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触法少年とは?虞犯少年との違いや弁護士の活動について解説

触法少年とは

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

触法少年とは?

1.触法少年の年齢

触法少年(しょくほうしょうねん)とは刑法などの刑罰法令に触れる行為をした14歳未満の少年のことです。少年の中には少女も含まれます。

 

 

2.触法少年には責任能力がない

刑法で14歳未満の少年の行為は罰しないとされています。

 

 

3.触法少年の行為は犯罪にならない

触法少年が人を傷つけたり物をとっても、責任能力がないため犯罪にはなりません。もっとも、刑罰法令に触れていることから、調査や処分の対象になることがあります。

 

 

触法少年と虞犯(ぐ犯)の違いは?

虞犯(ぐ犯)とは、以下の事由の少なくとも一つに該当し、本人の性格や環境に照らして、将来、罪を犯しまたは刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年のことをいいます。

 

 

イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。

ロ 正当の理由がなく家庭に寄りつかないこと。

ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。

ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。

ぐ犯(虞犯)とは?ぐ犯事件の流れや対応の仕方について解説

 

 

触法少年は実際に刑罰法令に触れる行為をした少年です。これに対して、虞犯少年は、将来、罪を犯したり刑罰法令に触れる行為をするおそれはありますが、実際に罪を犯したり刑罰法令に触れる行為をしたわけではありません。この点が触法少年と虞犯少年の違いです。

 

 

虞犯の対象になるのは17歳以下の少年です。18歳と19歳の特定少年は虞犯の対象にはなりません。これに対して、触法少年として扱われるのは14歳未満の少年に限られます。このように対象年齢についても触法少年と虞犯は異なります。

 

 

触法少年事件の流れ-警察による触法調査

警察官が触法少年と思われる少年を発見し調査が必要と判断すると、調査を開始します。調査の目的は事案の真相を明らかにし、少年が健全に育成されるようにすることです。

 

 

警察官は、少年から事件や少年の置かれた状況についてヒアリングします。少年の保護者にも少年の性格や家庭環境、成育歴などをヒアリングします。少年補導職員という少年心理についての専門的な知識をもった警察官が、調査を担当することもあります。

 

 

警察官は、必要があれば、裁判所の令状を得て家宅捜索や検証、鑑定の嘱託を行うことができますが、触法少年を逮捕することはできません。

 

 

触法少年事件の流れ-児童相談所(長)への通告・送致

触法少年は心身ともに幼く専門的なケアが必要になることから、児童相談所による福祉的な措置になじみます。そのため、警察で調査された触法少年や事件は児童相談所(長)に引き継がれます。

 

 

触法「少年」を児童相談所に引き継ぐことを「通告」、触法「事件」を児童相談所長に引き継ぐことを「送致」といいます。

 

 

1.児童相談所への通告

警察が調査した結果、触法少年に保護者がいないと判明したとき、または保護者に監護させることが不適当と判断したときは、触法少年を児童相談所に通告します。

 

 

2.児童相談所長への送致

警察が触法事件を調査した結果、次のいずれかに該当すると判断した場合は、事件を児童相談所長に送致します。

 

 

①少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る刑罰法令に触れる行為をした

②少年が死刑・無期・短期2年以上の懲役または禁錮にあたる罪に係る刑罰法令に触れる行為をした

③少年を家庭裁判所の審判に付するのが適当であると判断した

 

 

触法少年事件の流れ-児童相談所の調査

触法少年や事件が児童相談所(長)に引き継がれると、児童福祉司や児童心理士が少年の成育歴や性格、家庭環境、交友関係などを調査します。その後ケース会議を開き、触法少年にふさわしい処分を検討します。処分は次の2つに大別されます。

 

 

①児童相談所において福祉的な措置をとる

②家庭裁判所へ送致する

 

 

触法少年事件の流れ-児童相談所の福祉的措置

児童相談所は触法少年に対して各種の福祉的な措置をとることができます。具体的には児童福祉法によって次のような措置が定められています。

 

 

・児童や保護者に訓戒を与え、誓約書を提出させる

・児童福祉司や児童委員に児童や保護者を指導させる

・児童家庭支援センターの職員に委託して児童や保護者を指導させる

・児童を里親に委託する

・児童を児童養護施設に入所させる

 

 

触法少年事件の流れ-家庭裁判所への送致

児童相談所長は、警察から送致を受けた触法事件については、原則として家庭裁判所に送致しなければなりません。もっとも、調査の結果、家庭裁判所に送致する必要がないと認められる場合は、送致しないことができます。

 

 

逆に警察から送致ではなく通告を受けた場合でも、調査の結果、家庭裁判所の審判に付すべきと判断した場合は、家庭裁判所に送致します。

 

触法少年事件の流れ-家庭裁判所での処分

触法事件が家庭裁判所に送致された後の流れは通常の少年事件と同様です。重大な触法事件では、家裁に送致された当日に観護措置となり少年鑑別所に入れられることもあります。少年鑑別所に収容される期間は最長で4週間です。

 

 

