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国選弁護人の資力要件とは?資力申告書についても解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
国選弁護人の資力要件
国選弁護の制度は、経済事情により私選弁護人を選任できない方のために、国民の税金によって運営されています。
そのため、国選弁護人を利用できるのは、原則として資産が50万円未満の人に限られます。「50万円以上の資産を持っているのであれば、自分のお金で私選弁護人を選任してください。」ということです。
資力要件の基準となる50万円は、現金や預金といった流動性のある資産の額です。不動産は売却して現金化するまで時間がかかるため、すぐに私選弁護人の費用にあてられるわけではありません。そのため、資産にはカウントされません。
資産として考慮されるのは本人の資産のみです。家族の資産は考慮されません。一方、本人に借金があるからといって、資産から差し引かれるわけではありません。
【資力要件についての具体例】
2000万円相当の土地と30万円の預金がある ⇒土地は資産にカウントされないため、資産50万円未満とみなされます。 |
預金が300万円あるが、住宅ローンが2000万円残っている ⇒借金は考慮されないため、資産50万円以上とみなされます。 |
父が多額の貯金をもっているが、自分の資産は現金3万円しかない。 ⇒家族の資産は考慮されないため、資産50万円未満とみなされます。 |
国選弁護人と資力申告書
50万円以上の資産があると原則として国選弁護人を利用できません。
そのため、50万円以上の資産があるかどうかを裁判所が判断できるようにするため、国選弁護人の選任を請求する際は、「資力申告書」という書面に資産状況を記入しなければいけません。
裁判所は、この資力申告書をチェックして、国選弁護人を選任してよいかどうかを判断します。
逮捕・勾留・起訴されている状況で自分の正確な資産を把握している人は少ないと思われます。そのため、資力申告書はその時点での記憶に基づいて書けばよいことになっています。
ただ、明らかに50万円以上の資産があるにもかかわらず、裁判所(裁判官)の判断を誤らせる目的で、資力申告書に虚偽の記載をしたときは、10万円以下の過料を科されることがあるため、正直に記載してください。
【刑事訴訟法38条の4】 裁判所又は裁判官の判断を誤らせる目的で、その資力について虚偽の記載のある資力申告書を提出した者は、10万円以下の過料に処する。 |
50万円以上の資産があっても国選弁護人を呼べるケース
50万円以上の資産があれば、常に国選弁護人を選任してもらえないというわけではありません。
50万円以上の資産があっても、弁護士会から派遣される当番弁護士に私選弁護を依頼して断られた場合は、国選弁護人を選任してもらうことができます。
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50万円以上の資産があっても、弁護士の都合で断られた場合にまで国選弁護人を利用できないとするのは酷であることから、このような例外が定められています。
50万円以上の資産がある人が国選弁護人を選任する流れは次の通りです。
①弁護士会に当番弁護士の接見を依頼する。 ↓ ②当番弁護士が接見に来る ↓ ③その弁護士に私選弁護を依頼する⇒断られる ↓ ④当番弁護士が不受任通知を弁護士会にFAXする⇒弁護士会が裁判所に通知する ↓ ⑤国選弁護人の選任を請求する |
【必要的弁護事件と資力要件】 死刑、無期懲役、長期3年を超える懲役・禁錮が法律で定められている事件は、弁護人がいなければ審理することができないとされています。このような事件を必要的弁護事件といいます。
必要的弁護事件については資力要件はありません。50万円以上の資産がある方でも無条件で国選弁護人を選任することができます。そのため資力申告書の作成も不要です。 |
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