- トップ
- > 説教等妨害罪とは?構成要件や判例について弁護士が解説
説教等妨害罪とは?構成要件や判例について弁護士が解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
説教等妨害罪とは
説教等妨害罪は、説教・礼拝・葬式を妨害したときに成立する犯罪です。宗教的平穏を保護することを目的としています。
説教等妨害罪の対象は説教・礼拝・葬式の3つに限定されています。そのため、結婚式や托鉢を妨害しても説教等妨害罪にはなりません。もっとも、業務妨害罪や軽犯罪法違反が成立する余地はあります。
【軽犯罪法】 次の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。 24号 公私の儀式に対して悪戯等でこれを妨害した者 |
説教等妨害罪の罰則
説教等妨害罪の罰則は次のいずれかです。
①1年以下の懲役
②1年以下の禁固
③10万円以下の罰金
前科・前歴のない初犯の方であれば略式裁判で罰金になることが多いです。
⇒略式裁判とは?罰金の金額や払えない場合について弁護士が解説
説教等妨害罪の時効
説教等妨害罪の時効は3年です。
説教等妨害罪の構成要件
犯罪が成立するための要件を構成要件といいます。説教等妨害罪の構成要件は次の通りです。
1.説教
説教とは宗教上の教えを解説することです。宗教に関する学問的な解説や宗教行政に関する主張は説教にはあたりません。説教の場所は礼拝所である必要はなく、屋外でもよいとされています。
2.礼拝
礼拝とは、神仏等に対して、祈りを捧げたりして宗教的な尊崇の気持ちを示すことです。説教と同様に、礼拝所でなされる礼拝に限定されず、野外での礼拝も含まれます。
3.葬式
葬式とは、死者を葬る儀式のことです。死者は人間に限られます。ペットの葬式を妨害しても本罪にはあたりません。
通夜は葬式ではありませんが、「礼拝」にあたると解されますので、通夜を妨害した場合は礼拝妨害罪が成立します。
4.妨害
妨害とは、説教・礼拝・葬式のスムーズな進行を困難にする一切の行為をいいます。実際にこれらの行事が中止される必要まではありませんが、スムーズな進行の妨げとなるような支障や混乱が生じていることは必要です。
説教等妨害罪の判例
1.葬儀妨害罪の判例
被害者が、亡くなった父の葬儀を行うために共同墓地に埋葬用の墓穴を掘ったところ、被告人が、実際は境界線を越えていないのに、境界線を越えて自分の墓地にかかったと因縁をつけてその墓穴を埋めた事件。
被害者は別の場所に墓穴を掘らざるをえなくなり、それにより埋葬の時間が遅れて葬式が妨害されたとして、葬式妨害罪が成立するとされました(東京高裁昭和29年1月18日判決)。
2.礼拝妨害罪の判例
通夜の際に、仏壇に置かれた法名が書かれた紙片を被告人が持ち去った事件。これにより通夜に際して法名を礼拝の対象として用いることができなくなったとして、礼拝妨害罪が成立するとされました。
また、持ち去りにより、法名が書かれた紙片を、礼拝の対象という本来の用途に供することができなくなったとして、器物損壊罪の成立も認められました(大審院昭和14年11月11日判決)。
【関連ページ】