被害届なしで逮捕・起訴できる?被害届と逮捕・起訴の関係を解説

ハンドボール元日本代表の宮崎大輔選手が知人女性の髪を引っ張った等として暴行容疑で逮捕されました。ニュースによれば知人女性から被害届は出ていないようです。

 

「被害届なしでどうして逮捕されたのか?」-このように思われた方もいらっしゃるでしょう。

 

被害届と逮捕・起訴の関係について弁護士 楠 洋一郎が解説します。

 

被害届は逮捕の要件ではない

被害届は被害者が被害を受けた状況を報告するものです。

 

法律には逮捕の要件として「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑事訴訟法199条1項本文)が必要とされていますが、被害届が必要とはどこにも書かれていません。

 

「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があることを立証するためには、被害状況を明らかにする必要がありますが、被害状況は被害届がないと立証できないというわけではありません。

 

次のような証拠で被害状況を立証することも可能です。

 

・防犯カメラ映像

・目撃者の証言

・被害者が110番通報したときに警察のオペレーターにした発言

・被害者が現場にかけつけた警察官にした発言

 

このように被害状況は被害届がなくても立証できることが多いため、被害届がなければ逮捕できないというわけではありません。

 

とはいえ被害届なしで逮捕することは少ない

被害届がなくても被害状況を裏づける他の証拠があれば、被疑者を逮捕することは可能です。とはいえ、現実的には警察が被害届をとらずに逮捕することはほとんどありません。

 

被害者が死亡した事件や重体で意思表示できない事件、被害者が特定されていない事件では、被害届がなくても逮捕されることはあります。

 

被害者が加害者の処罰を求めていれば、被害届の提出を拒む理由はありません。とすると、被害者があえて被害届を出さないということは、「おおごとにはしたくない」等何らかの事情があるはずです。

 

被疑者を逮捕すると、警察は事件の処理を検察官に引き継ぎます。引継ぎを受けた検察官は、被疑者を起訴するか不起訴にするかを決めます。

起訴前の流れ(逮捕・勾留あり)

 

検察官は、被害者が被害届を提出せず積極的に処罰を希望していない場合に、被害者の意思に反してまで起訴することを躊躇するでしょう。仮に起訴しても、そのような被害者が裁判で証人として協力してくれるとも思えません。

 

そのため、被害届が出ていなければ、検察官は被疑者を不起訴処分にする可能性が高いです。

 

警察は被疑者を逮捕すれば、直ちに釈放しない限り48時間以内に検察官に送致しないといけません。そのため、警察は被疑者を逮捕した後は短時間で多くの捜査をする必要があります。

 

被害者が被害届すら出していない状況であれば、検察官が不起訴にする可能性が高く、警察としても、被疑者を逮捕して本腰を入れて捜査をしようという判断にはならないでしょう。

 

そのため、被害届が出ていなければ、そもそも刑事事件として立件しないことが多いです。

 

被害届なしでも逮捕する例外的なケース

被害者が特定されている刑事事件で、警察が被害届をとらずに被疑者を逮捕することは通常ありません。ただ、DVが疑われるケースでは被害届なしで逮捕することがあります。

 

DV事件には次の3つの特報があります。

 

①被害者が加害者と同居している(または、同居していなくてもお互いの住所や連絡先を知っている)

②被害者が加害者に遠慮したり怖がったりして被害届の提出にふみきれない

③殺人などの重大事件に発展することもある

 

DV事案にはこのような特徴があるため、警察がDVを疑った場合は、「再犯のおそれがある。」、「緊急性が高い。」として、被害届が出ていなくても警察独自の判断で被疑者を逮捕することがあります。

 

被害届なしでも起訴する例外的なケース

被害者が特定されている刑事事件では、被害届が出ていなければ起訴されることはほとんどありません。

 

もっともこれには例外があります。オレオレ詐欺や振り込め詐欺のような特殊詐欺のケースです。特殊詐欺のケースでは、起訴前に示談が成立して、被害者が被害届を取り下げたとしても起訴される可能性が高いです。

 

特殊詐欺は大規模かつ組織的に行われ、被害も多額に上り、反社会集団の資金源にもなっています。そのため、被害者が被害届を取り下げて起訴を望まない意思を示したとしても、一般予防の観点から起訴されてしまうのです。

 

ただ、被害届を取り下げてもらえれば、起訴されても執行猶予になる可能性は高くなるため、示談をする意味はあるといえるでしょう。

 

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