脅迫

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

脅迫罪とは

脅迫罪は、被害者本人またはその親族の①生命、②身体、③自由、④名誉、⑤財産に対し危害を加える旨を告知して被害者を怖がらせる犯罪です。

 

脅迫罪の刑罰

年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

 

脅迫罪は相手を怖がらせる犯罪ですが、目に見える被害を与えているわけではないので、恐喝罪(10年以下の懲役)や傷害罪(15年以下の懲役または50万円以下の罰金)よりも刑罰は軽いです。

 

脅迫罪の時効

脅迫罪の時効は年です。

 

脅迫罪における「親族」とは

脅迫罪は、被害者またはその親族に危害を加えることを告げて、被害者を怖がらせる犯罪です。

 

この場合の「親族」とは被害者と次の関係にある人をいいます

・配偶者

親等(=はとこ)までの血族

親等(=配偶者のおじ・おば、配偶者の兄弟の子)までの姻族

 

恋人や友人、職場の同僚は脅迫の対象にはなりません。例えば、「お前の恋人を痛めつけてやる」と言っても脅迫罪にはなりません。

  

脅迫の程度

脅迫は、一般人を怖がらせる程度の害悪の告知である必要があります。困惑させたり不快感を与えるだけでは、脅迫とはいえません。また、常識的に判断して一般人を怖がらせる程度の害悪の告知であれば、被害者が現に怖がっていなかったとしても、脅迫にあたります。

 

脅迫の方法

脅迫の方法としては、「殺すぞ」等と言ってストレートに人を怖がらせる場合に限らず、危害を加えることを暗示する方法でもよいとされています。

 

【暗示による脅迫の具体例】

・「出火見舞い申し上げます。火の元にご用心。」という手紙を送付する。

・ナイフを被害者の目の前におき「俺と勝負しろ」と言う。

 

脅迫の具体例

 

具体例

生命に対する脅迫

「畳の上で死ねたらいい方だ」

身体に対する脅迫

「お前を痛めつけてやる」

自由に対する脅迫

「豚箱に入れてやる」

名誉に対する脅迫

「お前が不倫していることをみんなに言いふらす」

財産に対する脅迫

「お前の車に火をつける」

  

 

会社に対する脅迫

判例上、会社(法人)に対する脅迫罪は成立しないとされています。例えば、イベントを主催している会社に脅迫状を送りつけても、その会社に対する脅迫罪は成立しません。ただ、会社の代表者や脅迫状を受け取った従業員個人に対する脅迫罪が成立する余地はあります。

 

また、脅迫状の影響でイベントが中止になった場合は威力業務妨害罪が成立します(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)。

 

脅迫罪の特別罪

団体や多数の人間の威力をアピールして脅迫したときは集団脅迫罪が成立します。凶器を示して脅迫したときは示凶器脅迫罪が成立します。複数人で共同して脅迫したときは共同脅迫罪が成立します。刑罰はいずれも3年以下の懲役または30万円以下の罰金です(暴力行為等処罰法1条)。

 

常習的に脅迫罪を犯した場合も常習脅迫罪(暴力行為等処罰法1条ノ3)が成立します。刑罰は懲役3ヶ月~5年です。

 

公務員を脅迫した場合、脅迫罪ではなく公務執行妨害罪が成立します。刑罰は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です。

 

脅迫の逮捕率は68%【2017】

2017年に刑事事件として処分された脅迫事件のうち、被疑者が逮捕されたケースは68%です。逮捕後、勾留されたケースは90%です。勾留期間(原則10日・最長20日)が延長されたケースは60%です。

 

脅迫事件では、<人間関係などから被疑者は比較的容易に特定できるが決め手になる証拠がない>というケースが少なくありません。

 

「何となく怪しい」というだけで逮捕されることはありませんが、封筒に付着した指紋、切手裏面に付着していた唾液から採取したDNA、押収されたPCに保存されている脅迫文のデータなどの客観的な証拠がある状況で否認を続けた場合は、逮捕される可能性が高くなります。

 

*上記の脅迫罪には強要罪も含まれます。

*本ページの数値は2017年検察統計年報に基づいています。

 

脅迫の起訴率は42%【2017】

2017年に検察庁で取り扱われた脅迫事件のうち、起訴されたケースは42%です。起訴された脅迫事件のうち、略式請求されたケースが61%、公判請求されたケースが39%です。

 

初犯の方の場合、被害者との間で示談が成立すれば、ほとんどのケースで不起訴となります。前科がある場合でも、示談が成立すれば、執行猶予中とか出所したばかりである等の不利な事情がない限り、実刑を回避できることが多いです。

 

脅迫罪の弁護活動(罪を認める場合)

(1)示談をする

被疑者を起訴するか不起訴にするかを決めるのは検察官です。検察官は、脅迫事件の被疑者を起訴するか否か決めるに当たり、示談を非常に重視しています。そのため、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴になる可能性が高くなります。

 

示談をするためには被害者と話しあう必要があります。被害者の連絡先がわからない場合、捜査機関は加害者には連絡先を教えてくれません。連絡先がわかる場合でも、加害者が怖がっている被害者に直接連絡するのは避けるべきです。

