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検事と副検事の違い-採用資格・収入・退職後の生活など

 このページは弁護士 楠 洋一郎が監修しています。

 

刑事事件で弁護士と並んで欠かせない存在は、検事と副検事です。検事と副検事は、検察官の官名の一つですが、その違いについて、知り合いの元検察官から聞いた話をふまえてご紹介します。

 

検事と副検事の5つの違い

 

 

1.採用資格の違い

  検事と副検事の採用資格には大きな違いがあります。

 

(1)検事の採用資格

原則として、法科大学院修了、または、司法試験予備試験合格を経た後、司法試験に合格した者で、最高裁判所司法研修所の司法修習を修了した者が検事として採用されます。

 

しかし、司法修習を修了したからといって、必ずしも検事になれるわけではありません。 裁判官と同様、事実上の任官拒否があり、司法修習のときの検察教官(検事)が司法修習生の成績や実務修習での仕事ぶり、周囲との協調性を評価した上、検察上層部で内諾が得られた者でなければ、検事に任官できません

 

また、司法試験合格者以外の検事任官者もいます。3年以上の副検事の職にある者のうち検察官特別考試に合格した者、3年以上政令で定める大学において法律学の教授又は准教授の職にある者のうち検察官特別考試に合格した者も、検事に採用されることがあります。

 

検察官特別考試は、毎年7月から10月にかけて行われていますが、数年に1人か2人程度しか合格できないという超難関試験です。

 

(2)副検事の採用資格

副検事選考試験に合格した者が副検事として採用されます。

 

副検事選考試験の受験資格が与えられるのは公務員ですが、主に、10年以上の経験を積んだ上、昇級に関する条件に合致した検察事務官、裁判所書記官、裁判所書記官補、家庭裁判所調査官が受験しています。

 

また、警察官、麻薬取締官など,検察、裁判所出身者以外の一部の公務員も受験できますが、誰でも受験できるわけではなく、例えば、警察官の場合、「警部以上の階級で3年以上在職」しなければ受験資格が与えられません。

 

そのため,検察,裁判所以外の公務員の受験者のほとんどは、20年程度の経験と昇格を積まないと副検事選考試験の受験資格が与えられません。

 

公務員以外でも副検事選考試験を受験できる人がいます。それは、「司法試験の合格者」と「3年以上政令で定める大学において法律学の教授又は准教授の職にある者」です。

 

 私の知り合いの元検察官によると、ある大学商学部の教授だった人が副検事になったケースがあるそうです。任官拒否され検事になれなかった司法修習生がどうしても検察官になりたいという夢を捨て切れず、副検事選考試験を受験して、副検事になった例もあるそうです。

 

なお、副検事選考試験は、筆記試験、口述試験のほかにも、もう1つ、大きな試練があります。それは、口述試験の前に行われるもので、所属する検察庁を管轄する高等検察庁の検事長によって行われる検事長面接です。

 

検事長面接とは、検事長のほか、高等検察庁次席検事、高等検察庁の部長検事が面接官となり、人物、素行、実務能力や処理能力等の調査書を作成するために行われる面接です。

 

この面接を通じて、検察官としての資質や検察官にふさわしい人物か否かが判定されます。検事長面接で評価が悪い場合、試験の点数が合格点であっても決して副検事になれません。

 

合否の最終判定は、検事長面接による調査書、筆記試験、口述試験の結果を踏まえ、法務省内設置の審議会「検察官・公証人特別任用等審査会」で決定されます

 

「秋霜烈日」と呼ばれる検事バッジの違い】

昭和25年に定められた検察官記章規程に「紅色の旭日の周囲に白色の菊花弁十二弁及び金色の菊葉四葉を配した七宝製」とあります。「金色の菊葉四葉」の部分が検事バッジです。この「金色」が「銀色」になっているものが副検事バッジです。 

 

2.所属庁の違い

検事は、主に、地方検察庁、地方検察庁支部に所属し、地方裁判所、地方裁判所支部に対応する事件の捜査、公判を担当しています。副検事は、主に、区検察庁に所属し、簡易裁判所に対応する事件の捜査、公判を担当しています。

 

※ 簡易裁判所は、罰金以下の刑にあたる罪及び窃盗や暴行など、比較的軽微な罪の刑事事件を審理します。

 

しかし、検事と副検事の違いは、「所属のみ」であり、捜査や公判については、基本的に、検事も、副検事も同じ仕事をしています。

 

そのため、地方検察庁、地方検察庁支部に所属する検事は「所属する検察庁に併設する区検察庁」の「検察官事務取扱」の併任辞令を受けており、例えば、東京地方検察庁の検事が、暴行の事件を東京簡易裁判所に略式命令請求する場合、「東京区検察庁検察官事務取扱検事」として略式命令請求して事件処理をします。

