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暴行罪の不起訴率は?不起訴となる事例や理由について
暴行罪の被疑者になっても不起訴になれば前科はつきません。このページでは暴行罪の不起訴率や不起訴になる3つの事例、不起訴となるための方法について解説しました。ぜひ参考にしてみてください!
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
暴行罪の不起訴率は?
不起訴とは被疑者を刑事裁判にかけないことです。刑事裁判にかけられないので処罰されることはなく、前科がつくこともありません。
暴行罪で不起訴になる確率は72%です。起訴された28%のうち、公判請求の割合は15%、略式起訴の割合は85%です。
*根拠…2023年版検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員
暴行罪で不起訴になる事例は?
暴行罪で不起訴になる事例として以下の3つが考えられます。
事例①:示談が成立して不起訴になる事
事例②:正当防衛が認められ不起訴になる事例
事例③:証拠不十分により不起訴となる事例
事例①は暴行したことを認めているケース、事例②は暴行したことは認めているが正当防衛により無罪を主張するケース、事例③は暴行したことを否認しているケースです。
①暴行罪で示談が成立して不起訴になる事例
示談とは紛争を解決するために当事者間で交わす合意です。暴行事件を起こした場合、被害者と示談がまとまると不起訴になる可能性が高くなります。
暴行は被害者の安全をおびやかす犯罪ですので、被害者から示談という形で許しを得れば、あえて処罰する必要はなくなるためです。
不起訴の理由は全部で20種類ありますが、被害者と示談がまとまり不起訴になる場合は、「起訴猶予」という理由で不起訴になります。
起訴猶予とは、起訴して有罪に持ち込めるだけの証拠はあるものの、被疑者に有利な事情を考慮して検察官の裁量で不起訴にする処分です。
被害者と示談がまとまっているということは、その前提として、被疑者が暴行の容疑を認めていることになります。そのため、被疑者の自白調書も作成されており、検察官は起訴しようと思えばできる状況です。
ただ、被害者に処罰感情がないため起訴する必要がないと判断し、起訴猶予で不起訴にするのです。
②暴行罪で正当防衛が認められ不起訴になる事例
相手から先に暴力をふるわれて自分の身を守るためにやむを得ず手を出した場合、正当防衛が成立する余地があります。
正当防衛が成立して不起訴になる場合は、「罪とならず」(犯罪が成立しない)という理由で不起訴になります。犯罪が成立するためには、構成要件に該当するだけではなく、その行為に違法性があり、行為者に責任を問えることが必要です。
暴行罪の構成要件は人に暴行を加えることです。正当防衛が問題になるケースでは、実際に相手を叩いたり蹴ったりしているので、暴行罪の構成要件に該当します。もっとも、正当防衛の要件に該当すると違法性がないということになり、暴行罪は成立しません。
そのため、検察官が正当防衛にあたると判断すれば、「罪とならず」で不起訴処分にします。
③暴行罪で証拠不十分により不起訴となる事例
駅やタクシー車内で暴行事件を起こした場合、暴行した場面が防犯カメラで撮影されていることが多いです。第三者が暴行の場面を目撃していることもあります。
もっとも、すべての暴行事件について証拠や証言がそろっているわけではありません。防犯カメラや目撃証言がない場合、暴行したことの証拠が十分になければ、検察官が起訴しても有罪に持ち込めないことになります。そのようなケースでは検察官は不起訴にせざるを得ません。
このように証拠が不十分で起訴したくてもできない場合は、検察官は、嫌疑不十分という理由で不起訴にします。明白に正当防衛に該当するとまではいえないが、その可能性があり、かつ証拠が不十分な場合も嫌疑不十分で不起訴にします。
暴行罪で不起訴-起訴猶予での不起訴が圧倒的に多い
上で見てきたように、暴行罪で不起訴になるケースとして、①示談が成立して起訴猶予で不起訴になる事例、②正当防衛が認められ「罪とならず」で不起訴になる事例、③十分な証拠がなく嫌疑不十分で不起訴になる事例があります。
不起訴になった暴行事件のうちそれぞれの不起訴理由が占める確率は以下の通りです。
それぞれの確率は以下の通りです。
暴行罪が起訴猶予で不起訴になる確率 | 88% |
暴行罪が罪とならずで不起訴になる確率 | 0.1% |
暴行罪が嫌疑不十分で不起訴になる確率 | 11% |
*根拠…2023年版検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員
1.起訴猶予で不起訴になる確率
上の表から起訴猶予で不起訴になる確率が圧倒的に高いことがわかります。起訴猶予で不起訴になったすべての暴行事件で示談が成立しているわけではありませんが、多くの事例で示談が成立していると思われます。
2.罪とならずで不起訴になる確率
暴行事件で検察官が正当防衛が成立すると判断した場合は、罪とならずで不起訴にします。「罪とならず」で不起訴になる確率はわずか0.1%しかありません。
正当防衛は誰でも知っている言葉ですので、「自分にも正当防衛が成立するのでは?」と考える人も多いですが、法律で正当防衛の要件はかなり厳格に定められているため、全ての要件にあてはまることは決して多くはありません。
正当防衛の主張をするか否かはまずは暴行罪に精通した弁護士にご相談ください。
3.嫌疑不十分で不起訴になる確率
起訴して有罪に持ち込めるだけの証拠がない場合は、検察官は嫌疑不十分で不起訴にします。暴行罪で嫌疑不十分で不起訴になる確率は約1割とかなり低くなっています。
理由としては、暴行事件は人目につく公共の場所で発生することが多く、防犯カメラ等の証拠がそろっているケースが多いことが考えられます。
暴行罪で起訴されたらどうなる?
起訴とは被疑者を刑事裁判にかけることです。起訴には略式起訴と正式起訴の2種類があります。略式起訴は「略式請求」、正式起訴は「公判請求」とも呼ばれます。
1.略式起訴されるケース
略式起訴されたら簡易な略式裁判で審理され、罰金刑になります。略式裁判では法廷は開かれません。裁判官が自分の執務室で、検察官から提出された証拠書類を読んで、審理します。
結果は略式命令という書類によって被告人に通知されます。略式命令には「罰金〇万円を支払い」等と記載されています。
2.正式起訴されるケース
前科があったり無罪を主張している場合は、正式起訴されます。正式起訴されると公開の法廷で審理されます。法廷ドラマをイメージしていただくとよいでしょう。
暴行容疑を認めている場合は、初公判のみで審理が終了し、1,2週間後に判決が言い渡されることが多いです。否認している場合は、被害者や目撃者の証人尋問を実施するため、半年程度は審理が継続することが多いです。
暴行罪で不起訴を獲得するためには示談が確実!
以上の統計データから、暴行事件で不起訴を獲得するためには、正当防衛を主張したり、「やっていない」と否認するよりも、示談をするのが合理的だといえます。
暴行事件の示談金の相場は10万円前後です。暴行罪は被害者にケガが発生しておらず犯罪の中ではかなり軽微な部類に入りますので、示談金もそれほど高額にならずに解決できることが多いです。
ウェルネス法律事務所ではこれまで100件以上の暴行事件を示談で解決してきました。暴行罪で示談をまとめてもらいたいという方はぜひウェルネス(03-5577-3613)にご相談ください。