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交通違反と意見の聴取
意見の聴取とは
交通違反に対する行政処分として、免許の取消や90日以上の免許停止を行う場合、公安委員会は、公開の場で、本人の意見を聴かなければいけません。これが意見の聴取です。この手続で、本人は意見を述べ有利な証拠を提出することができます。
公安委員会は、意見の聴取を実施する前に、処分を受ける者に対して、意見の聴取日時や場所、処分の理由等を記載した「意見の聴取通知書」を送付します。
意見の聴取に参加するかどうかは本人の自由ですが、欠席した場合は、本人の意見を聴かずに処分を下すことができます。
意見の聴取と刑事手続
飲酒運転、スピード違反、人身事故などの交通違反は、行政処分の対象になると同時に、刑事事件として刑事処分の対象にもなり得ます。
交通違反=行政処分の対象+刑事処分の対象
意見の聴取は、行政の手続であって刑事事件の手続ではありません。刑事事件の手続は意見の聴取とは別個に進んでいきます。意見の聴取と刑事処分の順番についても特に決まりはありません。刑事処分が決まる前に意見の聴取に呼ばれることもありますし、刑事処分が決まってから呼ばれることもあります。
このように行政の手続と刑事の手続は、別個独立に進んでいきますので、どちらか一方の処分が他方の処分を拘束するわけではありません。
もっとも、刑事事件について、嫌疑不十分で不起訴処分になったり、裁判で無罪判決が確定した場合は、行政処分についてもその結果を尊重すべきといえます。
このようなケースで意見の聴取に呼ばれた場合は、不起訴処分告知書や判決書を公安委員会に提出し、どのような判断過程で不起訴や無罪になったのかを十分に主張すべきです。
意見の聴取までの流れ(イメージ)
5月1日
わき見運転により死亡事故を起こす。
10月20日
刑事裁判で禁固1年6月・執行猶予3年の判決が下される。
11月1日
意見の聴取通知書が自宅に届く。
通知書には意見の聴取日時として「11月23日午前9時」、意見の聴取場所として「東京都千代田区霞が関2丁目1番1号 警視庁本部意見の聴取会場」と記載されている。
意見の聴取当日の流れ(イメージ)
午前9時5分
受付で意見の聴取通知書と運転免許証を提出する。引き換えに番号がついた札を渡され庁舎内に入り、他の参加者と一緒に聴聞室で待機。
午前9時15分
進行役の行政処分課の職員が入室。出欠を確認し、点数制度の概要を説明。「ここは裁判所ではないので事実を争う場所ではありません」との注意あり。
午前9時25分
休憩
午前9時30分
①聴聞官が流れを説明。
聴聞官:「立会い警察官がみなさんの行政処分に関する事実関係を読み上げます。私が促したら意見を簡潔に述べてください。法律論争をしたり、事実関係を争う場ではないので注意してください。」
②意見の聴取開始。進行役の職員が番号と氏名を読み上げる。
→呼ばれた人が一番前の席に進み出る。
→進行役が、事件の概要、処分理由、累積点、前歴の有無を読み上げていく。
進行役:「それでは1番の山田さんどうぞ。処分理由をいいます。あなたは、令和元年○月○日午後○時○分頃、0.25mg以上の酒気を帯び、〇〇区内において普通乗用車を運転した酒気帯び運転25点。他に累積点として、平成○年○月○日踏切不停止の2点。前歴として、平成○年○月○日免許停止90日。以上前歴1回、累積点27点です。」
聴聞官:「今言った事実に間違いはありますか?」
出席者:「間違いありません。」
聴聞官:「何か意見はありますか?」
→出席者が意見を言う
*このようなやりとりを出席者の数だけ行います。
午前10時30分
出席者全員の意見聴取が終了。
進行役:「これから公安委員会で審議をします。それまで庁舎内で待機しておいてください。今度11時55分頃に集まってもらいます。」
午前11時55分
進行役より今後の手続について説明あり。
「みなさんほとんどの方が運転免許の取消処分でこられています。取消処分になると車の運転ができなくなります。運転すると無免許運転になりますので注意してください。」
「今後車の運転をするためには新たに免許をとっていただく必要があります。」
「新たに免許をとるためには、まず取消処分者講習を受けてください。講習を受けていただくと終了証をもらえます。終了証は1年間有効ですので、その期間内に免許をとってもらうことになります。講習を受けないと免許はとれません。」
「処分に納得のいかない場合は審査請求や処分取消しの訴えをすることができます。」
「ご住所とお名前をお呼びしますので、確認して間違いなければ本日は終了となります。」
→処分結果を聞き運転免許取消処分書をもらって終了。
意見の聴取と処分の軽減
飲酒運転、無免許運転、ひき逃げについては、処分の軽減は難しいでしょう。ただ、ひき逃げについては刑事事件が嫌疑不十分で不起訴になった場合は、処分軽減の余地があります。
スピード違反と人身事故については、本人の反省の程度やこれまでの違反歴、示談の有無(人身事故)等により処分が軽減される余地があります。
意見の聴取後の処分に不満があるとき
意見の聴取を受けた後、その日のうちに処分が下されます。
処分に不服がある場合は次の2つの方法をとることができます。
①審査請求
②処分の取消しの訴え
両者の違いをまとめると次のようになります。
| 申立ての期間 | 判断者 |
審査請求 | 処分があったことを知った日の翌日から3か月間 | 公安委員会 |
処分の取消しの訴え | 処分があったことを知った日の翌日から6か月間 | 裁判所 |
審査請求は、最初に処分を下した公安委員会が判断するので、公平性に問題があるといえます。処分の取消しの訴えについては、第三者である裁判所が判断するのでこのような問題はありませんが、時間と手間がかかるというデメリットがあります。
いきなり処分の取消しの訴えを提起してもよいですし、まず初めに審査請求を申立て裁決に納得がいかない場合に、処分取消しの訴えをすることもできます。
この場合は裁決があったことを知った日の翌日から6月以内に訴訟提起する必要があります。
意見の聴取と弁護士
意見の聴取においては、代理人を出席させることもできます。代理人については弁護士に限られるわけではありませんが、行政処分の軽減を求める活動と刑事弁護活動は内容的にはほぼ同一ですので、刑事事件を依頼した弁護士がいるのであれば、意見の聴取についても相談することをおすすめします。