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供述調書の署名押印を拒否できる?メリットや拒否の仕方について
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
供述調書の署名押印を拒否できる?
取調べで供述調書が作成されると、取調官から調書の末尾に署名押印をするように言われます。その際に被疑者は署名押印を拒否することができます。拒否できる根拠は刑事訴訟法198条5項です。
【刑事訴訟法198条5項】
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上の条文で、被疑者が署名押印を拒否した場合は、署名押印をすることを求めることができないと記載されています。このように署名押印の拒否は法律上の根拠がある正当な権利です。
供述調書の署名押印を拒否するメリットは?
被疑者(起訴されれば被告人)の供述調書を裁判の証拠にするためには、被疑者によってその調書に署名または押印されている必要があります。
被疑者の署名も押印もない供述調書は裁判の証拠にすることができません。つまり、被疑者が署名押印を拒否することによって、自分の調書を裁判の証拠にさせないことができるのです。これが署名押印拒否のメリットです。
【刑事訴訟法322条1項】
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供述調書の署名押印を拒否すべきケースは?
1.否認事件で署名押印を拒否する
被疑者には、供述調書への署名押印を拒否する権利がありますが、どのような場合にこの権利を行使すればよいのでしょうか?
結論から言うと、容疑を否認しているケースでは署名押印を拒否することを検討すべきです。
2.署名押印を拒否すべき理由
取調官は否認している被疑者にあの手この手で自白を迫ります。当初否認していた被疑者の多くが、取調官のプレッシャーに負けてしまい、最終的には自白してしまいます。
たとえ否認を貫いたとしても、不安でいっぱいの被疑者よりも取調官の方が一枚も二枚も上手です。被疑者自身が「否認できた。」と思っても、後に弁護士が確認すると自白調書になっていることもあります。
裁判で自白調書が証拠として提出されると、被告人が「それは事実とは違います。」と言っても通りません。
もっとも、たとえ自白調書をとられたとしても、署名押印を拒否すれば、裁判の証拠にされることはないので、不利な展開を阻止することができます。
供述調書の署名押印拒否の仕方は?
取調官がひととおり供述調書をとり終えると、被疑者に対して「それでは調書を確認して問題なければ署名・押印してください。」と言います。
署名押印を拒否する場合は、このタイミングで「署名押印できません。」と言ってください。
署名押印を拒否すれば、取調官から必ず「どうして拒否するんですか?」と聞かれます。署名押印を拒否する理由を説明する義務はありませんが、何も説明しないと取調官がしつこく理由を聞いてくるので、「弁護士に指示されました。」と言ってください。
供述調書の署名押印を拒否したらどうなる?
1.取調官がすんなり認めることはない
取調官から供述調書への署名押印を求められて拒否すればどうなるのでしょうか?
まず言えるのは、取調官が「はい、わかりました。」とすんなり署名押印拒否を認めることはないということです。
取調官の仕事は「署名押印のある供述調書を作成すること」です。取調官から見ると、署名押印のない供述調書は裁判の証拠にもならない中途半端なもので仕事の成果とは言えません。
上司から「署名押印くらいさせろ!」と叱責されることもあるでしょう。そのため、取調官は何とか供述調書に署名押印させようと被疑者にプレッシャーをかけてきます。
2.取調官のプレッシャーの具体例
供述調書への署名押印を拒否すると取調官から次のようなことを言われます。
☑ 内容に間違いがなければ署名押印しても問題ないはず
☑ 署名押印しないと自分の言い分が裁判官に伝わらないよ
☑ 弁護士の指示ではなく自分の頭で考えてください
☑ 署名押印しない被疑者なんて見たことない
☑ 悪いようにはしないから
3.署名押印拒否と起訴・不起訴
プレッシャーに負けて署名押印をしてしまうと裁判の証拠にできる調書が完成します。
その調書の内容が被疑者にとって不利なものであれば、検察官にとっては有罪判決に持ち込むための大きな武器になるため、「これなら起訴できる!」と判断され、起訴される可能性が高まります。
逆に取調官のプレッシャーに屈せず署名押印拒否を貫けば、たとえ不利な内容が調書に含まれていても、裁判の証拠にすることができないため、検察官も起訴するか否かを慎重に判断せざるを得なくなります。
供述調書の署名押印拒否を弁護士がサポート!
