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逮捕・監禁罪とは?要件や不起訴・執行猶予のポイントについて解説
川崎市の自宅で手錠等を使って37歳の長男を監禁したとして、両親と妹が逮捕監禁容疑で逮捕されました。逮捕・監禁罪は人の行動の自由を保護する犯罪です。
このページでは、逮捕・監禁罪の要件や事例、示談について、弁護士 楠 洋一郎が解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
逮捕・監禁罪の構成要件
犯罪が成立するための要件を構成要件といいます。逮捕・監禁罪の構成要件は、「不法に人を逮捕し、または監禁すること」です。
【「不法に」とは】
逮捕・監禁の中には刑事手続としての逮捕・勾留、自分や他人を傷つけるおそれのある精神病者・泥酔者の保護といった適法な行為も含まれるため、それらと区別するために「不法に」という要件が定められています。
逮捕・監禁とは
1.逮捕とは
逮捕とは、人の身体を直接拘束し行動の自由を奪うことです。
【逮捕の例】 ロープで手足を縛って動けなくする |
2.監禁とは
監禁とは、人が一定の区域から出ることを不可能または著しく困難にして行動の自由を奪うことです。
【監禁の例】 部屋に閉じ込め外からカギをかける。 |
監禁は必ずしも閉じ込める手口に限られません。
【閉じ込め以外の監禁の例】 バイクの後部座席に被害者をのせて疾走する。 |
物理的には脱出できる状況でも、脅迫によって恐怖心を植え付けられて脱出が著しく困難な場合は監禁罪になります。
【脅迫による監禁の例】 マンションの部屋に連れ込んだ被害者に「ここから出たら殺すからな」と言って、鍵を開けたまま一人で外出した。 |
3.逮捕・監禁の要件
逮捕にせよ監禁にせよ、人の行動の自由を侵害したといえる程度に行為が継続していることが必要です。一瞬、拘束しただけであれば暴行罪が成立するにとどまります。
監禁罪になる?ならない?
①被害者が寝ている間に外から部屋のカギをしめて閉じ込めた
⇒監禁罪になる
逮捕・監禁罪が保護している行動の自由は、可能性のレベルで足りるとされています。そのため、熟睡・泥酔している人のように、一時的に行動の自由を失っているだけであれば、逮捕・監禁罪の被害者になり得ます。
また、逮捕・監禁罪が成立するためには、被害者に逮捕・監禁されているという認識は不要とされています。 |
②生まれたばかりの嬰児が寝ている部屋の外からカギを閉めて閉じ込めた
⇒監禁罪にならない
生まれたばかりの嬰児には、可能性のレベルであっても行動の自由はないと考えられるため、監禁罪の被害者にはなりません。 |
③3歳の幼児を部屋の中に閉じ込めた
⇒監禁罪になる
幼児には民法上の意思能力・行為能力や刑法上の責任能力はありませんが、事実として動き回ることができるので、閉じ込めた場合は監禁罪になります。 |
逮捕・監禁致死傷罪
逮捕・監禁して被害者を負傷させたり死亡させた場合は、逮捕・監禁致死傷罪が成立します。本罪が成立するためには、逮捕・監禁行為と死傷結果との間に因果関係があることが必要です。
【判例で因果関係が認められたケース】
①被害者が走行中の自動車から飛び降りて死亡したケース
②監禁されていた3階の部屋の窓から飛び降りて死亡したケース
③被害者を自動車のトランク内に監禁していたところ、別の自動車が後方から追突して被害者が死亡したケース
これらのケースのように被害者や第三者の行為が介在した場合したからといって、因果関係が否定されるわけではありません。
逮捕・監禁罪の罰則
逮捕・監禁罪の罰則は懲役3か月~7年です。罰金はありませんので、起訴されれば公開法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されることになります。ただ、執行猶予がつけば刑務所に入ることはありません。
逮捕して一連の流れで監禁した場合は、包括的に一つの逮捕監禁罪が成立します。逮捕監禁致傷罪の罰則は懲役3か月~15年、逮捕監禁致死罪の罰則は懲役3年~20年です。
逮捕・監禁罪の時効
逮捕・監禁罪の時効は5年です。
逮捕・監禁致傷罪の時効は10年です。
逮捕・監禁致死罪の時効は20年です。
逮捕・監禁罪は「継続犯」といって、逮捕や監禁が続いている限り犯罪も継続しています。そのため、時効がスタートするタイミングは逮捕や監禁の終了時点となります。
監禁罪の事例
①監禁して強姦した事例
知人女性を自宅に連れこんで強姦したケースで、女性が部屋から出て行こうとしたにもかかわらず出さなかった場合は、強制性交等罪に加えて監禁罪でも立件されることが多いです。
②家族を監禁した事例
家庭内で精神疾患の家族をどう扱ってよいかわからず、物置き等に監禁する事例です。警察に発覚すれば、関与した家族全員が逮捕され、大きく報道される可能性が高いです。
監禁罪に加えて、医師の治療を受けさせるなど生存のために必要な措置をとらなかったとして、保護責任者遺棄致死罪に問われることもあります。
③制裁のため監禁した事例
不良グループのメンバーが制裁を加えるために被害者を監禁して集団で暴行する事例です。
監禁の手段としての暴行は監禁罪に含まれるため、暴行罪が成立することはありませんが、監禁した後に制裁目的で暴行した場合は、監禁罪に加えて暴行・傷害罪も成立します。
逮捕・監禁罪と示談
逮捕・監禁罪で逮捕されれば、被害者と示談をすることが最も重要です。示談がまとまれば、不起訴を獲得できる可能性が高くなります。
不起訴を狙うのであれば、最長20日の勾留期間内に示談をまとめた上で、検察官に示談書を提出する必要があります。いったん起訴されれば示談が成立してもさかのぼって不起訴になることはないため、勾留期間内にぜひとも示談をまとめたいところです。
被害者は、逮捕や監禁によって非常に怖い思いをしているため、たとえ連絡先を知っていたとしても、示談交渉は弁護士に任せた方がよいでしょう。
被害者の連絡先がわからない場合は、まずは弁護士を通じて警察や検察の担当者に連絡s会を確認することになります。
逮捕・監禁罪の示談以外の弁護活動
起訴するか不起訴にするかを決めるのは検察官です。起訴された場合は、実刑にするか執行猶予にするかを決めるのは裁判官です。
検察官や裁判官は、逮捕・監禁罪の処分を決めるにあたって、示談以外にも様々な事情を考慮します。それらの事情を事件に関する「犯情」とそれ以外の「一般情状」に分けて整理すると以下のようになります。
【犯情】
・逮捕・監禁に至る経緯
・被害者との関係
・計画性の有無
・逮捕・監禁の手口
・逮捕・監禁していた期間
・逮捕・監禁中の対応
【一般情状】
・反省の有無
・家族の監督状況
・前科・前歴
犯情について被疑者に有利に働くものがあれば弁護士がもれなく指摘します。一般情状については、家族に誓約書を作成してもらい検察官に提出したり、公判の際に情状証人として出廷してもらいます。
⇒情状証人とは?尋問の流れや本番で役に立つ4つのポイントを紹介
このような活動により不起訴や執行猶予の可能性を高めます。