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私文書偽造とは?構成要件や逮捕後の流れを弁護士が解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

 

私文書偽造とは?

私文書偽造罪は、私的な文書に対する社会的な信用を保護するために定められた犯罪です。それでは「私文書」を「偽造」するとはどういう意味でしょうか?

 

 

1.「私文書」とは

私文書とは、権利、義務または事実証明に関する文書のことです。

 

 

「権利、義務に関する文書」とは、権利・義務の発生・変更・消滅の要件になる文書またはその原因となる事実について証明力のある文書のことです。

 

 

【具体例】

売買契約書、預金払戻請求書

 

 

「事実証明に関する文書」とは、社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書のことです。

 

 

権利、義務に関する文書以外は全て事実証明に関する文書にあたるというわけではなく、社会生活上の重要な事項を証明する文書のみが事実証明に関する文書にあたると限定的に捉えられています。

 

 

【具体例】

履歴書、雇用契約書、美術品の鑑定書、入学試験の解答用紙

 

 

2.「偽造」とは

偽造とは、文書の名義人と作成者の人格の同一性を偽ることとされています。わかりやすく言うと、他人の名義で文書を作成することです。

 

 

文書の名義人とは文書に表示されている意思の主体です。作成者として文書に署名や記名があればその人が名義人になります。署名や記名がなくても、文書の内容や形式、封筒等から名義人が特定できることもあります。

 

 

名義人が特定できない文書は、社会的な信用が認められず文書偽造罪は成立しません。

 

 

私文書偽造と「行使の目的」

私文書を偽造しているという認識があるだけでは、私文書偽造罪は成立しません。私文書偽造罪が成立するためには、「行使の目的」が必要とされています。

 

 

私文書偽造罪における行使の目的とは、「偽造文書を真正な文書と誤信させる目的」をいいます。通貨偽造罪と異なり、偽造文書を流通させる目的までは必要とされていません。

 

 

有印私文書偽造と無印私文書偽造との違い

私文書偽造には、有印私文書偽造と無印私文書偽造があります。「有印」とは署名・捺印のことです。

 

 

他人の印章・署名を使用したり、偽造した他人の印章・署名を使用して私文書を偽造した場合は有印私文書偽造罪が成立します。

 

 

これに対して、署名・捺印のない私文書を偽造した場合は、無印私文書偽造罪が成立します。署名は直筆のものだけではなく、スタンプによる記名も含まれるため、無印私文書偽造罪が成立するケースは少ないです。

 

 

【無印私文書の例】

銀行の支払伝票

 

 

私文書偽造と私文書変造の違い

変造とは、名義人以外の者が、真正に作成した文書を改ざんすることです。変造になるのは、非本質的な部分を改ざんした場合に限られます。本質的な部分を改ざんした場合は、変造ではなく偽造になります。

 

 

なお、自己名義の文書を自分で改ざんしても変造にはなりません。

 

 

私文書偽造の罰則

私文書偽造の罰則は以下のとおりです。

 

 

有印私文書偽造懲役3か月~5年
有印私文書変造
無印私文書偽造

1年以下の懲役または10万円以下の懲役

無印私文書変造

 

 

署名や押印のある文書の方が、それらがない文書よりも社会的な信用性が高いことから、有印私文書偽造・変造の方が無印私文書偽造・変造に比べて刑罰は重くなります。

 

 

偽造罪と変造罪の法定刑は同じですが、変造の方が悪質性が低いため、実際の処断刑は変造罪の方が軽くなるでしょう。

 

 

私文書偽造の時効

刑事事件の時効を公訴時効といいます。公訴時効が経過すると起訴できなくなるため、逮捕されることもあります。私文書偽造罪の時効は以下のとおりです。

 

有印私文書偽造・変造5年
無印私文書偽造・変造3年

 

 

偽造私文書の行使

偽造した私文書を行使した場合は、偽造私文書行使罪が成立します。法定刑は私文書偽造罪と同じです。無印文書を行使した場合より有印文書を行使した方が刑が重くなるのも私文書偽造罪と同じです。

 

 

行使する目的で私文書を偽造し、自ら行使した場合、私文書偽造罪と偽造私文書行使罪の両方の犯罪が成立します。

 

 

私文書偽造と偽造私文書行使は手段と目的の関係にあります。このように手段・目的という関係にある複数の犯罪を「牽連犯」(けんれんぱん)と言います。

 

 

牽連犯は最も重い刑によって処断されます。私文書偽造罪と偽造私文書行使罪の刑はどちらも同じですので、有印文書であれば懲役3か月~5年、無印文書であれば1年以下の懲役または10万円以下の罰金の範囲で処断されます。

 

 

私文書偽造罪と偽造私文書行使罪の刑罰が合算されるわけではありません。

 

 

私文書偽造で逮捕された後の流れ

私文書偽造で逮捕されると、48時間以内に検察庁に連行され、検察官の取調べを受けます。検察官が勾留を請求すると、裁判官の勾留質問を受けます。裁判官が検察官の勾留請求を許可すると、勾留されることになります。

 

 

検察官が勾留請求をしなかった場合や、裁判官によって勾留請求を却下された場合は、勾留されずに釈放されます。

 

 

勾留されると原則10日にわたって留置場で拘束されます。勾留が延長されるとさらに10日の限度で拘束が続きます。

 

 

検察官は最長20日の勾留期間内に被疑者を起訴するか釈放するかを決めなければなりません。

起訴前の流れ(逮捕・勾留あり)

 

 

私文書偽造で不起訴を獲得する方法

私文書偽造罪や偽造私文書行使罪は私文書に対する社会的な信用を保護する犯罪であり、財産犯や性犯罪と異なり、特定の個人を保護する犯罪ではありません。

 

 

もっとも、私文書を偽造したり行使することによって、名義を冒用された人の信用が低下したり、行使の相手方に財産的損害が生じることが多いです。

 

 

そのため、名義を冒用された人や行使の相手方と示談をまとめ、これらの方の許しを得られれば、処罰の必要がないとして不起訴になることが多いです。

 

 

私文書偽造で逮捕・勾留された場合、最長20日の勾留期間内に示談をしなければ、起訴される可能性が高いです。家族が私文書偽造で逮捕された方は一刻も早く弁護士を呼ぶべきです。

逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう!弁護士費用や呼び方を解説

 

 

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