国選弁護人の報酬はいくら?誰が払う?

国選費用

 

このページでは、被疑者国選と被告人国選(第1審)の報酬について弁護士 楠 洋一郎が解説しています。

 

 

国選の報酬は誰が払う?

国選弁護人の報酬は、日本司法支援センター(法テラス)が支払います。国選弁護は貧困等の事情により私選弁護人をつけられない方にも弁護人選任権を保障するための制度ですので、原資は国民の税金です。

 

 

国選の報酬システムは2つ

国選弁護には起訴「前」の弁護を行う被疑者国選と、起訴「後」の弁護を行う被告人国選の2つのタイプがあります。

 

 

被疑者国選で弁護していた被疑者が起訴されると、同じ弁護士がそのまま被告人国選も担当します。ただ、報酬の算定システムは被疑者国選と被告人国選で大きく異なっています。

 

 

これからそれぞれの算定システムをみていきましょう。

 

被疑者国選の報酬はいくら?

1.接見した回数が基準

被疑者国選の報酬は接見した回数が基準になります。私選弁護人と異なり着手金はありません。

 

 

起訴前に勾留されていた期間に応じて基準となる接見回数が決められています。接見した回数が基準回数に満たない場合は、接見1回あたり2万円が報酬になります。接見した回数が基準回数と同じであれば、<接見1回あたり2万円+6400円>となります。

 

接見の基準回数は以下の通りです。

弁護期間
(起訴前に勾留されていた期間)

基準回数

4日以下

1回

5~8日

2回

9~12日

3回

13~16日

4回

17~20日

5回

 

国選事件では多くのケースで勾留期間は「17~20日」となります。この場合、接見の基準回数は5回になり、具体的な報酬は以下のようになります。

 

接見回数

報酬

1回

2万円

2回

4万円

3回

6万円

4回

8万円

5回

10万6400円

 

2.基準回数を超えた接見の報酬は?

被疑者国選の報酬は接見した回数が多くなるほど増えていきますが、基準回数を超えて接見した場合、超えた部分の報酬は大幅にダウンします。

 

 

基準回数を1回超えて接見した場合の報酬は5割ダウンして1万円となります。基準回数を2回超えた場合は、超過1回あたり8000円とさらに低くなり、3回以上超えた場合は4000円、10回以上超えた場合は3000円まで下がってしまいます。

 

【超過接見の報酬】

基準回数を何回超えたか

超えた部分の報酬総額

接見1回あたりの報酬額

1回

1万円

1万円

2回

1万6000円

8000円

3回~9回

1万6000円+(超過した回数-2)×4000円

4000円

10回~

4万4000円+(超過した回数-9)×3000円

3000円

 

3.成果報酬もある

被疑者国選の報酬は接見した回数がベースになりますが、それ以外にも特別の成果を出した場合に成果報酬が支給されます。

 

【特別成果報酬】

①釈放

5万円

②示談成立等

3万円(被害者が1名の場合)

 

釈放の報酬は準抗告の申立て勾留取消請求をして釈放された場合に支給されます。

 

 

示談成立等の報酬は、示談が成立した場合だけではなく、全損害の50%相当分以上の被害弁償がなされた場合や減刑嘆願書を取得した場合にも支給されます。

 

 

もっとも、①と②が重複して支給されることはありません。また、私選弁護人と異なり、不起訴を獲得したことによる成果報酬はありません。

 

4.その他の報酬

その他の加算報酬として、外国人事件の場合の要通訳事件加算、接見先の留置場が遠い場合の遠距離接見加算などがあります。

 

5.報酬の具体例

【国選でよくある事例】

・被疑者がコンビニで万引きし窃盗で逮捕・勾留された

・勾留期間は20日

・接見回数…5回

・店長と示談が成立→示談書を検察官に提出勾留の満期日に釈放→不起訴

 

【報酬額】

13万6400円になります。

 

【報酬の内訳】

接見に伴う報酬

10万6400円

示談に伴う報酬

3万円

合計

13万6400円

 

被告人国選の報酬はいくら?

