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カプセルホテルでの男性に対する不同意わいせつ
カプセルホテルの中にはゲイ男性によって性行為の場として利用されている施設があります。そのようなカプセルホテルで発生しがちな刑事事件への対応方法について弁護士 楠 洋一郎が解説しました。ぜひ参考にしてみてください。
カプセルホテルでの準強制わいせつとは
ゲイの男性がカプセルホテルで他の男性の陰茎等を触って不同意わいせつ事件になることがあります。
カプセルホテルのなかには、ゲイ男性によって性行為の場として利用されている施設があります。最初から性行為をする目的でホテルへ行き、そこで初めて出会ったゲイ男性同士が性行為をするのです。
そのような場所で性行為をすることの当否はさておき、成人男性がお互い合意した上で性行為をしているのであれば、不同意わいせつ罪にはなりません。
もっとも、事情を知らずに寝ている男性の陰茎等をまさぐった場合は、不同意わいせつ罪になります。
そもそも不同意わいせつとは
不同意わいせつとは、相手の同意がない状況でわいせつ行為をすることです。
次に掲げる行為または事由その他これらに類する行為または事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした場合、不同意わいせつ罪が成立します。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
不同意わいせつ罪の罰則は6か月以上10年以下の拘禁刑(当分の間は懲役刑)です。
カプセルホテルでの不同意わいせつ-2つの類型
1.相手が睡眠中の場合
一部のカプセルホテルでは、寝ている男性の肩や膝を手のひらで軽く叩いて脈がありそうか否かを確かめる行為が、ゲイ男性の間で広まっています。
相手の男性が寝ていて叩いても反応がない場合、叩いた側が勝手に「問題ない」と考え、寝ている男性の陰茎等をまさぐってしまうと、「睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること」(刑法176条1項4号)に乗じてわいせつ行為をしたとして、不同意わいせつ罪が成立します。
最後まで相手が寝ていれば発覚することもなく刑事事件にはならないでしょうが、途中で相手の男性がびっくりして起きた場合は、フロントに言いに行くなどして刑事事件になることがあります。
2.相手が起きていた場合
ゲイ男性向けのネット掲示板に「〇〇ホテルの〇〇のあたりで寝ているので触ってください!」といったメッセージが投稿されることがあります。
このような投稿を真に受けてその場所に行き、書き込みをした男性だと思っていきなり陰茎等を触ったところ、事情を知らない別人であった場合、「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと」(刑法176条1項5号)に乗じてわいせつ行為をしたとして、不同意わいせつ罪が成立します。
この場合も警察に通報され刑事事件になることがあります。
カプセルホテルでの準強制わいせつ事件への対応方法
カプセルホテルで男性に触って驚かれた場合、その場から逃げても不同意わいせつ罪で後日逮捕されるリスクがあります。犯人特定の決め手になる証拠としては以下のようなものがあります。
①ホテルの宿帳に記載した氏名・住所等の個人情報
②クレジットカードで利用料金を決済したときのカード情報
③ホテル内外の防犯カメラ
後日逮捕を避けるためには自首をすることが考えられます。
女性の同意なくわいせつ行為をする典型的な不同意わいせつ事件に比べると、必ずしも悪質性が高いとはいえないため、自首すれば逮捕や実名報道を回避できる可能性が高いです。
自首をして逮捕されなければ、家族や上司に身元引受人として警察署まで迎えに来てもらいます。その際、捜査員が身元引受人に対して事件の概要を説明します。
弁護士が自首に同行すればその場で身元引受人になれますので、家族や上司に知られるリスクも回避できます。
ウェルネスの解決事例
事案の概要
ご依頼者が出張中に泊まっていたカプセルホテルでゲイ男性のためのネット掲示板を見ていたところ、「〇階に寝ていますので触ってください。」というメッセージを見つけました。
ご依頼者がそのメッセージを真に受けて、掲示板に書かれていた場所に行ったところ、ブラインドが少し開いた状態で寝ている男性がいました。
ご依頼者は書き込みをした男性だと思って下腹部などを触ったところ、その男性がびっくりして起き上がったため、その場を離れてチェックアウトしました。
ご依頼者はチェックアウトする前に被害者がフロントで従業員と話している様子を目にして、刑事事件になり逮捕されたらどうしようと思いウェルネスに相談に来られました。
弁護活動
弁護士がご依頼者と一緒にカプセルホテルの所在地を管轄する警察署に出頭しました。
男性から被害届が出ており刑法改正前の準強制わいせつ事件として捜査されておりましたが、ご依頼者はまだ犯人として特定されていなかったため、自首が成立し逮捕や報道を回避することができました。
その後、弁護士が捜査員から被害者の電話番号を教えてもらい、示談交渉をした結果、示談が成立しました。書類送検された後速やかに不起訴になりました。