 

また、区検察庁に所属する副検事は「所属する区検察庁に併設する地方検察庁」の「検察官事務取扱」の併任辞令を受けており、例えば、東京区検察庁の副検事が、常習累犯窃盗の事件を東京地方裁判所に公判請求する場合、「東京地方検察庁検察官事務取扱副検事」として公判請求して事件処理します。

 

参考までに、東京地検の場合、地検の事務取扱の発令を受けている副検事は、東京地検本庁と立川支部に所属する副検事のみであり、武蔵野区検察庁、八王子区検察庁、町田区検察庁の副検事には事務取扱の発令はありません。

 

3.転勤の違い

検事と副検事の大きな違いに、「転勤」があります。

 

検事の場合、全国の検察庁のほか、法務省内の部局(通称「赤レンガ組」と言われています。)に異動することもあります。他に「判検交流」といって、一定期間、裁判官として仕事をする検事もいます。

 

弁護士事務所に出向して弁護士として活動し、また検察庁に戻る方もいます。

 

そのほかの異動として、内閣調査官、司法修習研修所の検察教官、国税不服審判所の審判官、各省庁本省の審議官や課長補佐、金融庁、証券取引等監視委員会、公正取引委員会、在外公館の一等書記官、法テラスへの出向、法科大学院の准教授などがあります。

  

副検事の場合、検察内部の異動に限られます。異動先については、出世街道にのった副検事を除いて自分の居住地を管轄する高等検察庁管内の異動が原則です。

 

他省庁への異動もほぼありません。なお、特に優れた副検事は、最高検察庁、高等検察庁のポスト、法務省内の法務総合研究所の教官になるポストが用意されます。

 

4.収入の違い

給与は、「検察官の俸給等に関する法律」で定められています。検事と副検事の収入の違いでいえるのは、昇給速度であり、検事の方が早いです。ただし、ある程度の上位の号俸になると、昇給速度は、副検事と同じく遅くなります。

 

30代の検事、副検事の昇給速度で比較すると、30代の検事の場合、個人差はあるものの年1回又は2回の昇給があります。30代の副検事の場合、個人差に関係なく昇給が2年から2年半に1回になります。

 

任官して15年から20年程度の一般の検事、副検事の月給は、共に手取り50万円から60万円の範囲です。この幅があるのは、勤務地によって「調整手当」に差があるからです。 

 

例えば、東京地検管内の勤務の場合、調整手当は本俸の18パーセントになり、この金額が本俸に加算されますが、田舎の検察庁では調整手当がゼロのところもあるため、給料にも地域格差があるのです。

 

なお、この「本俸+調整手当」は、ボーナスの計算にも適用されるそうです。

 

年収ベースでは、検事、副検事の年収は、700万円から900万円くらいが一般的です。東京地検の場合で、検事は副部長クラスか、班長検事クラス、副検事は副部長クラス、統括副検事クラスになると年収は1000万円程度になるそうです。 

 

検事のトップである検事総長の年収は約2900万円です。また、賭けマージャン事件で問題になった東京高等検察庁検事長の年収は約2560万円です。

 

なお、検事も、副検事も、検察官であり、管理職になるので、給料が安いときでも、残業代は支給対象外だそうです。

 

5.退職後の違い

退職後にも検事と副検事には、違いがあります。退職後の違いで、特に有名なのは「ヤメ検」です。

 

これは、検事を辞めてから弁護士登録をするというものであり、ほとんどの検事は、これに該当します。「ヤメ検」を売りにして刑事事件をメインに取り扱っている弁護士事務所もあります。

 

多くの検事は、定年まで仕事をせず、途中で退職するそうです。仕事が忙しく自分の自由な時間が持てないこと、転勤が多いことなどが主な退職理由です。 

 

退職後の身の振り方は検事の中でも違いがあります。検事正クラス以上で辞めた場合、公証人や大手企業の顧問などに就任する場合もあります。また、最高検察庁の次長検事クラスになれば、最高裁判所の裁判官に任官する場合もあります。

 

 他方、副検事の場合はどうでしょうか? 副検事は、ほぼ定年まで仕事をします。副検事を定年退職したあと、公証人になる人がいるそうですが、これは、部長、副部長の職に就いた副検事だけだそうです。

 

そのほか、簡易裁判所の調停委員、検察庁の被害者相談員、司法書士、行政書士になる人もいるようですが、ほとんどの副検事は、法律の世界からは離れ、余生を楽しむ人が多いそうです。その理由は、副検事の仕事は、検事以上に激務であるためだそうです。