 

そのため、被害者との示談交渉は弁護士を通じて行うことになります。脅迫事件の被害者は大きな精神的負担を抱えていますので、弁護士には被害者の心情に配慮した姿勢が求められます。

 

【不起訴を獲得するために】

弁護士が検察官に示談書や示談金の領収書を提出します。

 

(2)被害者に謝罪する

脅迫事件の被害者は加害者から脅迫されて怖い思いをしています。加害者としても何らかの言い分があることが多いですが、脅迫してよい理由にはなりません。

 

加害者には、これまでの被害者との関わりの中でどのような点に問題があったのか、被害者にどのような思いをさせたのかをふまえて謝罪文を書いてもらい、弁護士を通じて被害者にお渡しします。

 

【不起訴を獲得するために】

弁護士が謝罪文の写しを検察官に提出します。本人には、検察官の前で被害者への謝罪の気持ちを直接お話ししてもらいます。

 

(3)被害者に連絡・接触しない

脅迫事件の被害者は加害者に対して強い恐怖心を抱いています。そのため、加害者が被害者に接触したり連絡することは禁物です。接触・連絡しない旨の誓約書を弁護士を通じて被害者にお渡ししたり、示談書の中に接触禁止条項を入れ、被害者に安心してもらいます。

 

【不起訴処分を獲得するために】

弁護士が被害者のご要望を反映した誓約書や示談書を検察官に提出します。

 

(4)専門家の援助を受ける

☑好意を抱いている異性の気をひこうとして脅迫事件を起こしてしまった、

☑人間関係のストレスで精神的に追い詰められで脅迫事件を起こしてしまった

☑何をやってもうまくいかず社会に対するうっぷんを晴らすために脅迫事件を起こしてしまった

 

このようなケースでは、加害者も自分の気持ちをコントロールできず、生きづらさを感じていることが少なくありません。精神科に通院したり、臨床心理士のカウンセリングを受けることによって、認知のゆがみや誤った行動パターンを修正していきます。

 

【不起訴処分を獲得するために】

弁護士が医療機関の受診証明書や医師の診断書を検察官に提出します。

 

(5)環境を改善する

不良グループや反社会集団の一員として脅迫事件を起こした場合は、そのような組織から完全に離脱することが必要です。組織と縁を切り、生活環境を立て直すためにはご家族の協力が不可欠です。ご家族には日常生活の中で本人を監督してもらいます。

 

【不起訴処分を獲得するために】 

ご家族に、本人の更生をどのようにサポートしていくのかを書面にまとめてもらい、弁護士が検察官に提出します。

 

*その他の弁護活動

① 早期釈放を目指す

逮捕・勾留されている場合は、早期釈放に向けた弁護活動を行います。

 

② 供託・寄付をする

示談が成立しなかった場合、賠償金を法務局に供託したり、反省の気持ちを示すために慈善団体等へ贖罪寄付(しょくざいきふ)をします。

⇒弁護士が検察官に供託書や寄付の証明書を提出します。

 

脅迫罪の弁護活動(無罪を主張する場合)

(1)自白調書をとらせない

脅迫罪において、脅迫文書やメール等の客観的な証拠がない場合、結局「言った言わない」の争いになることが多いです。そのため、「被疑者の言っていることが信用できるか否か」が大きな争点になります。

 

例えば、被疑者が本当は脅迫していないにもかかわらず、取調べの際、捜査機関の圧力に屈してしまい「確かに自分は○○と言いました」と自白してしまったとします。

 

その場合、後の刑事裁判において、「そんなことは言っていません」と述べたとしても、検察官から「取調べのときは自白してましたよね?」と突っ込まれ、裁判官にも信用性を疑われることになります。

 

捜査機関は、否認を続ける被疑者に対してあの手この手を使って自白するよう働きかけます。不起訴処分や無罪判決を目指すのであれば、このような働きかけに屈しないことが重要になります。弁護士が被疑者と頻繁に接見し、捜査機関のプレッシャーに屈しないよう継続的にバックアップしていきます。

 

(2)被害者の供述調書を検討する

脅迫罪において脅迫文書やメール等の客観的な証拠がない場合、 「被害者の言っていることが信用できるか否か」も大きな争点となります。人間の記憶は時の経過とともに衰えていくものですが、取調べが進むにしたがって、被害者の供述が詳しくなっていくことがあります。

 

また、異なる時点で作成された複数の供述調書の間で、同一の場面についての供述内容が不自然に変化していることもあります。これらは取調べ官の誘導や被害者の恣意的な傾向を強く示唆するものです。弁護士が被害者の供述調書を徹底的に検討することにより、これらの不合理な変遷を炙り出します。

否認事件の刑事弁護

 

【脅迫のページ】

脅迫の解決事例

脅迫のご質問

刑事事件の法律相談24時間受付

03-5577-3613

お問い合わせ

オーダーメイドの法律事務所

ウェルネス法律事務所

【大きい地図を見る】