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指名手配とは?報奨金や逮捕、自首について弁護士が解説
2024年1月25日、長年にわたり指名手配されていた桐島聡(キリシマサトル)と思われる人物が入院していることが判明しました。
桐島聡は東アジア反日武装戦線のメンバー、1975年4月に銀座の韓国産業経済研究所の入口を爆破したとして、爆発物取締罰則違反で重要指名手配されていました。
指名手配のポスターに掲載されている、メガネをかけくりっとした目の童顔になじみのある方も多いでしょう。
末期の胃がんで入院していた内田洋(ウチダヒロシ)を名乗る人物が、病院の職員に自分が桐島聡であると告げたことから、職員が通報し、警視庁の公安部が本人に事情聴取をしていました。
しかし、この人物は、警察が接触してから間もなく危篤状態におちいり、1月29日に息を引きとりました。
それから3日後の2月1日未明、殺人未遂で重要指名手配されていた暴力団幹部の金成行(キンシゲユキ)容疑者が仙台市内のアパートで逮捕されました。似た人物がいるとの通報がきっかけとなり逮捕されたとのことです。
金容疑者は指名手配のポスターで桐島容疑者の隣に並んでいました。桐島容疑者のニュースが連日報道されていた最中の逮捕だったため、「隣の男」である金容疑者にも注目が集まり逮捕につながったと見る向きもあります。
桐島容疑者も金容疑者も指名手配されていましたが、そもそも指名手配とは何でしょうか?
このページでは、指名手配の意味や指名手配犯の検挙につながる情報を提供した場合の報奨金などについて、刑事事件に詳しい弁護士 楠 洋一郎が解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
指名手配とは?
指名手配とは、逮捕状が発付されている被疑者の逮捕と身柄の引き渡しを他の警察に依頼することです。
指名手配をするのは、被疑者が逃亡し所在不明になっている場合です。指名手配は、通常、捜査を担当している警察署が属する県警本部が全国の警察に対して行います。
指名手配には第一種手配と第二種手配があります。第一種手配は、逮捕後に身柄の護送を求める手配です。第二種手配は、逮捕後に身柄を引き取りに行く場合の手配です。指名手配は原則として第一種手配によって行います。
特別手配被疑者・重要指名手配被疑者とは?
指名手配されている被疑者のうち、特定の被疑者については、「特別手配被疑者」、「重要指名手配被疑者」として、重点的に捜査されます。
1.特別手配被疑者とは?
指名手配された被疑者のうち、治安に重大な影響を及ぼした被疑者は警察庁によって特別手配被疑者に指定され、組織的な捜査の対象となります。
かつてオウム真理教関連の事件で3名が特別手配されていましたが、全員逮捕されました。現在、特別手配されている被疑者はいません。
2.重要指名手配被疑者とは?
指名手配された被疑者のうち、特に凶悪な犯罪や広域犯罪を行ったとされる被疑者は、警察庁によって重要指名手配被疑者に指定され、重点的に捜査されます。
警察庁ではなく都道府県警によって重要指名手配被疑者に指定されることもあります。
指名手配と捜査特別報奨金
警察庁長官が指定した事件について、検挙につながる有力な情報を提供した者に捜査特別報奨金が支払われます。報奨金の上限は原則として300万円ですが、特に必要があると認める場合は1000万円まで増額することができます。
報奨金が支払われる事件は、警察庁のホームページで紹介されています。
重要指名手配されている被疑者の多くも、捜査特別報奨金の対象とされています。
指名手配犯と逮捕状の緊急執行
通常逮捕するときは、被疑者に逮捕状を示すのが原則です。逮捕状を示すことによって、逮捕が令状に基づくものであることを被疑者に告知するためです。
【刑事訴訟法】
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もっとも、逮捕状が手元になく取り寄せている間に被疑者が逃亡するおそれがある場合は、例外的に逮捕状を示すことなく逮捕することができます。これを逮捕状の緊急執行といいます。逮捕状の緊急執行の要件は以下となります。
①逮捕状が発付されていること
②逮捕状を取りよせている間に被疑者が逃亡するおそれがあること
③被疑者を逮捕する前に被疑事実の要旨と逮捕状が出ている旨を告げること
④逮捕後できる限り速やかに逮捕状を示すこと
逮捕状は1部しか発付されません。そのため、指名手配犯を見つけた捜査員が逮捕状を所持していないこともありますが、たとえ所持していなかったとしても、逮捕状の緊急執行によって被疑者を逮捕することができます。
指名手配と逮捕状の有効期間
指名手配は逮捕状が発付されている被疑者が逃亡しているときに実施されます。
逮捕状には有効期間が定められているため、有効期間が経過する前に、改めて裁判官に逮捕状の請求を行い、新たな逮捕状を発付してもらう必要があります。以前の逮捕状は裁判官に返還します。
逮捕状の有効期間は7日ですが、相当と認めるときは7日を超える期間を定めることができるとされています。
【刑事訴訟規則】
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【犯罪捜査規範】
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有効期間が短いと何度も逮捕状を請求する必要があるため、指名手配犯の場合は、有効期間が3か月とされた逮捕状が発付されることが多いです。
指名手配と自首
自首とは、犯罪と犯人のいずれかが発覚していない段階で、捜査機関に出頭して自己の犯罪を申告することです。自首すれば裁判で減刑されることがあります。
【刑法】 第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。 |
指名手配されている被疑者が警察に出頭しても、自首したことにはなりません。なぜなら、犯罪も犯人も捜査機関に発覚しており、出頭しても自首の要件を満たさないからです。
もっとも、出頭することにより捜査の目途が立ち、犯人を処罰することが可能になるため、ある程度の減刑は見込めると思われます。
指名手配と時効
刑事事件の時効を公訴時効といいます。公訴時効が完成すると起訴することができなくなります。起訴できない以上、逮捕することもできません。
指名手配されていても公訴時効に影響はありません。もっとも、被疑者が海外逃亡している場合、海外にいる間は時効は停止します。