カラオケボックスでの不同意わいせつ事件-対処法を弁護士が解説

カラオケボックスでの不同意わいせつ事件

 

☑ 職場の女性とお酒を飲んでカラオケボックスに行った

☑ 盛り上がったのでキスをして胸をもんだ

☑ 翌日、女性から「警察に訴えます」というLINEがきた

☑ 1週間後に警察から「事情を聴きたい」と電話があった

☑ この後どうなるのか不安でたまらない

 

 

カラオケボックスで女性に対してわいせつ行為をした後にトラブルになるケースが少なくありません。このページでは弁護士 楠 洋一郎カラオケボックスでの不同意わいせつ事件にどう対処すべきかについて解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

 

カラオケボックスでの不同意わいせつ事件の特徴

カラオケボックスでの不同意わいせつ事件の特徴は次の3つです。

 

 

①職場の同僚など知り合い同士のことが多い

②カラオケボックスに行く前に男性も女性も飲酒していることが多い

③わいせつ行為をしたことは事実だが同意の有無で争いになることが多い

 

 

カラオケボックスでのわいせつ行為は不同意わいせつ罪になる?

1.不同意わいせつ罪とは

不同意わいせつ罪は、2023年6月の刑法改正で、従来の強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪を統合する形で新設されました。不同意わいせつ罪は、同意のない状況でのわいせつ行為を処罰しています。

不同意わいせつ罪とは?刑法改正でどう変わる?弁護士が解説

 

 

2.不同意わいせつにつながる8つの行為・事由

不同意わいせつ罪を定めた刑法176条は、次の8つの行為・事由を列挙し、これらのいずれかによって、相手が同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状況でわいせつ行為をした者を処罰しています。

 

 

【刑法176条1項】

一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

 

 

3.不同意わいせつ罪になり得るケース

カラオケボックスでわいせつ行為をした場合に、不同意わいせつ罪になり得るのは次の3つのケースです。

 

 

①女性が嫌がっているのに強引にわいせつ行為をした場合

②泥酔している女性にわいせつ行為をした場合

③とっさにわいせつ行為をした場合

 

 

これらのケースが不同意わいせつのどの要件に該当し得るのかを以下にまとめました。

 

 

 

該当し得る不同意わいせつの要件

①強引にわいせつ行為をした

暴行を用いること(1号)

これらのいずれかによって、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした

②泥酔している相手にわいせつ行為をした

アルコールを摂取させること又その影響があること(3号)

③とっさにわいせつ行為をした

同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと(5号)

 

 

カラオケボックスでの不同意わいせつで逮捕される?

カラオケボックスでわいせつ行為をした場合、不同意わいせつ罪で立件されても、逮捕される可能性は高いとまではいえません。その理由は、不同意わいせつを立証することが必ずしも容易ではないからです。

 

 

典型的な不同意わいせつは、路上で見知らぬ女性に対してわいせつ行為をするケースです。

 

 

これに対して、カラオケボックスでの不同意わいせつは、お互いに面識のある男女が、飲酒をした後に、2人で盛り上がっていることが多く、女性側も軽いハグなどある程度のスキンシップは許容していることが多いです。

 

 

そのため、同意があったかなかったかの境界が不明確で、立証が難しいという特徴があります。その上、女性も酔っており、記憶が断片的だったり不正確だったりして、供述の信用性に疑問があるケースも少なくありません。

 

 

カラオケボックスでの不同意わいせつにはこのような特徴があるため、逮捕の要件である「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」を立証するのが容易ではなく、逮捕までいくケースは多くはありません。

 

 

もっとも、わいせつ行為の前後で女性にケガを負わせた場合や睡眠薬を飲ませた場合は、逮捕される可能性が高くなります。

 

 

カラオケボックスでの不同意わいせつ-男性がすべき3つのこと

女性とカラオケボックスでわいせつな行為をした後に、女性から「警察に訴える」と言われたり、警察から電話がかかってきた場合、まずは以下の3つのことをしてください。

 

 

1. 当日女性と会ってから別れるまでの状況を記録しておく

男性の方も酔っており記憶があいまいなことがあるので、今後の取調べに適切に対応するため、当日の状況をなるべく詳しく記録しておいてください。

 

 

女性と知り合ったきっかけや関係性についてもまとめておくとよいでしょう。弁護士に相談に行く際は、これらの記録を持参してください。

 

 

