• トップ
  • > 面会要求等罪(グルーミング罪)とは?構成要件や罰則について弁護士が解説

面会要求等罪(グルーミング罪)とは?構成要件や罰則について弁護士が解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

 

面会要求等罪が新設された理由

面会要求等罪は、児童が性犯罪に巻き込まれることを未然に防止するため、2023年の刑法改正で新設されました。

 

 

児童に対する性犯罪のきっかけとして、「グルーミング」という行為が問題になっています。グルーミングとは、児童の判断能力の未熟さにつけこんで、言葉巧みに児童を手なずけ懐柔する性犯罪の準備行為です。

 

 

グルーミングの対象となった児童は、失望させたくないと思って相手の要求を断れなかったり、相手を信頼するあまり相手の要求に疑問を抱くことなく、わいせつな写真を送信したり、性行為をしてしまうことがあります。

 

 

面会要求等罪は、悪質なグルーミングを処罰することによって、児童を性加害から保護することを目的として創設されました。

 

 

面会要求等罪はいつから?

面会要求等罪が適用されるのは、改正刑法が施行された2023年7月13日からです。この日より前の行為は、たとえ面会要求等罪の要件を満たしていても処罰されません。

 

 

面会要求等罪の2つの種類

面会要求等罪には、わいせつ目的で児童に対して面会を求める面会要求罪と、わいせつな映像の送信を求める映像送信要求罪の2つがあります。

 

 

面会要求等罪の構成要件は?

犯罪が成立する要件のことを構成要件といいます。面会要求等罪の構成要件は次のとおりです。

 

1.面会要求罪の構成要件

(1)わいせつの目的があること

面会要求罪は悪質なグルーミング(=性犯罪の準備行為)を処罰する犯罪ですので、わいせつ目的がなければ成立しません。

 

 

(2)16歳未満の者を対象としていること

面会要求罪は年少児童を性犯罪から保護することを目的としているので、対象者が16歳未満であることが要件となります。

 

同世代同士の行為が処罰されないよう、被害者が13歳以上の場合、行為者が5歳以上年長の場合に限って処罰されます。

 

 

(3)次のいずれかの行為をすること

①脅したり、だましたり、誘惑して面会を要求すること

②拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること

③金銭等を渡したり、渡すことを提案・約束して面会を要求すること

処罰の範囲が広がり過ぎると行動の自由が制限されるため、悪質なやり方で面会を要求した場合に限って処罰されます。

 

 

2.映像送信要求罪の構成要件

(1)16歳未満の者を対象としていること

映像送信要求罪は年少児童を性加害から保護することを目的としているので、対象者が16歳未満であることが要件となります。

 

 

同世代同士の行為が処罰されないよう、被害者が13歳以上の場合、行為者が5歳以上年長の場合に限って処罰されます。

 

 

(2)次のいずれかの行為を要求すること

①性交、肛門性交または口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること

②膣または肛門に身体の一部(陰茎を除く。)または物を挿入しまたは挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部を)を触りまたは触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること

 

②の行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限られます。

 

 

面会要求等罪の罰則は?

1.面会要求罪の罰則

面会要求罪の罰則は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

 

 

拘禁刑とは、これまでの懲役刑と禁錮刑を一本化した刑罰です。懲役刑のように刑務作業が義務づけられていませんので、受刑者の状況に応じて、更生プログラムを受けさせる等、柔軟な処遇が可能になります。

 

 

拘禁刑は2025年に導入される予定で、それまでは懲役刑として扱われます。面会を要求して実際に面会した場合は刑罰が加重され、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金になります。

 

 

2.映像送信要求罪

映像送信要求罪の罰則は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

 

 

面会要求等罪の時効は?

面会要求罪・映像送信要求罪の時効はいずれも3年です。実際に面会した場合の時効も3年です。時効が経過すると起訴できなくなるので、逮捕されるリスクもなくなります。

 

 

面会要求等罪の関連犯罪

面会を要求して実際に面会し、16歳未満の者と性交等をした場合は、不同意性交等罪が成立します。

不同意性交等罪とは?

 

 

面会を要求して実際に面会し、16歳未満の者に対してわいせつな行為をした場合は、不同意わいせつ罪が成立します。

不同意わいせつ罪とは?   

 

*被害者が13歳以上の場合は、5歳以上年長の者に限り不同意わいせつ罪または不同意性交等罪が成立します。

 

 

実際に面会して自分の家に泊めた場合は、未成年者誘拐罪になることがあります。

未成年者誘拐とは?逮捕や不起訴について弁護士が解説

 

 

実際に面会して深夜に連れ回した場合は青少年健全育成条例違反になります。

青少年を深夜外出させると青少年健全育成条例違反?逮捕や前科は?

 

 

面会要求等罪で逮捕を回避する方法

面会要求等罪で逮捕を回避する方法として、自首が考えられます。逮捕の要件は逃亡のおそれと証拠隠滅のおそれですが、自首という形で自ら警察に出頭することにより、これらの要件が認められにくくなるためです。

 

 

被害児童とのやりとりを通じて、保護者が既に警察署に相談していることが判明した場合は、その警察署に出頭することになります。相談しているか否かがわからない場合は、被害児童の自宅最寄りの警察署に出頭することになります。

 

 

相談先の警察署も被害児童の居住エリアもわからない場合は、行為者の自宅最寄りの警察署に出頭することになります。

 

 

ただ、別の警察署が捜査している場合は、自宅最寄りの警察署に自首したという情報が捜査を担当している警察署に伝わらず、逮捕や家宅捜索のリスクが減らないことも考えられます。

 

 

まずは自首同行の経験方法な弁護士にご相談ください。

自首に弁護士が同行するメリットや同行の弁護士費用について

 

 

面会要求等罪で前科を回避する方法

面会要求等罪で捕まった場合、初犯であれば略式起訴され罰金で終わることが多いです。罰金でも前科がつくので注意が必要です。

 

 

前科を回避するための最も有効な手立ては、被害児童側と示談をまとめることです。示談書に「許す」、「刑事処罰を求めない」といった宥恕文言(ゆうじょもんごん)が入っていれば、不起訴の可能性が高まります。

 

 

同じ児童犯罪でも児童買春のケースでは、児童側がSNSで積極的にパパ活を呼びかけていることが多く、そのような児童側にお金を払って示談をしても、検察官にあまり評価してもらえないこともあります。

 

 

これに対して、面会要求罪は悪質なグルーミングを処罰するものであり、性加害という側面が強いため、示談になじむといえるでしょう。

 

 

示談交渉の相手になるのは被害児童の保護者です。保護者は加害者に氏名や電話番号等の個人情報を知られたくないと思っていますので、示談交渉をするためには弁護士に間に入ってもらう必要があります。