少年審判の流れを弁護士が解説

家庭裁判所

 

ほとんどの少年事件は少年審判で処分が言い渡されて終了します。少年鑑別所に収容されている少年は少年院送致にならなければ、少年審判の日に晴れて釈放されます。

 

 

少年審判は非公開で行われ、裁判官や補佐役の書記官、家庭裁判所調査官が出席し、裁判官が進行役をつとめます。

 

 

少年審判に出席する少年や保護者は、「少年審判はどのような流れで進むのか?」と不安な気持ちになっているかもしれません。

 

 

このページでは、少年事件の経験豊富な弁護士が、少年審判の流れについてわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

★少年事件のほとんどは事実関係に争いのない自白事件ですので、自白事件の少年審判について解説しています。

 

 

少年審判の4つのステップ

少年審判の流れは以下の4つのステップに分けることができます。

 

 

1.冒頭手続

2.少年・親に対する質問

3.意見陳述

4.決定の言渡し

 

少年審判の4つのステップ

 

 

自白事件では1回の審判でこれら4つのステップを全て行うことがほとんどです。審判の時間は1時間前後です。これから4つのステップを個別に見ていきます。

 

少年審判のステップ1:冒頭手続

① 人定質問

人違いでないことを確認するために、裁判官が審判を受ける少年に対して、氏名、生年月日、本籍、住所、職業を尋ねます。

 

本籍地については正確に言えなくても、裁判官が「〇〇ですね?」と聞いてくれますので「はい。」と答えれば大丈夫です。

 

② 黙秘権の告知

裁判官が少年に黙秘権について説明します。

 

裁判官:君には黙秘権があります。答えたくなければ答えなくても構いません。最初から最後まで黙っていることもできます。その前提でこれから君がしたことについて確認します。

黙秘権について

 

③ 非行事実の告知

裁判官が少年に対して審判の対象になる非行事実を告げます。検察官から裁判所に引き継がれた記録の中に「少年事件送致書」という書類が入っていますが、その書類の中に記載されている「送致事実」をそのまま読み上げることが多いです。

 

 

④ 非行事実に対する陳述

裁判官が少年と付添人の弁護士に対して、非行事実について認識と違っているところはないかを確認します。

 

裁判官:今読み上げた事実でどこか違っているところはありますか?

少年:ありません

裁判官:付添人はどうですか?

付添人:少年と同様です。

 

 

少年審判のステップ2:少年・親に対する質問

① 裁判官による質問

裁判官が少年に対して、事件を起こした経緯や事件の内容、被害者に対する気持ち、再発防止のための取り組み等について質問します。続いて、少年の親に対して、どのように少年を監督していくのか等について質問します。

 

 

② 付添人による質問

付添人の弁護士が、裁判官の質問で取り上げられていないところを中心に、少年や親に質問します。示談にいたる経過等は裁判官が把握していないことが多いため、付添人が質問します。

 

少年審判のステップ3:意見陳述

家庭裁判所調査官、付添人、少年本人、保護者はどのような処分にすべきか等について意見を述べることができます。

 

 

付添人の弁護士がいる場合は保護者が意見を述べることは通常ありません。

 

 

家庭裁判所調査官と付添人は審判前に意見を記載した書面を裁判官に提出していますので、審判の際に、改めて口頭で意見を言うことはほとんどありません。

 

裁判官:付添人の意見は書面に書かれている通りでよろしいですか?

付添人:はい。

 

裁判官は少年に対して必ず意見があるかどうかを確認します。自白事件では、被害者に対する気持ちや反省の思い、再発防止の決意などを述べることになります。

 

 

「特に意見はありません。」と言っても構いませんが、少年審判という厳粛な場でなされる最後の発言で、少年の記憶にもずっと残るでしょうから、今後の更生のためにも、自分の言葉で思ったことを発言してもらいたいものです。発言は長くても1分程度で十分です。

 

裁判官:最後に何か言いたいことはありますか?

少年:被害者に対して本当に申し訳ないという気持ちでいっぱいです。今後は絶対にこのようなことをしないと誓います。

 

 

少年審判のステップ4:決定の言渡し

裁判官が決定を少年に告知します。決定の種類としては、少年院送致、保護観察、不処分のどれかになることが多いです。

 

裁判官:それでは今回の事件についての判断を示します。今回、君は痴漢という行為をしてしまいました。かなり悪質な行為で、当時、君は被害者の気持ちに十分考えが及んでいませんでした。

 

ただ、被害者と示談が成立し、両親の協力もあって再発防止策を考えて実践できています。こういった事情を考慮して、保護観察に付することにします。

 

今後は定期的に保護観察所に通って、きちんとした生活ができているか報告してもらいます。特別に守ってもらう遵守事項として、「性犯罪に結びつく行為をしない」という条件を付け加えます。

 

この審判に不満がある場合は抗告することができますので、明日から数えて14日以内に東京高等裁判所宛ての抗告申立書をこの裁判所に提出してください。

 

審判の言い渡しの後に裁判官が少年に対して説諭をすることもあります。

 

裁判官:今後、犯罪をしてしまった場合は、今回よりも厳しい処分を検討することになります。具体的には少年院に入る可能性が高くなります。今回の件でお父さん、お母さんに迷惑をかけたことを思い出して、そういうことを繰り返さないようにしてください。

 

裁判官が少年の様子をもう少し見た上で処分を判断すべきと考えた場合は、試験観察にします。試験観察になった場合は、2,3か月後に改めて審判が実施されます。

 

 

その間に家庭裁判所調査官が少年や親と面談し、反省の深まり具体などを確認します。

 

 

ほとんどの自白事件では試験観察とはならず、審判当日に最終的な処分が言い渡されます。審判内容に不満がなければ少年事件の手続はこの日をもって全て終了します。付添人の弁護士と会うのもこの日が最後になるでしょう。

 

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しました。

 

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