傷害事件の被害者が示談に応じるメリットは?弁護士が解説

傷害事件の被害にあわれた方は、ケガの治療費や精神的ショック、仕事を休んだ分の休業損害など様々な負担を被ることになります。被害者としては、これらの損害をてん補するため、加害者に相応の賠償金を支払ってもらいたいと考えるでしょう。

 

 

傷害事件の被害者が加害者から賠償金の支払いを受ける方法として、示談による方法と民事訴訟による方法があります。結論から言うと、賠償金の支払いを迅速・確実に受けるためには、民事訴訟よりも示談の方が向いています。

 

 

このページではその理由を弁護士 楠 洋一郎がわかりやすく解説しました。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

 

傷害事件で示談なし-民事訴訟は費用と時間がかかる

傷害事件の被害者が加害者と示談をしない場合、加害者に慰謝料等を払わせるための手段として民事訴訟が考えられます。もっとも、民事訴訟は費用も時間もかかるというデメリットがあります。以下、具体的に見ていきましょう。

 

 

1.傷害事件の民事訴訟-費用がかかる

傷害事件の被害者は加害者に対して民事訴訟を提起することができます。民事訴訟を弁護士に依頼した場合の費用相場は50~80万円です。

 

 

「裁判に勝てば弁護士費用は全て加害者がもつので高くても関係ない」と思っておられる方もいるでしょう。しかし、実際はそうではありません。

 

 

傷害事件の民事訴訟は「不法行為に基づく損害賠償請求」というカテゴリーになります。不法行為に基づく損害賠償事件においては、被害者(原告)の弁護士費用は、最終的に民事訴訟で認容された損害額の10%しか認められません。

 

 

そのため、「民事訴訟には勝ったが弁護士費用を払ったら赤字になった」というケースもあります。

 

 

2.傷害事件の民事訴訟-時間がかかる

民事訴訟は費用だけではなく、時間もかかります。民事訴訟を一般の方が独力で提起することは難しいので、弁護士に依頼することになります。

 

 

弁護士探しから始まり弁護士との打ち合わせを経て民事訴訟を提起するまで、1~3か月程度はかかるでしょう。民事訴訟を提起した後も損害額等について争いがあれば、少なくとも半年は裁判が続判決きます。判決まで1年以上かかることも少なくありません。

 

 

民事訴訟を提起した後に「ここまで時間がかかると思わなかった」と後悔するケースもあるようです。

 

 

傷害事件で示談なし-慰謝料等を払ってくれない!?

傷害事件の被害者としては、加害者に慰謝料や治療費等を払ってもらいたいところです。

 

 

加害者が慰謝料等を払ってくれなければ、民事訴訟を起こして損害賠償を請求するほかありません。もっとも、お金と時間をかけて民事訴訟で勝訴しても、必ず賠償金が支払われるわけではありません。

 

 

交通事故の被害者であれば、保険会社を相手に損害賠償請求訴訟を起こして勝訴すれば、保険会社から速やかに支払いを受けることができます。

 

 

これに対して、保険会社が絡んでいない個人間の傷害事件においては、被害者が加害者個人を訴えて勝訴したとしても、加害者が必ず支払ってくれるとは限りません。

 

 

勝訴判決後に加害者が賠償金を払わなければ、加害者の財産を差し押さえることができますが、そもそも差し押さえるべき財産がないこともあります。

 

 

傷害事件の示談と被害者のメリット

1.迅速に慰謝料等を支払ってもらえる

民事訴訟を提起した場合、判決まで数か月から1年以上もの期間がかかりますが、示談で解決する場合は、早ければ数日で示談金の支払も含めて全ての手続が終わります。

 

 

もし示談金が被害者に支払われなければ、示談が成立していても、加害者が起訴されて前科がつく可能性が高くなります。

 

 

そのため示談をすれば、示談金という形で確実に慰謝料等を払ってもらえることになります。慰謝料等を払ってもらえれば民事訴訟を起こす必要もなくなります。

 

 

2.柔軟な解決が可能となる

傷害事件の被害者が加害者に対して民事訴訟を提起した場合、「加害者は被害者に対して金〇万円を支払え」といった判決が下されます。言いかえると、民事訴訟では賠償金の支払いしか命じることができません。

 

 

これに対して示談で解決する場合は、被害者の要望を柔軟に反映させることが可能となります。例えば、当事者間で合意がまとまれば、以下のような条項を示談書に入れることもできます。

 

 

☑ 加害者は事件の現場になった場所に立ち入らない

☑ 加害者は被害者に接触・連絡しない

 

 

金銭の支払い以外にも加害者に要求したいことがある場合は、示談が向いていると言えるでしょう。