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触法少年とは?事件の流れや児童相談所の一時保護について解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
触法少年とは
触法少年とは刑法などの刑罰法令に触れる行為をした14歳未満の少年のことです。少年の中には少女も含まれます。
刑法で14歳未満の少年には責任能力がないとされています。そのため、14歳未満の少年が人を傷つけたり、物をとったり壊したりしても犯罪にはなりません。犯罪にならない以上、逮捕されることもありません。
もっとも、刑罰法令に触れていることから、触法少年と呼ばれます。
触法少年の手続の流れ
1.警察による触法調査
警察官が触法少年と思われる少年を発見すると調査を開始します。警察官は、少年から事件の内容や動機などをヒアリングします。少年の保護者にも警察署に来てもらい少年の性格や家庭環境などを聴き取ります。
少年補導職員という少年心理についての専門的な知識をもった警察官が、調査を担当することもあります。警察官は、必要があれば裁判所の令状を得て家宅捜索や検証、鑑定の嘱託を行うことができます。
2.児童相談所長への送致
警察官は、触法事件を調査した結果、次のいずれかに該当すると判断した場合は、事件を児童相談所長に送致します。
①少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた
②少年が死刑・無期・短期2年以上の懲役または禁錮にあたる行為をした
③少年を家庭裁判所の審判に付するのが適当である
触法少年は14歳未満と幼く、きめ細かなケアが必要になることから、児童相談所による福祉的な措置になじみます。そのため、いきなり家庭裁判所に送致するのではなく、まずは児童相談所長に送致することとされています。
3.児童相談所の調査
触法事件が児童相談所長に送致されると、児童福祉司や児童心理士が少年の成育歴や性格、家庭環境、学校での状況、交友関係などを調査します。その後ケース会議を開き、触法少年にふさわしい処分を検討します。
処分は次の2つに大別されます。
①家庭裁判所へ送致する
②児童相談所において福祉的な措置をとる
4.家庭裁判所への送致
児童相談所長は、次のいずれかに該当するとして警察官から送致を受けた事件については、原則として家庭裁判所に送致しなければなりません。
①少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた
②少年が死刑・無期・短期2年以上の懲役または禁錮にあたる行為をした
これらに該当する場合でも、調査の結果、必要がないと認められる場合は、家庭裁判所に送致しないことができます。逆にこれらに該当しない場合でも、調査の結果、家庭裁判所の審判に付すべきと判断した場合は、家庭裁判所に送致します。
5.児童相談所の福祉的対応
家庭裁判所に送致しない場合は、児童相談所が福祉的な措置をとることになります。児童福祉法によって次のような措置が定められています。
・児童や保護者に訓戒を与え、誓約書を提出させる
・児童福祉司や児童委員に児童や保護者を指導させる
・児童家庭支援センターの職員に委託して児童や保護者を指導させる
・児童を里親に委託する
・児童を児童養護施設に入所させる
6.家庭裁判所での処分
家庭裁判所に送致された後の流れは通常の犯罪少年と同様です。重大な触法事件では、家裁に送致された当日に観護措置となり少年鑑別所に入れられることもあります。弁護士が裁判官と面接し、観護措置の必要がないことを説明します。
12歳以上の触法少年については少年院に送致することも可能ですが、「特に必要と認める場合」に限られます(少年法24条1項但書)。
触法少年は14歳未満と幼く、専門機関による福祉的な対応が必要になることから、少年審判を経て、児童自立支援施設または児童養護施設に送致されることが多いです。
少年審判を開かずに児童相談所長に送致することもあります(少年法18条1項)。
触法少年と一時保護
1.一時保護とは
触法少年には責任能力がなく犯罪が成立しないため、逮捕・勾留されることはありません。もっとも、児童相談所長による一時保護という形で身柄拘束されることがあります。
放火や殺人などの重大な触法事件のケースでは、警察が少年を児童相談所に通告し、児童相談所長の判断で一時保護の措置がとられることが多いです。一時保護は、少年や保護者の同意がなくても強制的に行うことができます。
一時保護の期間は最長2カ月とされていますが、必要がある場合は2か月を超えて保護してもよいとされています。
2.一時保護の警察への委託
一時保護の措置がとられた場合、触法少年は児童相談所が管理する一時保護所に入れられます。
ただ、近くに児童相談所がなかったり、夜間に少年の身柄を確保した場合は、児童相談所が警察に一時保護を委託することがあります。
この場合、触法少年は警察の保護室に閉じ込められ、事実上の取調べを受けることになります。警察での一時保護は原則24時間以内とされていますが、実質的には逮捕されたのとあまり変わらないといえます。
3.一時保護と弁護士
触法少年は14歳未満と幼く、一時保護をされて精神的にも混乱しているため、警察官の調査に対して適切に対応することが困難です。
警察官も触法少年の混乱や無知に乗じて、都合のよい調書をいっきに作成しようとします。触法少年が一時保護されてしまった場合は、弁護士が警察官の調査に付き添ったり、警察への保護委託を直ちに停止するよう児童相談所に申し入れます。
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