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墳墓発掘罪とは?構成要件や判例について弁護士が解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
墳墓発掘罪とは
墳墓を発掘すると墳墓発掘罪になります(刑法189条)。
墳墓発掘罪は、墳墓の平穏を保持することによって、死者に対する崇敬の念や宗教的感情を保護することを目的としています。
公然と墳墓を発掘した場合は、礼拝所不敬罪と墳墓発掘罪の両方が成立します。
墳墓発掘罪の罰則
墳墓発掘罪の罰則は2年以下の懲役です。礼拝所不敬罪や説教等妨害罪と異なり、罰金はありませんので、起訴されれば正式裁判となり、検察官から懲役刑を請求されることになります。
勾留されたまま起訴されれば、保釈が許可されない限り、判決前には釈放されません。
墳墓発掘罪の時効
墳墓発掘罪の時効は3年です。
墳墓発掘罪の構成要件
犯罪が成立するための要件を構成要件といいます。墳墓発掘罪の構成要件は次のとおりです。
1.墳墓
墳墓とは、死体や遺骨、遺品等が埋葬され、祭祀や記念の対象となる場所のことです。そのような場所であれば、墓碑・墓標・墓石がなくても墳墓にあたります。
将来、墳墓にするつもりで墓石を建立しただけでは、いまだ祭祀や記念の対象になっていないため、墳墓ではありません。
墳墓発掘罪は墳墓の所有権を保護しているわけではないため、無縁墓であっても墳墓にあたります。ペットの墓は墳墓にはあたりません。
古墳は史跡であって祭祀や記念の対象ではないため、墳墓にはあたりません。ただ、古墳を無断で発掘すると、文化財保護法違反や遺失物横領罪で処罰されることがあります。
2.発掘
発掘とは、墳墓を覆っている土の全部または一部を除去したり、墓石等を破壊することです。発掘というと土の中の物を掘り返すイメージですが、必ずしも棺桶や死体、遺骨等を外部に露出する必要はありません。
墳墓を覆っている土を少しでも取り除くと発掘になるわけではなく、墳墓の重要部分が物理的に変更されたといえる必要があります。
墳墓発掘罪の判例
1.墳墓の「発掘」にあたるとされた判例
旧加賀藩当主の遺骸を納めた石棺の上にある土盛塚を約1.5m掘り下げた事件。
弁護人は土盛塚は墳墓ではないと主張したが、裁判所は土盛塚も遺骸を埋葬し、前田家によって祭祀の対象とされており、墳墓に該当することが明らかであるとした(名古屋高裁金沢支部昭和26年10月24日)。
2.墳墓の「発掘」にあたらないとされた判例
鉄骨入りコンクリート製の納骨室(上部を鉄平石に覆われていた)の上に置かれた仏石等を押し倒し、法名塔や門石等を転倒・破損させた事件。
裁判所は損壊というためには、少なくとも納骨室の壁、天井、扉等の重要部分を破壊することが必要であるとし、墳墓発掘罪にあたるとした一審判決を破棄して差し戻した(福岡高裁昭和59年6月19日判決)
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