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決闘罪とは?要件・時効・事例について弁護士が解説
決闘罪という犯罪をニュースで見聞きしたことがあるかもしれません。現在でも少数ではありますが、決闘罪で逮捕されたり起訴される人がいます。
このページでは決闘罪の要件や罰則、時効、ニュースで報道された決闘事件などについて弁護士 楠 洋一郎が解説しました。参考にしていただければ幸いです。
決闘罪とは
決闘罪は、明治22年に制定された「決闘罪ニ関スル件」という法律に定められています。
当時、後に首相となる犬養毅に対して決闘を申し込んだ者がいて話題になりました。犬養は決闘の申し込みを拒絶しましたが、この件がきっかけとなり決闘申込み事件が多発するようになり、決闘を賛美する論調も出てきました。
時の明治政府は、欧米に見られる決闘(duel)の風習が日本にも広まることをおそれて、「決闘罪ニ関スル件」を制定し、決闘を犯罪として取り締まることとしました。
明治時代の法律ですが現在でも有効な法律として存在しています。
決闘罪の「決闘」とは
決闘罪の「決闘」とは、当事者間の合意により相互に身体または生命を害すべき暴行をもって争闘する行為です。決闘罪が成立するためには、当事者間でケンカをすることの合意があることが必要です。
【決闘合意の例】 「おまえ俺と命をかけて勝負しろ!死ぬ気でこい!」 「上等だ!表に出ろ!」
「タイマンするぞ。どっちか倒れるまでやろうぜ!」 「おう!トコトンやってやる!」 |
いきなり相手に暴行した場合は合意がないので決闘とはいえません。
「素手でケンカする約束だったのに相手がナイフを持ち出してきた」というように、一方がルール違反をしても、ケンカすること自体について合意があれば決闘罪が成立します。
相手からしつこく決闘を迫られて断っていたが根負けしてケンカした場合は、合意がないとして、決闘罪が成立しない余地があります。
決闘罪で捕まる人
決闘の当事者同士には何らかの因縁やトラブルがあり、問題解決の手段として暴力に訴えやすい傾向があります。
ニュースで報道される決闘事件では、抗争中の暴力団のメンバーや対立する不良グループ・暴走族のメンバーが決闘罪の当事者になっていることが多いです。
10代の少年同士が当事者になっていることも少なくありません。
決闘罪の罰則-罰金はない
決闘罪の刑罰は懲役2年~5年です。「決闘罪ニ関スル件」には罰金刑も定められていましたが、現在は廃止されています。
決闘罪には懲役刑しかないので、起訴されれば公開の法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されることになります。
決闘に関連した行為も処罰される
たとえ自ら決闘をしなくても、次のような決闘に関連する行為をすれば「決闘ニ関スル件」違反になります。
行為 | 刑罰 |
決闘を挑んだ | 懲役6か月~2年 |
決闘の挑発に応じた | |
決闘に立ち会った | 懲役1か月~1年 |
決闘に立ち会うことを約束した | |
決闘が行われることを認識して決闘場所を貸したり使わせた |
決闘罪の時効
決闘罪の時効は5年です。その他の「決闘ニ関スル件」違反の時効は全て3年です。
決闘罪の関連犯罪
1.傷害罪
決闘は、当事者間の合意により相互に身体または生命を害すべき暴行をもって争闘する行為です。そのため、決闘の最中に暴行しても、決闘罪とは別に暴行罪が成立するわけではありません。
もっとも、決闘により相手にケガを負わせた場合は、決闘罪に加えて傷害罪が成立します。傷害罪の刑罰は15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
2.殺人罪
決闘により殺意をもって相手を殺した場合は、決闘罪に加えて殺人罪が成立します。刑罰は死刑、無期懲役、懲役5年~20年のいずれかです。
3.傷害致死罪
決闘により相手を死なせてしまったが殺すつもりがなかった場合、決闘罪に加えて傷害致死罪が成立します。刑罰は懲役3年~20年です。
4.銃刀法違反
ナイフを持って決闘に臨んだ場合は、銃刀法違反が成立する余地があります。刑罰は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
5.凶器準備集合罪
決闘をするために2人以上の者が凶器を持って集まった場合は、凶器準備集合罪が成立します。刑罰は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
6.凶器準備結集罪
決闘をするために凶器を持ったメンバーを集合させた場合は、凶器準備結集罪が成立します。刑罰は3年以下の懲役です。
格闘技は決闘罪になる?
