【少年事件】オレオレ詐欺で少年院を回避するために

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このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

 

オレオレ詐欺は少年院が多い

オレオレ詐欺のグループには、電話で被害者をだますかけ子、被害者からお金やキャッシュカードを受けとる受け子、被害者の口座からお金を引きだす出し子等がいます。

 

 

最近では受け子の低年齢化が進んでいます。バイト先の友人や詐欺グループのリクルーターから「割りのいい仕事がある」等と声をかけられ、アルバイト感覚で受け子をしてしまう少年が多くいます。

 

 

特殊詐欺は被害が多額にのぼり深刻な社会問題になっていることから、近年、厳罰化が進んでいます。成人の場合は初犯であっても実刑判決を下されるのが通常です。

 

 

少年についても逮捕・勾留され少年鑑別所を経て少年院に収容されることが多いです。

 

 

オレオレ詐欺で少年院の可能性を下げる4つの事情

オレオレ詐欺をした少年については少年院に送致されることが多いですが、次のような事情があれば、保護観察処分となり少年院を回避できる余地もあります。

 

 

① 非行性が進んでいない

② 詐欺の認識が薄い

③ 少年が脅迫されている

④ 示談が成立している

 

 

以下、個別に見ていきましょう。

 

 

オレオレ詐欺で少年院の可能性を下げる事情①-非行性が進んでいない

少年事件では、軽微な事件から始まって徐々に非行性が進んでいき、重大な犯罪を犯してしまうという経過をたどることが多いですが、オレオレ詐欺には必ずしもこのような図式はあてはまりません。

 

 

オレオレ詐欺のような特殊詐欺は、高度に分業化されているため、末端の受け子であれば「重大な犯罪を行っている」という意識を持ちにくい面があります。SNSでも「高収入バイト」といった誘い文句で受け子が広く募集されており、誰でもアクセスできる状況です。

 

 

そのため、これまで非行歴がなく真面目に大学に通っていながら、受け子をしてしまう少年もいます。このように犯罪自体の重大性と少年の非行性が必ずしもつりあっていないことが特殊詐欺の特徴です。

 

 

少年の非行性が進んでいなければ、社会の中で更生する余地があるといえるので、少年院を回避できる可能性が高まります。

 

 

オレオレ詐欺で少年院の可能性を下げる事情②-詐欺の認識が薄い

オレオレ詐欺は、かけ子、受け子、出し子等がお互いに協力しあって、高齢者を不安にさせ、現役時代にためたお金をだましとる犯罪です。

 

 

少年がこのようなことを明確に認識してオレオレ詐欺を行っていたのであれば、問題性は根深いといえ、少年院で矯正すべきということになるでしょう。

 

 

もっとも、オレオレ詐欺は高度に分業化されているため、受け子であれば、自分がやっていることについて「犯罪かもしれない」という程度の認識はあっても、事件の全体像やその中での自分の位置づけについては明確に認識していないケースもあります。

 

 

少年は社会経験が乏しく判断能力も未熟です。詐欺グループのリクルーターも、少年の無知に乗じて、「簡単にお金を稼げるアルバイト」等と都合のよいことしか言いません。

 

 

少年がオレオレ詐欺について明確に認識していなければ、問題性が根深いとはいえず、少年院を回避できる余地は十分にあります。

 

 

オレオレ詐欺で少年院の可能性を下げる事情③-少年が脅迫されている

詐欺グループと接点をもった少年は、リクルーターから免許証や学生証の画像をメッセンジャーで送信するように指示されます。

 

 

少年が「詐欺かもしれない」と気づいて受け子をやめたいと言うと、指示役から「家に押しかけるぞ。」とか「家族がどうなってもいいんだな?」等と脅迫されることが少なくありません。

 

 

少年は詐欺グループに住所などの個人情報を把握されているため、指示役の脅迫を真に受けてしまい、周囲に相談することなく、やむを得ず受け子を続けてしまうことがあります。

 

 

このようなケースでは、少年が積極的に詐欺に加担していたわけではないので、問題性が根深いとはいえず。少年院を回避できる可能性が高まります。

 

 

オレオレ詐欺で少年院の可能性を下げる事情④-示談が成立している

成人の事件であれば被害金額が1000万円を超えると、執行猶予がつくことはまずありません。一方、少年事件では被害金額が処分に直結するわけではありません。被害金額が4500万円以上のケースで、少年院を回避できたケースもあります(東京高裁平成27年6月24日決定)。

 

 

オレオレ詐欺の受け子は、被害者からいくら受けとるのかを事前に知らされていません。そのため、たまたま受けとった金額が多かったという事情だけで少年院送致になるのは適切とはいえないでしょう。

 

 

もっとも、少年の処分を決めるにあたっては非行事実の内容も重要な事情になります。裁判官としても、特殊詐欺が社会問題化するなかで、数百万円、数千万円の被害が出ているのに、保護観察で家に帰してよいのかという懸念をもっています。

 

 

示談をして一定の金額を被害者側に返済していれば、被害が一部回復したといえますし、責任の取り方を少年に示すという意味で教育的な効果も高いことから、被害金額が高額であっても、少年院送致ではなく保護観察になる可能性が高まるといえるでしょう。

 

 

オレオレ詐欺で少年院を回避するための弁護活動

オレオレ詐欺で少年院を回避するためには、上で述べた4つのポイントをふまえて、弁護士が少年にとって有利になる事情を裁判官や調査官に主張するとともに、被害者との間で示談をとりまとめることが重要です。

 

 

ウェルネスの弁護士はオレオレ詐欺について少年院回避の実績があります。お子さんがオレオレ詐欺で逮捕された方はお気軽にウェルネス(03-5577-3613)にご相談ください。

 

 

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