1.報酬のしくみ

被告人国選の報酬は、<基礎報酬+公判加算+判決宣告期日加算>の3本立てです。被疑者国選と異なり接見回数が基準になるわけではありません。それぞれの報酬についてみていきましょう。

 

2.基礎報酬

基礎報酬は事件のタイプによって以下のように決められています。

 

【基礎報酬】

事件のタイプ

金額

簡易裁判所の事件

6万6000円

地方裁判所の事件

単独事件

7万7000円

通常合議事件

8万8000円

重大合議事件

9万9000円

*重大合議事件とは殺人などの裁判員裁判対象事件のことです。

 

3.公判加算

公判加算は公判の時間と回数を基準として支給される報酬です。時間や回数が増えれば報酬額も増えていきます。地方裁判所の単独事件の公判加算額は以下のようになります。

 

公判時間

1回目

2回目以降

~45分

0円

5800円

45分~1.5時間

5800円(ほとんどこの金額になる)

8200円

1.5時間~2.5時間

8200円

1万3600円

 

ほとんどの事件では、公判は1回で時間は1時間程度ですので、公判加算は5800円になります。

 

4.判決宣告期日加算

判決宣告日加算は判決日に加算される報酬で通常3000円です。判決宣告は5分~10分程度で終わるため報酬も低めになっています。

 

5.その他報酬

追起訴された場合は1万5000円が加算されます。何件追起訴されても1万5000円しか加算されないため、オレオレ詐欺などで何回も追起訴された場合は採算がとれにくくなります。

 

 

無罪判決を獲得した場合は最大50万円、一部無罪の場合は最大30万円の限度で報酬が加算されます。

 

 

被害者との間で示談をまとめたり被害弁償をした場合は3万円が加算されます。保釈が許可された場合は1万円が加算されます。

 

 

遠方への出張が必要な場合は、距離に応じて1回あたり4000円または8000円が加算されます。

 

 

私選弁護人と異なり、執行猶予の報酬金はありません。

 

6.報酬の具体例

被告人国選の多くは被疑者国選からの継続で、地方裁判所で一人の裁判官によって審理されます。起訴事実に争いがないことが多く、公判回数は通常1回、時間は1時間程度です。公判の1,2週間後に判決が言い渡されます。

 

 

このケースの報酬額は、原則として7万3800円です。

 

【報酬の内訳】

基礎報酬

7万7000円

公判加算

5800円

判決宣告期日加算

3000円

継続減算

-1万2000円

合計

7万3800円

 

被疑者段階から継続して被告人国選を担当した場合は、「継続減算」と言って1万2000円も減額されてしまいます。

 

国選の報酬は安い?

国選で多いのは窃盗と覚せい剤の自白事件です。これらの事件で国選弁護人となり、起訴前から判決言い渡しまで担当した場合、通常は20万円前後の報酬になります。

 

 

私選弁護人であれば上記のケースで100万円~300万円程度の弁護士費用になるため、私選と比べれば国選の報酬はかなり安いといえるでしょう。

 

国選弁護人の活動の限界

被疑者国選の報酬は接見した回数が基本となりますが、接見回数が基準回数を超えるといっきに報酬が下がるしくみになっています。起訴後については、原則として何度接見しても報酬には反映されません。

 

 

そのため、基準回数(5回になることが多いです)を超えてひんぱんに接見してくれる国選弁護人は少ないようです。起訴されたとたんに接見回数がガクンと落ちる国選弁護人もいるようです。

 

 

起訴前は接見に来てくれたのに、起訴されたとたんに国選弁護人から「今後は質問があれば手紙を出してください。」と言われた被告人もいます。

 

 

ただ、これは「国選弁護人のやる気がない」というよりも、熱心に接見すればするほど、採算がとれにくくなる報酬システムに問題があるともいえるでしょう。

 

 

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