脅迫

 

 

脅迫罪の成立要件

脅迫罪は被害者またはその親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を怖がらせた場合に成立します。

 

 

脅迫罪の刑罰

年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

 

 

脅迫の対象

脅迫の対象は被害者またはその親族です。

 

親族とは

・配偶者

親等(=はとこ)までの血族

親等(=配偶者のおじ・おば、配偶者の兄弟の子)までの姻族

です。

 

恋人や内縁の妻、友人、職場の同僚は脅迫の対象にはなりません。例えば、「お前の恋人を痛めつけてやる」と言っても脅迫罪にはなりません。

 

 

脅迫の具体例

 

具体例

生命に対する脅迫

「家族を毒殺する」、「畳の上で死ねたらいい方だ」

身体に対する脅迫

「お前を痛めつけてやる」

自由に対する脅迫

「豚箱に入れてやる」

名誉に対する脅迫

「お前が不倫していることをみんなに言いふらす」

財産に対する脅迫

「お前の車に火をつける」

 

 

脅迫の程度

脅迫は、一般人を怖がらせる程度の害悪の告知である必要があります。困惑させたり不快感を与えるだけでは、脅迫とはいえません。また、常識的に判断して一般人を怖がらせる程度の害悪の告知であれば、被害者が現に怖がっていなかったとしても、脅迫にあたります。

 

 

脅迫の方法

脅迫の方法は暗示でもよいとされています。

 

(暗示による脅迫の具定例)

・「出火見舞い申し上げます。火の元にご用心。」という手紙を送付する

・ナイフを被害者の目の前におき「俺と勝負しろ」と言う

 

 

会社に対する脅迫

判例上、会社(法人)に対する脅迫罪は成立しないとされています。例えば、イベントを主催している会社に脅迫状を送りつけても、その会社に対する脅迫罪は成立しません。ただ、会社の代表者や脅迫状を受け取った従業員個人に対する脅迫罪が成立する余地はあります。また、脅迫状の影響でイベントが中止になった場合は威力業務妨害罪が成立します(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)。

 

 

脅迫罪の特別罪

団体の威力をアピールしたり、凶器を示したり、複数人で共同して脅迫罪を犯した場合は、集団脅迫罪(暴力行為等処罰法1条)が成立します。刑罰は3年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

 

常習的に脅迫罪を犯した場合も常習脅迫罪(暴力行為等処罰法1条ノ3)が成立します。刑罰は懲役3ヶ月~5年です。

 

公務員を脅迫した場合、脅迫罪ではなく公務執行妨害罪が成立します。刑罰は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です。

 

船の乗組員が船長などの上長を脅迫した場合、船員法違反が成立します。刑罰は3年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

 

 

脅迫と逮捕

刑事事件として立件された脅迫罪のうち、被疑者が逮捕されたケースは65%です。逮捕後、勾留される確率は92%です。勾留期間(原則10日・最長20日)が延長される確率は61%です。 

 

*上記の脅迫罪には強要罪も含まれます。

*本ページの数値は平成28年検察統計年報に基づいています。

 

脅迫事件では、従来の人間関係などから容疑者は比較的容易に特定できるが決め手になる証拠がないというケースが少なくありません。「何となく怪しい」というだけで逮捕されることはありませんが、封筒に付着した指紋、切手裏面に付着していた唾液から採取したDNA、押収されたPCに保存されている脅迫文のデータなどの客観的な証拠がある状況で否認を続けた場合は、逮捕される可能性が高くなります。

 ↓↓

早期釈放のための3つの弁護活動

 

 

 

脅迫と前科

脅迫罪で起訴される確率は43%です。起訴された脅迫事件のうち、略式請求されたものが54%、公判請求されたものが46です。初犯者の場合、被害者との間で示談が成立すれば不起訴処分を獲得できる見込みは高いでしょう。前科がある場合でも、示談が成立すれば、執行猶予中の犯行であるなど極めて不利な事情がない限り、実刑を回避できる場合が多いです。

↓↓ 

脅迫罪の前科をつけないためにするべき5つの弁護活動

 

 

【脅迫の関連ページ】

脅迫のご質問

 

 

脅迫罪の弁護活動(罪を認める場合)

(1)示談をする

被疑者を起訴するか否かを決めるのは検察官です。検察官は、脅迫事件の被疑者を起訴するか否か決めるに当たり、示談の成否を非常に重視しています。そのため、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴になる可能性が高まります。脅迫事件の被害者は加害者に対して恐怖心を抱いていますので、交渉全般を通じて被害者の心情に配慮した姿勢が求められます。

