!」とすごんだ。
③盗撮ハンター
盗撮している人を見つけ、被害者の友人のふりをして「被害者は100万円の示談金を払えば許すと言っている。払わなければ警察に突き出す。」と言った。
④美人局
共犯女性と性交した男性に対して、「俺の女に手を出したな。妻にばらされたくなければ50万円を払え。」と言った。
⑤いきすぎた権利行使
「借金を返さないと拉致するぞ。」と言って、貸していた100万円を取り立てた。
【恐喝罪になる言葉】
カツアゲ | 「1万円を出さないとボコボコにするぞ!」 |
ぼったくり | 「払うまで帰さないぞ!」 |
盗撮ハンター | 「示談金100万円を払わなければ警察に突き出す。」 |
美人局 | 「俺の女に手を出したな。妻にばらされたくなければ50万円を払え。」 |
いきすぎた権利行使 | 「借金を返さないと拉致するぞ。」 |
恐喝罪の証拠は?
恐喝罪の証拠としては、SNSやメール、ICレコーダー、防犯カメラが一般的です。これらの証拠がなければいきなり逮捕されることはまずありません。
ただ、暴力団や美人局、盗撮ハンターといった犯罪グループに属している場合は、被害者の供述だけで逮捕されることがあります。
被害者の供述しか証拠がないケースで起訴され無罪を主張する場合は、被害者(相手方)の証人尋問が実施されます。相手方は検察官の主尋問で恐喝された状況を証言しますので、反対尋問で弁護士がその証言を崩せるかがポイントになります。
恐喝罪と脅迫罪の違いは?
恐喝罪も脅迫罪も脅迫を手段とする点では同じですが、次の3つの違いがあります。
1 恐喝罪は金品などを要求する
脅迫罪は相手を怖がらせるだけですが、恐喝罪は相手を怖がらせた上でさらに金品や財産上の利益を要求する犯罪であり、より被害が大きいため、刑罰も重くなります。
恐喝罪 | 10年以下の懲役 |
脅迫罪 | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
2.恐喝罪の方が脅迫対象が広い
脅迫罪の脅迫は、被害者やその親族に害を加える内容であることが必要です。これに対して、恐喝罪にはそのような制限はありません。
例えば、「100万円を払わないとお前の恋人に危害を加える。」と言って怖がらせた場合、恋人は親族ではないため脅迫罪にはなりませんが、恐喝罪にはなります。
3 恐喝罪の害悪の内容には制限がない
脅迫罪の脅迫は、生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加えるものに限定されています。これに対して、恐喝罪の脅迫にはそのような制限はありません。
例えば、相手に「告訴する」と告知することも恐喝罪の脅迫になり得ます。
取り立ては恐喝罪になる?
相手に対して貸付金や売掛金がある場合でも、回収の仕方が社会の常識に照らして許される限度を超えている場合は、恐喝になります。
例えば、被害者に対して100万円を貸している加害者が、「150万円を払わないと家に火をつけるぞ!」と言って怖がらせ、150万円を払わせた場合、回収の仕方が違法であるため、貸付金を超える50万円だけではなく、貸付金に相当する100万円についても恐喝罪が成立します。
恐喝罪の逮捕率は?
2023年に刑事事件になった恐喝事件のうち、被疑者が逮捕されたケースは73%です。恐喝罪で逮捕された後、勾留されたケースは97%です。勾留期間(原則10日・最長20日)が延長されたケースは85%です。
*本ページの数値は2023年検察統計年報に基づいています。
恐喝罪は脅迫罪や強要罪に比べて勾留される確率が非常に高くなっています。勾留された場合は、弁護士が被害者との間で示談をとりまとめ早期釈放を目指します。
恐喝罪の起訴率は?
2023年に検察庁で取り扱われた恐喝事件のうち、起訴されたケースは30%です。恐喝罪は、脅迫罪と異なり罰金刑がありませんので、起訴されれば、全て正式裁判となり、検察官から懲役刑を請求されることになります。
起訴された場合は弁護士が保釈請求を行います。