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自首にならないケースで警察に出頭するメリット
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
出頭しても自首にならないケース
☑ 保安員に万引きを発見され、逃げる際に運転免許証が入った財布を落としてしまった
☑ 飲食店のトイレにカメラを設置したのがばれて、店長に名刺を渡した
☑ 「この人痴漢です!」と言われ、逃げる際に携帯電話を落としてしまった
これらのケースでは警察に出頭しても自首にならない可能性が高いです。
自首が成立するためには、犯罪と犯人のいずれかが特定されていないことが必要ですが、これらのケースでは、いずれも特定されている可能性が高いためです。
自首にならないケースで警察に出頭する意味はあるのか?
ではこれらのケースで警察に出頭する意味は全くないのでしょうか?
結論から言うと、出頭する意味はあります。
たとえ自首が成立しなくても、証拠を持参して自発的に出頭することにより、証拠を隠滅したり逃亡する可能性が低いとみなされ、逮捕を避けられる可能性が高まるからです。
もし出頭せずに放置していれば、逮捕される可能性は十分にあります。仮に逮捕されなかったとしても、家宅捜索をされ、身元引受人に連絡がいく可能性が高いです。
盗んだ商品や盗撮に使った携帯電話、犯行時に着ていた服などを持参して出頭することにより、逮捕や家宅捜索の可能性を下げることができます。弁護士と一緒に出頭すれば、弁護士が身元引受人になることにより、警察から家族に連絡がいくこともなくなります。
もし、出頭後に逮捕されたとしても、証拠を持参して自ら出頭したことは、逃亡や証拠隠滅のおそれが低いという判断につながりますので、勾留を阻止できる可能性が高まります。
自首にならないケースで逮捕されるか否かを知る方法
逮捕されるか否かは、身元引受の手続があるかどうかでわかります。
警察が家族に電話し、身元引受人として警察署まで迎えに来るように指示していれば、逮捕されることはありません。弁護士と一緒に出頭している場合は、捜査員が弁護士に身柄請書を渡し、署名・捺印するよう促していれば、逮捕されることはありません。
逆にそのような手続きがなければ、逮捕される可能性があります。
出頭した時点で逮捕状が発付されていれば、そのまま家に帰してもらえず署内で逮捕されることになります。出頭した時点でまだ逮捕状が発付されていない場合は、供述調書は作成せず、すぐに帰されます。後日、警察が逮捕状をもって本人の自宅に来ることになります。
このように逮捕されるか否かは身元引受の手続があるか否かによって予測することができます。
【解決事例】出頭後に逮捕されたが翌日釈放されたケース
事案の概要
ご本人は窃盗(万引き)で執行猶予中でしたが、衝動的にスーパーで商品を万引きしてしまいました。店を出たところで保安員に声をかけられ、その場から走って逃げたところ、運転免許証が入った財布を落としてしまいました。
ご本人は、ウェルネスの弁護士にご相談された後、奥様と一緒に警察に出頭しました。出頭後に捜査員から、「事件の内容もあなたが犯人であることもわかっています。ただ急に来られても困るので、今日はとりあえず帰ってください。」と言われ、自宅に戻りました。ご本人はその1月後に逮捕されました。
弁護活動
ご本人が出頭する前に、弁護士が、事件の内容や出頭するまでの経過をまとめた上申書を作成しました。出頭後は、ご本人に窃盗症のクリニックに通ってもらいました。また、謝罪文を作成してもらい、弁護士を通じて被害店舗にお詫びをしました。
ご本人が逮捕された翌日、弁護士が裁判所に上申書を提出するとともに、ご本人が自発的に出頭したことや、再発防止の取組みなどを説明した結果、勾留されることなく、わずか1日で釈放されました。
弁護士のコメント
執行猶予中の再犯は原則実刑です。そのため、裁判官に「逃亡の可能性が高い」と判断されやすく、勾留されることが非常に多いです。ただ、今回のケースでは事前に出頭していたことが功を奏し、勾留を阻止することができました。