示談の相談は弁護士へ

 

 

(2)被害者に謝罪する

被害者の意向に反しなければ、手紙をお送りする等して謝罪します。通り一遍のことを述べるのではなく、自分の言葉で謝罪することが重要です。 

 

不起訴(=前科なし獲得するために…

本人作成の謝罪文の写しを検察官に提出します。また、検察官の前で被害者への謝罪の気持ちを直接語ってもらいます。

 

 

(3)環境を改善する

暴走族などの不良グループの一員として脅迫事件を起こした場合は、そのような組織から完全に離脱することが必要です。そのような組織に入っていなかったとしても、不良交友による荒れた生活が事件の原因になっている場合は、交友関係の見直しを含めた生活環境の改善が必要となるでしょう。いずれにせよ生活環境を立て直すためにはご家族の協力が不可欠です。ご家族には日常生活の中で本人を監督してもらいます。

 

不起訴処分(=前科なし)を獲得するために… 

本人を監督する旨の誓約書をご家族に書いてもらい検察官に提出します。

 

 

(4)被害者に連絡・接触しない

脅迫事件の被害者は加害者に対して強い恐怖心を抱いています。そのため、加害者としては、被害者に一切連絡・接触しないことが重要です。「今後、被害者の住居周辺や勤務先に近づかない。電話やメールもしない。」等といった誓約書を作成し、弁護士を通じて被害者にお渡ししたり、示談書の中にそのような条項を付加します。

 

不起訴処分(=前科なし)を獲得するために…

被害者とコンタクトをとらないことを明記した誓約書や示談書を検察官に提出します。

 

 

(5)専門家の援助を受ける

・ 好意を抱いている異性の気を引こうとして脅迫事件を起こしてしまった

・人間関係のストレス等で精神的に追い詰められ脅迫事件を起こしてしまった

・何をやってもうまくいかず社会に対する鬱憤を晴らすために脅迫事件を起こしてしまった

 

このような場合は精神科医や臨床心理士のカウンセリングを受けることによって考え方や行動パターンを修正することも検討に値します。

 

不起訴処分(=前科なし)を獲得するために…

受診証明書や診断書等を検察官に提出します。

 

 

*その他の弁護活動

① 早期釈放を目指す

身体拘束されている場合は、早期釈放に向けた弁護活動を行います。

 

② 寄付をする

示談が成立しなかった場合、反省の気持ちを示すために慈善団体等へ寄付をすることがあります。公判請求された場合は、寄付したことの証明書を証拠として提出します。

 

 

脅迫罪の弁護活動(無罪を主張する場合)

(1)自白調書をとらせない

脅迫罪において、脅迫文書やメール等の客観的な証拠がない場合、結局「言った言わない」の争いになる場合が少なくありません。そのため、「被疑者の言っていることが信用できるか否か」が大きな争点になります。

 

例えば、被疑者が本当は無実であるにもかかわらず、取調べの際、捜査機関の圧力に屈してしまい「確かに自分は○○と言いました」と心ならずも自白してしまったとします。その場合、後の刑事裁判において、「そんなことは言っていません」と述べたとしても、検察官から「取調べのときは自白してましたよね?」と突っ込まれ、裁判官にも信用性を疑われることになります。

 

捜査機関は、否認を続ける被疑者に対してあの手この手を使って自白するよう働きかけます。不起訴処分や無罪判決を目指すのであれば、このような働きかけに屈しないことが重要になります。弁護士が被疑者と頻繁に接見し、捜査機関のプレッシャーに屈しないよう継続的にバックアップしていきます。

 

 

(2)被害者の供述調書を検討する

脅迫罪において脅迫文書やメール等の客観的な証拠がない場合、 「被害者の言っていることが信用できるか否か」も大きな争点となります。人間の記憶は時の経過とともに衰えていくものですが、取調べが進むにしたがって、被害者の供述がより詳しくなっていくということがあります。

 

また、異なる時点で作成された複数の供述調書の間で、同一の場面についての供述内容が不自然に変化していることもあります。これらは取調べ官の誘導や被害者の恣意的な傾向を強く示唆するものです。弁護士が被害者の供述調書を徹底的に検討することにより、これらの不合理な変遷を炙り出します。

 

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