痴漢冤罪で逮捕されたときの対処法を弁護士が解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

痴漢冤罪で逮捕された後の流れ

☑ 痴漢冤罪で逮捕された

☑ 当番弁護士に「認めないと出れない」と言われた

☑ 悔しいが早く出たいので認めたい

 

満員電車で通勤している男性であれば、誰しもこのような状況に巻き込まれてしまう可能性があります。

 

痴漢の疑いをかけられた場合、「冤罪だから逮捕されない」というわけではありません。警察は女性の言い分にそって判断する傾向があるため、男性がいくら冤罪であることを主張しても逮捕されてしまうことがあります。

 

逮捕されると3日以内に勾留されるかどうかが決まります。勾留されると原則10日、最長20日にわたって拘束されます。そのまま起訴されれば、保釈されない限り、判決の日まで勾留され続けることになります。

 

痴漢冤罪で勾留を避けるためには認めるしかない?

一般的には、被疑者が容疑を否認している場合は、認めている場合に比べて勾留される可能性が高くなります。

 

否認していると、「被疑者が関係者に働きかけたりして証拠隠滅を図る可能性が高い」と裁判官によって判断されやすくなるためです。

 

しかし、痴漢事件の場合は、他の多くの刑事事件と異なり、必ずしも「否認したら即勾留」ということにはなりません。

 

痴漢トラブルは満員電車で見ず知らずの人同士で発生することが多いです。そのため、容疑をかけられた男性は、被害を訴えている女性の氏名、住所、連絡先などを把握しておらず、再び接触してお礼参りをしたり、供述変更を迫ることは考えづらいためです。

 

そのため、痴漢冤罪のケースでは、否認していても勾留されずに釈放されることが多いです。

 

最近では、「女性への再接触が難しい」という痴漢事件の特質をふまえ、全国の裁判所で否認していても勾留しない運用が定着しつつあります

 

当番弁護士の中には、「認めないと勾留される」とアドバイスする方もいるようですが、正確な情報ではありませんのでご注意ください。

 

痴漢冤罪のケースでは否認していても勾留されずに釈放される可能性が高いですが、釈放のタイミングは自白しているケースに比べて少し遅れることが多いです。

 

被疑者が自白しているケースでは、そもそも検察官が勾留請求しないことも多々あります。その場合は、裁判所に行く前に釈放されます。

 

一方、否認しているケースでは、検察官が勾留請求しないことはまず考えられません。そのため、釈放のタイミングは裁判官の勾留質問を受けた後になります。

 

時間的には、自白事件に比べて数時間から1日程度釈放が遅れることになります。

 

痴漢冤罪で逮捕された場合の否認のしかた

痴漢冤罪のケースでは否認していても勾留されずに釈放されることが多いです。それでは痴漢冤罪で逮捕された場合、どのように否認すればよいのでしょうか?

 

結論からいうと黙秘で対応することになります。

 

痴漢冤罪で逮捕された場合に最も避けなくてはならないのは、捜査機関に「痴漢しました」と認める内容の自白調書をとられないようにすることです。

 

ひとたび自白調書をとられてしまうと、刑事裁判で挽回することが難しくなります。黙秘することにより事件についての情報を何も提供しなければ、捜査機関としても自白調書のとりようがありません。

 

「痴漢していないという言い分を述べても問題ないのでは?」と思われるかもしれません。

 

しかし、被疑者が自己の言い分を取調官に話すと、今度は取調官がその言い分を女性にフィードバックして、被疑者の言い分を矛盾なく説明できるような被害者調書を作成します。

 

そのため、黙秘することにより、捜査機関に一切のヒントを与えないことが重要です。

黙秘について

 

痴漢冤罪で逮捕されたときの黙秘のしかた

痴漢冤罪で逮捕された場合は黙秘するべきです。それでは、具体的にどのように黙秘すればよいのでしょうか?

 

最も徹底した黙秘は完全黙秘です。完全黙秘とは取調べの最初から最後まで一言も話さないことです。それでは、痴漢冤罪で逮捕された場合も完全黙秘をした方がよいのでしょうか?

 

結論からいうと完全黙秘をするべきではありません。

 

完全黙秘をすると、被疑者の氏名や住所、勤務先、家族構成などを確認することができず、裁判官も被疑者がどういう人物なのか判断することができません。最低限の人となりもわからなければ、検察官の勾留請求を認める可能性が高くなります。

 

そのため、氏名、住所、勤務先、家族構成など身上関係の情報については、黙秘するのではなく正直にお話しください。

 

身上関係の情報は痴漢事件とは関係がないため、正直に話しても不利益にはなりません。また、勤務先を話したからといって、公務員でない限り、警察や検察が勤務先に連絡することは通常ありません。

 

取調官に身上関係の話をすると、それに基づき身上調書が作成されますが、この調書にサインしても問題ありません。

 

これに対して、問題となっている痴漢事件については全て黙秘して供述しないようにしてください。取調官から痴漢事件について記載されている調書にサインするように言われてもサインしないようにしてください。

 

【まとめ】痴漢冤罪で逮捕されたときの具体的な対応例

痴漢冤罪で逮捕された後の取調べには次のように対応することになります。

 

取調官:あなたの氏名は何ですか?

被疑者:〇〇です←正直に答える。

取調官:住所はどこですか?

被疑者:〇〇です←正直に答える。

取調官:勤務先はどちらですか?

逮捕された方:株式会社○○です←正直に供述する

取調官:女性は電車の中であなたにお尻を触られたと言っていますが事実ですか?

逮捕された方:黙秘しますor言いたくありません←供述しない

取調官:どうして黙秘するんですか?

逮捕された方:それも黙秘しますor 言いたくありません←黙秘した理由を言う必要はありません。

 

痴漢冤罪で釈放された後の流れ

釈放されたからといって刑事手続が終了するわけではありません。在宅事件として引き続き捜査が進められます。

 

釈放後の取調べについても黙秘で対応することが基本です。被疑者に有利な事情は弁護士が意見書にまとめて検察官に提出することになります。

 

ウェルネスの弁護士は多くの痴漢冤罪を取り扱い、多数の早期釈放や不起訴獲得を実現しています。ご家族が痴漢で逮捕された場合は(03-5577-3613)へお電話ください。