触法少年は家庭裁判所調査官の調査を経た後に、少年審判を受けます。触法少年を少年院に送致することも可能ですが、「特に必要と認める場合」に限られます(少年法24条1項但書)。

 

 

触法少年は14歳未満と幼く、専門機関による福祉的な対応が必要になることから、少年審判を経て、児童自立支援施設または児童養護施設に送致されることが多いです。少年審判が開かれずに児童相談所長に送致されることもあります(少年法18条1項)。

 

触法少年と一時保護

1.一時保護とは

触法少年には責任能力がなく犯罪が成立しないため、逮捕・勾留されることはありません。もっとも、児童相談所長による一時保護という形で事実上の身柄拘束をされることがあります。

 

 

放火や殺人などの重大な触法事件のケースでは、警察が少年を児童相談所に通告し、児童相談所長の判断で一時保護の措置がとられることが多いです。一時保護は、少年や親権者の同意がなくても強制的に行うことができます。

 

 

一時保護の期間は最長2カ月とされていますが、必要がある場合は2か月を超えて延長してもよいとされています。ただし、親権者の意思に反する場合は、家庭裁判所の承認を得なければならないとされています。

 

 

2.一時保護の警察への委託

一時保護の措置がとられた場合、触法少年は児童相談所が管理する一時保護所に入れられます。ただ、近くに児童相談所がなかったり、夜間に少年の身柄を確保した場合は、児童相談所が警察に一時保護を委託することがあります。

 

 

この場合、触法少年は留置場に入れられるわけではありませんが、警察署の保護室に閉じ込められ、長時間にわたって事実上の取調べを受けることがあります。警察での一時保護は原則24時間以内とされていますが、逮捕されたのとあまり変わらないといえるでしょう。

 

 

触法事件で弁護士ができること

1.不利な書面が作成されないようにする

触法少年は精神的に未熟であるため、警察官の誘導により不利な書面を作成されてしまいがちです。弁護士が調査に付き添い、不利な書面の作成を防ぎます。

 

 

2.警察署限りで調査を終了させる

警察は触法調査をしたからといって、少年や事件を必ず児童相談所(長)に引き継がなければならないわけではありません。弁護士が、親の指導・監督により少年の更生が可能であることを警察に主張し、児童相談所(長)に引き継がれないように活動します。

 

 

3.家庭裁判所への送致を阻止する

警察が触法事件や少年を児童相談所(長)に引き継いだ場合、家庭裁判所に送致されると少年鑑別所や少年院に入れられることがあります。そのため、弁護士が児童相談所に対して、家庭裁判所に送致しないように求めます。

 

 

4.一時保護の解除を求める

触法少年が一時保護されてしまった場合は、弁護士が児童相談所に対して一時保護を解除するよう要請します。

 

 

5.少年鑑別所への収容を阻止する

児童相談所長から家庭裁判所へ送致されると、少年に対して監護措置決定が下され、少年鑑別所に収容されることがあります。弁護士が意見書を提出したり、裁判官と面接して、少年鑑別所に収容されないよう活動します。

 

 

6.被害者と示談をする

被害者がいる事件の場合は、被害者との間で示談が成立すれば、処分が軽くなる傾向があります。弁護士が少年と被害者との間に入ることによって、被害者としても安心して個人情報を教えることができ、スムーズに示談交渉に入りやすくなります。

 

 

7.不処分を求める

家庭裁判所に送致されると少年審判が開かれます。審判廷で弁護士が少年の内省が深まっていることや親による実効的な監督が可能であることを主張し、不処分(=保護処分なし)を求めます。

 

 

8.少年院への収容を阻止する

殺人や放火、不同意性交等の重大事件を起こした場合は、触法少年であっても少年院に収容されることがあります。弁護士が親や学校と話し合って環境調整を行い、充実した更生プランを裁判所に示して、保護観察等を求めます。

 

 

触法少年事件に強い弁護士とは?

1.触法事件の経験豊富な弁護士

弁護士に触法事件の経験がなければ、活動が後手に回ってしまいます。気がついたら児童相談所から家庭裁判所に送致され、少年鑑別所に収容されていたということにもなりかねません。

 

 

触法事件の経験が豊富にあれば、先々の流れを見すえた上でベストな活動を展開することができます。

 

 

2.動き出しが早い弁護士

触法少年は判断能力が未熟で、警察官の誘導にのってしまいがちです。誘導されて不利な書面をとられると、撤回することができないため、後日争うことができなくなります。

 

 

触法少年の無知に乗じていっきに書面を作成しようとする警察官もいますので、弁護士が速やかに触法少年のもとに駆けつけ、違法・不当な調査を受けていないか監視する必要があります。

 

 

3.休日も活動している弁護士

触法事件で一時保護されれば、休日も関係なく調査が進んでいきます。被害者が未成年の場合は、示談交渉は親御様と行うことになりますが、お仕事の関係で平日はどうしても面談の都合が付けられない場合もあります。

 

 

土日も対応してくれる弁護士であればとぎれのない弁護活動が可能になります。

 

 

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