診療報酬詐欺に強い弁護士

このページは弁護士  楠  洋一郎が執筆しています。

 

 

 

 

診療報酬詐欺の2つのケース

診療報酬詐欺には、①交通事故に関連して損保会社から診療報酬を詐取するケースと、②保険診療で虚偽のレセプトを審査機関に提出し、診療報酬を詐取するケースの2つがあります。

 

 

【診療報酬詐欺】損保会社から診療報酬を詐取するケース

このケースは主として整形外科の医師や整骨院・接骨院の柔道整復師によって行われます。

医師と交通事故の被害者である患者が結託して、実際に通院していない日を通院したようにカルテに記載し、通院日を水増しした診療報酬明細書を作成して損保会社に提出します。

 

被害者は損保会社になります。交通事故の加害者が自賠責保険に加えて任意保険を締結している場合、まずは任意保険の損保会社が自賠責分の診療報酬も立て替えて医療機関に支払います。立て替え払いした時点で詐欺は既遂になりますので、任意保険の損保会社が被害者になります。

 

交通事故の被害者である患者は医師の共犯者という扱いになります。

 

 

【診療報酬詐欺】保険診療の報酬を詐取するケース

保険診療では、医療機関はまず審査機関にレセプトを提出します。審査機関は社会保険であれば社会保険診療報酬支払基金、国保であれば国民健康保険団体連合会になります。

 

審査機関でレセプトを審査して問題なければ、健康保険組合などの保険者から診療報酬が審査機関に支払われ、次いで審査機関が病院や整骨院の口座に振り込みます。

 

いったん診療報酬が振り込まれた後にレセプトの改ざんが発覚すれば、審査機関の担当者または健康保険組合の担当者を被害者とする詐欺罪が成立します。

 

保険診療を利用して行われますので、主体は整形外科医や柔道整復師に限られるわけではありません。このケースでは、患者は不正請求に利用された被害者的な位置づけになります。

組織的な診療報酬詐欺のケースでは、反社会集団が生活保護の受給者や生活困窮者を囲い込み、提携している病院に定期的に通わせることがありますが、アルバイト感覚で参加している程度の認識であれば逮捕されたり、起訴されることはないでしょう。

 

 

診療報酬詐欺の刑罰

診療報酬詐欺をすると詐欺罪が成立します。刑罰は10年以下の懲役で罰金はありません。執行猶予がつく可能性が高いですが、詐取していた期間や金額などの事情によっては、いきなり実刑になることもあります。

 

 

診療報酬詐欺の行政処分

1.医師

診療報酬詐欺をした場合は、厚生労働大臣によって保険医の登録を取り消される可能性があります(健康保険法81条)。また、医師の欠格事由に該当し、一定期間の医業停止や医師免許取り消しになることもあります(医師法4条、7条)。

 

 

2.柔道整復師

診療報酬詐欺をした場合は、診療報酬の受領委任が中止される可能性があります。また、柔道整復師の欠格事由に該当し、一定期間の業務停止や免許取り消しになる場合があります(柔道整復師法4条、8条)。

 

 

診療報酬詐欺は初動が命

診療報酬詐欺が発覚した場合は、刑事事件になる前に早期に被害弁償や示談を成立させ、事件化させないという対応が極めて重要になります。

 

診療報酬詐欺が発覚しても関係機関はいきなり警察に告訴・告発するのではなく、まずは医師等に何らかの働きかけをすることが多いです。

 

損保会社から診療報酬を詐取したケースでは、損保会社の担当者または代理人の弁護士から、事情を聴きたいという連絡が入るはずです。

 

また、レセプトを改ざんして保険診療の報酬を詐取した場合は、地方更生局から個別指導の連絡が入るはずです。

 

この段階で相手は既に相当の裏付け調査をしています。もし実際に診療報酬を詐取したのであれば、真摯に謝罪して被害弁償や示談をすれば、刑事事件化を阻止できる可能性が高まります。

 

逆に、やましいことがあるのに否認すると、損保会社、厚生労働省、レセプト審査機関、保険者等が警察に告訴・告発し、刑事事件として立件されてしまいます。

 

診療報酬詐欺がひとたび事件化すれば、関係者が多数にのぼるため、証拠隠滅のおそれありとして逮捕・勾留されることが多いです。病院や自宅を家宅捜索された後に逮捕されます。

 

逮捕した時点で警察は徹底的な裏付け捜査をしています。検察官も有罪に持ちこめる事件を厳選して起訴してくるので、裁判で無罪を争っても勝ち目は低いです。

 

診療報酬詐欺は話題性があり、地域住民に注意喚起する必要もあることから、顔写真つきで実名報道されることも多々あります。

 

このような甚大な不利益を回避するためには、初動の段階でプライドを捨てて変な言い訳はせず誠実に対応することがぜひとも必要です。初動対応の巧拙により今後のご自身や家族の人生が大きく変わってくることを知っておいてください。告訴・告発されてからでは遅いのです。

 

ウェルネスの弁護士は診療報酬詐欺の経験・実績があります。

 

☑ 損保会社の代理人から書面が届いた

☑ 地方更生局から個別指導の連絡が入った

☑  つい出来心で虚偽のレセプトを提出してしまった

 

このような方はお気軽にウェルネス(03-5577-3613)へお電話ください。

 

 

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