• トップ
  • > 強要罪とは?脅迫罪・恐喝罪との違いや強要の事例について

強要罪とは?脅迫罪・恐喝罪との違いや強要の事例について

最近、店員に土下座をさせて強要罪で逮捕されたという事例が報道されています。

 

 

札幌では主婦が衣料品店で購入したタオルケットに穴が開いていたとクレームをつけ、店員を土下座させた写真をTwitterにアップして強要罪で逮捕されました。

 

 

大阪では、男女3人がコンビニ店員の接客態度が悪いとクレームをつけ土下座させたことにより、強要罪で逮捕されました。

 

 

土下座を強要した人もまさか自分が逮捕されるとは思っていなかったでしょう。

 

 

強要罪は耳慣れない犯罪ですが、クレームから発展することが多く、犯罪か否かの境界もあいまいなため、気がつけば強要していたということにもなりかねません。

 

 

このページでは、強要罪の要件や強要罪の事例などについて、刑事事件に詳しい弁護士が解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

強要罪とは

強要罪とは、脅迫または暴行によって、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害することです。

 

 

暴行も脅迫も相手を怖がらせる程度に達している必要はありますが、相手の犯行を抑圧する程度に達している必要まではありません。

 

 

脅迫には次の2種類があります。

 

 

①人の生命、身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知すること

②親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知すること

 

*親族とは6親等内の親族、配偶者、3親等内の姻族をいいます。

 

 

強要罪は「意思決定に基づく行動の自由」を保護しています。

 

 

被害者の意思に反することを行う犯罪として、不同意性交等罪、不同意わいせつ罪、威力業務妨害罪、強盗罪、恐喝罪等がありますが、これらの犯罪は強要罪の特別罪という位置づけになります。

 

強要罪の罰則

強要罪の罰則は3年以下の懲役です。脅迫罪と異なり罰金刑はありません。罰金刑のある犯罪であれば、起訴されても書類のみで審理され、法廷に行かないことが多いです(略式裁判)。

 

 

これに対して、強要罪のように懲役刑しかない犯罪は、起訴されれば法廷ドラマでみるような公開の法廷で審理され(正式裁判)、検察官から懲役刑を請求されます。

 

 

また、逮捕・起訴されれば、保釈されない限り裁判が終了するまで釈放されないことが多いです。

 

 

強要罪の時効

強要罪の時効は3年です。

 

 

強要は民事事件にもなり得ます。民事の時効は次の2つのいずれか短い方です。

 

①被害者が損害及び加害者を知ったときから3年

②被害を受けた日から20年

 

 

強要罪と脅迫罪の違い

強要罪も脅迫罪も人を脅迫するという点では同じですが、強要罪は単に脅迫するだけではなく、その結果として、人に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害する犯罪です。

 

 

脅迫を手段として人に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害するという点で、強要罪は脅迫罪よりも悪質であるとみなされ、刑罰が重くなっています。

 

 

また、強要未遂罪はありますが、脅迫未遂罪はありません。

 

 

 

行為

刑罰

未遂

強要罪

脅迫・暴行+義務のないことをさせるor権利の行使を妨害する

3年以下の懲役

あり

脅迫罪

脅迫

2年以下の懲役

30万円以下の罰金

なし

 

 

 

【具体例】

クレーマーが店員に「殴るぞ!」と言った→脅迫罪

クレーマーが店員に「土下座しないと殴るぞ!」と言って土下座をさせた→強要罪

 

 

【関連ページ】

脅迫に強い弁護士

 

 

強要罪と恐喝罪の違い

強要罪も恐喝罪も暴行・脅迫を手段として行動の自由を侵害する点では共通していますが、お金が絡んでくるか否かという点で違いがあります。

 

 

恐喝罪は相手からお金を巻き上げたり、借金を免除させる財産犯罪です。これに対して、強要罪は、それら以外で義務のない行為をさせたり、権利の行使を妨害する犯罪です。

 

 

強要行為にお金が絡んでくると恐喝罪になると言ってよいでしょう。財産的な被害を生じさせるという点で恐喝罪の方が悪質と評価され、刑罰もずっと重くなります。

 

 

 

行為

刑罰

未遂

強要罪

脅迫・暴行+義務のないことをさせるor権利の行使を妨害する

3年以下の懲役

あり

恐喝罪

暴行・脅迫+金品を交付させるor借金を免除させる

10年以下の懲役

あり

 

 

【具体例】

クレーマーが店員に「迷惑料を払わないと殴るぞ!」と言って1万円を払わせた→恐喝罪

クレーマーが店員に「土下座しないと殴るぞ!」と言って土下座をさせた→強要罪

 

 

【関連ページ】

恐喝に強い弁護士

 

 

強要罪の事例

判例を中心として強要罪の事例をまとめました。

 

1.義務のないことを行わせる事例

①労働争議の際、会社側の職員を取り囲んで、「組合の要求を受け入れないのであれば辞職願を書け。」と執拗に要求し辞職願を書かせた。

 

 

②医師に「院長に世話になったことがある。俺は刑務所へ行っていた。オピスコを打て。」等と言って、麻薬を注射するよう執拗に要求して注射させた。

 

 

③株主総会で暴言を吐いたりして進行を妨害し、自分の提案通りの内容を議事録に記載させた。

 

 

2.権利の行使を妨害させた事例

①刑事事件の被害者に対して「警察に被害届を出したら家族に危害を及ぶぞ。」と言って被害届の提出をやめさせた。

 

 

②「愛犬競技会に犬を出場させたら犬の手足をへし折る。お前の手足もへし折ってやる。」等と言って競技会への出場を断念させた。