2.女性とやりとりとりしたLINEやメールを全て保存しておく

カラオケボックスを出た後のやりとりが特に重要です。女性から男性に対して、「今日は楽しかった、ありがとう!」といったメッセージが送信されている場合は、同意があったという判断につながります。

 

 

3.カラオケボックスやその前に行った飲食店の領収証を保存しておく

実際はそれほど酔っていないのに、女性から「たくさんお酒を飲まされ泥酔していた。」等と主張された場合、領収証を保存しておけば、客観的に反論できる場合があります。

 

 

カラオケボックスでの不同意わいせつ-女性の同意があるケース

「カラオケボックスで女性の同意のもとにわいせつ行為をした。女性は泥酔しておらず、嫌がってもいなかった。とっさに女性の体に触ったわけでもない。」

 

 

このようなケースでは、不同意わいせつ罪は成立しませんので、原則として以下の方針で対応することになります。

 

 

1. 取調べでは自分が体験した事実を正直に供述し、署名・指印はしない

否認事件の場合は黙秘で対応するのが基本です。

 

 

もっとも、カラオケボックスでの不同意わいせつ事件では、警察も一方的に「お前が悪い」と決めつけたりせず、男女双方の話を聞いて慎重に判断することが多いため、黙秘せずに自分が体験した事実を素直に話すべきです。

 

 

ただ、何度も取調べを受けているうちに、知らず知らずのうちに供述に矛盾が生じてしまったり、本人の思い違いで客観的な証拠に反する供述をしてしまうことがありますので、供述調書への署名・指印は拒否すべきです。

 

 

署名・指印のない供述調書は刑事裁判の証拠とすることができませんので、それらによって有罪とされることはありません。

 

 

警察が一方的に女性に肩入れしてこちらの話を聞いてくれない場合は、黙秘で対応することもあります。まずは刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。

 

 

2. 弁護士から警察に証拠保全を要請する

防犯カメラの映像は1、2週間で上書きされ消えてしまいます。当日、女性と一緒に行った飲食店やカラオケボックスの受付、移動した経路上に設置されている防犯カメラの映像を保存しておくよう、弁護士が警察に要請します。

 

 

カラオケボックスに入る際の女性の足どりがしっかりしており、一緒にカラオケボックスから出た後も二人で談笑している様子が撮影されていれば、男性側に有利になります。

 

 

3. 示談交渉はしない

わいせつ行為をしても女性の同意がある以上、お詫びをする理由がないため、示談交渉をする必要はありません。示談交渉を持ちかけることにより、不同意わいせつを認めた形になってしまいます。

 

 

そのような状況でもし示談が成立しなければ、検察官に「強引にわいせつ行為をした自覚があるから示談交渉をしたんじゃないんですか。」と思われ、起訴される可能性が高くなります。

 

 

カラオケボックスでの不同意わいせつ-示談した方がよいケース

1.示談した方がよい3つのケース

カラオケボックスで女性にわいせつ行為をした場合、以下の3つのケースでは示談した方がよいでしょう。

 

 

①強引にわいせつ行為をした自覚があるケース

②女性が泥酔しており抵抗できない状態でわいせつ行為をした自覚があるケース

③とっさにキスしたり胸等を触った自覚があるケース

 

 

2.示談のメリット

被害届が出ていない時点で「被害届を出さない」という内容で示談がまとまれば、刑事事件にはならず、取調べも実施されません。事件化しないので、前科だけではなく前歴もつきません。

 

 

被害届が出た後に示談をした場合、既に事件になっている以上、取調べを受けていただく必要はありますが、書類送検後に不起訴になる可能性が高いです。

 

 

3.示談交渉は弁護士に依頼する

カラオケボックスでの不同意わいせつ事件の場合、当事者同士が知り合いで連絡先も知っていることが多いですが、弁護士を通さずに、男性から女性に直接連絡することは避けた方がよいです。

 

 

女性が怖がり示談に消極的になることが考えられますし、勝手に被害者に接触すると、証人威迫のおそれが推認され、逮捕のリスクが高まります。示談交渉は弁護士を通じて行ってください。

示談の相談は弁護士へ

 

 

カラオケボックスでの不同意わいせつ-覚えていないケース

「女性の同意があったような気もするが酒に酔っておりよく覚えていない」

 

 

このようなケースでは、示談に向けて動くかどうかは、事件直後のやりとりや当日の飲酒量、警察の対応状況、男性本人の意向などを踏まえて、慎重に判断した方がよいでしょう。まずは弁護士にご相談ください。

 

 

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