格闘技は合意の上でお互いに攻撃しあうという点で決闘罪の構成要件を満たしていますが、スポーツまたはイベントとして行われるものであり、刑法35条の「正当業務行為」として違法性が否定されます。
【刑法35条】 法令又は正当な業務による行為は罰しない。 |
そのため、一般的に許容される範囲のものであれば、格闘技が決闘罪になることはありません。プロボクシングやK1等のようなプロ格闘技だけではなく、アマチュア格闘技も決闘罪にはなりません。
プロレス等で反則行為が行われたとしても、格闘すること自体に合意がある以上、決闘罪は成立しませんが、相手が全く予測していない反則行為によりケガをさせた場合は、傷害罪が成立する余地があります。
決闘罪と逮捕
暴力団や不良グループに属しておらず、素手で殴り合っているだけであれば、逮捕される可能性は低いです。
ナイフや金属バット等の凶器を使用して決闘をした場合は、危険性が大きく逮捕される可能性が高くなります。
素手の決闘であっても相手に重いケガを負わせた場合や、暴力団や不良グループのメンバー同士が決闘した場合は、逮捕される可能性が高くなります。
決闘罪と報道
決闘罪は非常に珍しい犯罪ですので、事件化すると報道されやすいです。20歳以上の成人の場合は実名報道される可能性が十分にあります。
18歳未満の少年については実名報道されることはありません。18歳以上20歳未満の特定少年については、大人と同じ刑事裁判で審理される場合は、実名報道される可能性があります。
【報道された決闘事件】
①2019年1月
高校1年生の16歳男子2名が、決闘罪と傷害罪で書類送検された事件。一方の生徒が他方の生徒に、交際していた女性のことをSNS上で批判されたことから、SNSで「タイマンしよう。」と決闘を申し込み、お互い殴ったり蹴ったりして相手に軽傷を負わせた疑い。
②2021年11月
不良グループのメンバー3人が凶器準備集合罪で逮捕された事件。対立する不良グループと決闘するために釘バットや鉄パイプ等の凶器を準備した疑い。
③2022年1月
同じ不良グループに属する20代の男性2名が決闘罪で逮捕された事件。両者の間でトラブルがあり、一方がコインパーキングで「タイマン張ったるわ。来んかい。」と決闘を挑み、もう一方がこれに応じて互いに殴りあった疑い。
決闘罪で起訴されると執行猶予?実刑?
決闘罪で検挙された場合、次のような事情があると、起訴される可能性が高くなります。
・決闘により相手に重傷を負わせた
・凶器を使って決闘した
・多数が関与する決闘を主導した
・人目につく場所で決闘を行い多くの人を不安にさせた
・執行猶予中である
・粗暴犯の前科がある
初犯であれば起訴されても執行猶予がつく可能性が高いです。決闘で相手に重傷を負わせた場合は、傷害罪の刑が適用され実刑になる可能性が十分にあります。
執行猶予中や粗暴犯の前科がある場合は、相手が軽傷であっても実刑になる可能性が高くなります。
決闘罪と示談
決闘罪で不起訴や執行猶予を獲得するために最も重要なことは、相手方と示談をすることです。
自分と相手のケガが同程度であり、お互いに決闘罪の被疑者として捜査されていれば、他に特別の事情がない限り、示談金なしで示談が成立する余地が十分にあります。
自分が軽傷で相手が重傷を負っている場合は、治療費や休業損害、慰謝料等の支払いが必要となるでしょう。いずれにせよ示談をすれば不起訴や執行猶予の可能性が高くなります。
決闘罪と少年事件
決闘は少年によって行われることが多い犯罪です。決闘を行う少年は暴走族や不良グループに属しており、非行性が進んでいることが多いです。なかには保護観察中の少年もいます。
少年院を回避するためには、親の協力のもとで、交友関係を見直し、暴力により問題解決を図ろうとする傾向を改善していくことが必要になります。
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