1.署名押印拒否と弁護士のサポート
取調室で供述調書への署名押印を拒否しようとすると、取調官から相当なプレッシャーをかけられます。
プレッシャーに負けてしまい調書に署名押印をしてしまう被疑者も少なくありません。確実に署名押印を拒否するためには弁護士のサポートが必要です。
2.弁護士のサポートの仕方
逮捕・勾留されていない在宅事件では、弁護士が被疑者の取調べに同行して署名押印拒否をサポートします。
弁護士であっても取調室に入って被疑者と一緒に取調べを受けることはできません。警察署のロビーや取調室近くの廊下で待機することになります。
もし被疑者が取調官から圧力をかけられた場合は、いつでも取調べを中断して取調室の外に出ることができます。弁護士に状況を説明し、弁護士から取調官に署名押印拒否が法律で認められた被疑者の権利であり、圧力をかけないよう要請します。
逮捕・勾留されている身柄事件では、弁護士が被疑者と話ができるのは接見室の中だけです。そのため、弁護士がひんぱんに接見することにより、被疑者をサポートします。被疑者にプレッシャーをかけないよう、弁護士が検察官に要請書を提出することもあります。
供述調書の署名押印拒否と黙秘の違いは?どう使い分ける?
1.共通点と相違点
供述調書の署名押印の拒否も黙秘も、「捜査機関に不利な証拠を与えない」という点では同じです。
両者の違いは供述するか否かです。供述調書の署名押印の拒否は、ひととおり供述した上で最後の署名押印だけを拒否するものです。これに対して、黙秘はそもそも供述しないことです。
2.否認事件では黙秘が原則
「捜査機関に不利な証拠を与えない」という点では、署名押印拒否も黙秘も同じですが、さらに進んで「捜査機関に不利な情報を与えない」という点では、黙秘の方が優れていると言えます。
署名押印拒否の場合は、供述はしている以上、被疑者の言い分が捜査機関に明らかになります。そのため、捜査機関としては被疑者の言い分をふまえて、その言い分をつぶせるようなストーリを作り上げ、被害者や目撃者に供述させることが考えられます。
黙秘の場合は、被疑者の言い分自体が捜査機関にとって不明であるため、「被疑者の言い分をふまえてそれをつぶす」ことができません。
そのため、否認事件では、署名押印拒否よりも黙秘をするのが原則的な対応になります。
3.署名押印拒否をする場合
否認事件では黙秘することが原則ですが、黙秘した場合は、署名指印拒否にもまして、取調官からのプレッシャーがきつくなります。
黙秘が理想であるとしても、実際は取調官のプレッシャーに耐え切れず供述してしまう被疑者が多いです。そのため、弁護士が被疑者の人となりを見て黙秘の方針でいくか署名押印拒否の方針でいくかを個別に判断します。
ただ、不同意わいせつ事件や不同意性交等事件で性行為の際に合意があったか否かが問題になるケースでは、男女の微妙なやりとりが問題になるため、あえて黙秘の方針をとらずに、被疑者自身の言葉で当時の状況を述べた上で署名押印を拒否させることもあります。
署名押印を拒否しないでよい書面もある
署名押印を拒否する場合でも、取調べ状況報告書については署名押印を拒否する必要はありません。
取調べ状況報告書とは、取調べが終わった直後に取調官から示されるA4サイズの1枚紙で、取調べの開始時間と終了時間が記されています。
取調べ状況報告書に署名押印しても不利益はないため、拒否をする必要はありません。
ウェルネスの弁護士が署名押印拒否をサポートします!
ウェルネスの弁護士が取調べに同行して署名押印拒否をサポートします。
【ウェルネスの同行費用】
11万円(税込)
*ご依頼中の方は5万5000円(税込)で対応しております。
*対応エリアは、東京・埼玉・千葉・神奈川の警察署・検察庁です。
*それ以外のエリアでも対応可能ですが、上記の費用とは別に交通費と日当が発生します。
在宅事件で否認している被疑者の方は、気軽にウェルネス(03-5577-3613)へお電話ください。