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少年鑑別所とは?期間・生活・面会や少年院との違いについて
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
少年鑑別所とは?
少年鑑別所とは、主として、家庭裁判所の観護措置決定を受けた少年を収容して心身の鑑別を行い、どのような処遇が適切かを調査する機関です。法務省が所管し、全国52か所に設置されています。
鑑別とは、医学、心理学、教育学、社会学等の専門知識を活用して、事件を起こした少年自身や周囲の問題点を洗い出し、どのような処遇がふさわしいかを検討することです。
専門知識をもった鑑別技官が、少年に対する知能検査や性格検査の結果、少年との面接状況、鑑別所内での少年の態度などを総合的に分析して鑑別を行います。
鑑別の結果は、鑑別結果通知書にまとめられ裁判所に提出されます。鑑別結果通知書には、「少年院が相当」、「保護観察が相当」等と記載され、裁判官が処分を決めるにあたって参考にされます。
【少年鑑別所法】
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少年鑑別所に入る?入らない?いつ決まる?
少年鑑別所に収容されるか否かは、少年が家庭裁判所に送致された日に決まります。少年鑑別所への収容が問題になるケースは、家庭裁判所に送致される前に勾留されていることが多いです。
勾留とは逮捕に続く身柄拘束です。逮捕は最長3日しかできませんが、勾留されると原則10日、延長されれば最長20日にわたって拘束されます。
検察官は勾留期間内に少年を家庭裁判所に送致します。一般的には勾留の19日目や20日目に送致されることが多いです。少年が家庭裁判所に送致されると、その日のうちに裁判官と面接します。
裁判官は少年の話や検察官から引き継がれた捜査記録を検討し、少年鑑別所に収容するか否かを決めます。少年鑑別所に収容する場合は観護措置決定を出します。決定が出るとその日のうちに裁判所から少年鑑別所に移動します。
少年鑑別所の収容期間は?
少年鑑別所に収容される期間は原則として4週間です。少年法は、鑑別所の収容期間について2週間を超えることはできないと定めていますが、特に更新の必要がある場合は1回に限り更新することができるとしています。
実務では更新されることが通常ですので4週間となります。4週間目またはその直前の平日に少年審判が開かれます。
【少年法17条】(抜粋)
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少年鑑別所と少年院との違いは?
1.収容される少年の立場の違い
少年鑑別所も少年院も少年を収容する施設という点では同じです。もっとも、少年鑑別所は主として少年審判で保護処分が出る前の少年を収容する施設であるのに対して、少年院は少年院送致の保護処分が出た後の少年を収容する施設という点が異なります。
2.収容目的の違い
少年鑑別所は、主としてどのような保護処分が適切かを判断するために少年を収容する施設です。これに対して、少年院は教育的措置により少年の改善更生を促し、社会復帰を支援するために少年を収容する施設です。
3.収容期間の違い
少年鑑別所への収容期間は原則として4週間ですが、少年院の場合は4か月から2年超になります。少年鑑別所は、どのような処分が適切かを判断するために中間的に収容される施設であるため、最終処分である少年院に比べると収容期間が短くなります。
少年鑑別所での生活は?
少年鑑別所ではトイレ付きの個室が用意されており、部屋には学習机やテレビもあります。警察署の留置場に比べると、過ごしやすいと感じる方が多いです。留置場と異なり、少年鑑別所の接見室にはアクリル板もありません。
鑑別所に入所すると、まず身体測定と医師の診察が行われます。その後、鑑別技官と面接し、事件のことや生活状況等について聞かれます。また、知能テストや性格テストを受けます。裁判所からやって来た家庭裁判所調査官とも面接します。
鑑別所では数学などの授業が実施されることもあります。運動の時間もあり、他の収容者と一緒にバスケットボールやキャッチボール、ジョギング等をします。ただ、収容者同士で話をすることはできず、運動中も必ず近くに職員がいます。
鑑別所の中には本があり、借りて室内で読むことができます。室内ではテレビを見ることもできます。自由に好きなテレビを視聴できる時間や教養DVDを見る時間が決められています。一斉放送で映画を視聴することもあります。
少年鑑別所の鑑別技官と家庭裁判所調査官との違いは?
少年鑑別所に収容されると、鑑別技官による鑑別とは別に、家庭裁判所調査官の調査も受けることになります。
家庭裁判所調査官とは心理学や教育学を修めた少年犯罪の専門家です。少年が非行に走った原因や問題点を分析し、どのような処分が適切かを判断します。
⇒【少年事件】家庭裁判所調査官とは?活動内容や弁護士との違い
鑑別技官も家庭裁判所調査官も少年にとっての適切な処遇を検討するという目的は同じですが、調査の手法がやや異なっています。
鑑別技官は知能テストや性格検査を幅広く実施します。また、少年鑑別所で少年の日々の生活に触れているため、ふだんの言動をつぶさに観察した上で鑑別の材料としています。
これに対して、家庭裁判所調査官は、少年と接している時間は鑑別技官より少ないものの、少年の家族や担任の先生、主治医などより多くの方から話を聞き、調査の材料とする傾向があります。
裁判官はどちらの意見も参考にしてどのような処分にするのかを決めます。
少年鑑別所での面会
1.面会できる人は?
少年鑑別所での面会は、必要と認められる者に限り許可されます。少年の家族であれば問題なく面会が許可されるでしょう。家族以外であっても学校の先生や雇い主であれば許可される可能性が高いです。少年の友人や彼女は許可されないと思われます。
【少年鑑別所処遇規則】
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2.面会できる時間は?
少年鑑別所での面会については以下のように定められていることが多いです。
面会時間 | 午前8時30分~午後0時、午後1時~午後5時 |
受付時間 | 午前8時30分~午前11時30分、午後1時~午後4時30分 |
*面会できる時間は30分です。
*土日祝日、12月29日~1月3日は面会できません。
*免許証等の身分証明証を持参してください。
*差し入れをする際は印鑑が必要です。
【スムーズに面会できるようにするために】 家族が少年鑑別所に面会に行った際、家庭裁判所調査官が少年と面会中で長時間お待ちいただくことがあります。調査官が順番を譲ってくれることもありますが、調査が中断されてしまいます。
弁護士が家庭裁判所調査官に問い合わせれば、事前に面会予定を教えてもらえますので、弁護士を通じて調査官の予定を共有することにより、調査官の面接とバッティングしないようにしましょう。 |
少年鑑別所での面会の注意点
少年の家族が少年と面会する際は、鑑別所の職員が立ち会い、面会時の家族や少年の言動を記録しています。これらの記録も少年の鑑別のための資料となります。
面会の際、親が少年に対して、頭ごなしに𠮟りつけたり、「あなたのせいでこんなに困っている。」等と自分が被った負担ばかり強調していると、「少年を適切に指導・監督していけるのか?」という疑念を鑑別技官に与えかねません。
少年の話に冷静に耳を傾け少年の心に寄り添いながら、「自分も至らない点があったが、一緒に問題を解決していこう。」というスタンスで面会に臨むとよいでしょう。