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準強制わいせつとは?逮捕を回避するポイントや慰謝料の相場を解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
目次
準強制わいせつとは?
準強制わいせつとは、人が心神喪失や抗拒不能の状態にあることを利用して、または、人をそのような状態にさせてわいせつな行為をすることです。
「心神喪失」とは精神機能に障害があり、わいせつ行為について認識できない状態のことです。
【心神喪失の例】
・熟睡している
・泥酔している
・重度の精神病にかかっている
「抗拒不能」とは心神喪失以外の理由で心理的・物理的に抵抗できない状態をいいます。
【抗拒不能の例】
・医師の説明により正当な医療行為と誤信している
・モデルになるために全裸での写真撮影が必要であると言われ拒める状況にない
・自ら車を運転して高速道路を走行している
心身喪失や抗拒不能の程度としては、著しく抵抗が困難であれば足りるとされています。抵抗が完全に不可能である必要はありません。
準強制わいせつの刑罰
準強制わいせつ罪の刑罰は、強制わいせつと同じで、懲役6ヶ月~10年です。罰金はありませんので、起訴されれば略式裁判ではなく正式裁判で審理されます。
準強制わいせつの時効
準強制わいせつ罪の時効は7年です。
準強制わいせつと強制わいせつの関係
準強制わいせつ罪は、強制わいせつ罪ではカバーしきれないわいせつ行為を処罰するための犯罪です。そのため、強制わいせつ罪が成立しないときに初めて準強制わいせつの罪の成否が問題になります。
次の2つのケースでは、強制わいせつ罪が成立するため、準強制わいせつ罪の成否は問題になりません。
①13歳未満の被害者に対してわいせつ行為をしたケース
②暴行・脅迫により被害者を抵抗することが著しく困難な状態にさせてわいせつ行為をしたケース
したがって、準強制わいせつ罪が成立するのは、次の2つの要件を両方満たした場合になります。
①被害者が13歳以上である
②暴行・脅迫以外の手段で被害者を抵抗することが著しく困難な状態にしてわいせつな行為をした
または
抵抗することが著しく困難な状態にある被害者にわいせつな行為をした
準強制わいせつのよくある事例
①カラオケボックスで酔って寝ていた知人女性にキスをした
②泥酔した女性を家まで送ってベッドに寝かせた後に胸を舐めた
③医師が触診をする必要がないのに必要だと誤信させて女性患者の胸を触った
薬を飲ませて抵抗できなくさせた上でわいせつな行為をすることもありますが、そのようなケースでは性交までしていることが多く、より重い準強制性交等罪が成立することが多いです。
準強制わいせつと被害者の承諾
被害者が加害者と性行為をすることについて承諾していれば準強制わいせつにはなりません。
もっとも以下のようなケースでは、泥酔状態にある被害者が状況を理解して有効な承諾をする能力はないと考えられるため、承諾があったとは認められないでしょう。
泥酔してぐったりしている被害者に対して、加害者が「胸を触っていい?」と尋ねたところ、被害者がもうろうとしながら「いいよ。」と言った。 |
このような場面では、男性は「OKしてくれている」と自分に都合よく解釈する傾向がありますので、大丈夫と思っても一度弁護士に相談した方がよいでしょう。
承諾はないがあったと誤解した場合は、準強制わいせつの故意がなく同罪は成立しません。
もっとも、上のようなケースで、被害者が泥酔していることを認識していれば、正常な判断能力がないこともまた認識していたといえるので、「承諾があったと誤解した」と主張しても、裁判で認められることはまずありません。
ただ、上のケースで被害者がそこまで泥酔していなかったのであれば、承諾があったと誤解したという主張が認められる余地があります。
準強制わいせつの関連犯罪
準強制わいせつの結果、被害者にケガをさせたり死亡させると、準強制わいせつ致死傷罪が成立します。刑罰は懲役3年~20年または無期懲役です。
準強制わいせつ致死罪の時効は30年、準強制わいせつ致傷罪の時効は15年です。
準強制わいせつ致死傷罪は裁判員裁判で審理されます。
膣に指を入れたことにより膣擦過傷と診断されれば、全治1週間程度の軽傷でも準強制わいせつ致傷罪になってしまいます。 |
準強制わいせつで逮捕を回避するためのポイント
準強制わいせつの特徴として、加害者と被害者が知り合い同士であり、加害者が何らかの形で被害者と連絡をとれることが多いという点が挙げられます。
被害者が警察に被害を訴える前に示談をすることができれば、刑事事件になることを阻止することができます。事件化しなければ逮捕されたり報道されることはありません。
準強制わいせつが問題になるケースで、被害者の連絡先がわかっているのであれば、早急に示談交渉を検討した方がよいでしょう。
ただ、連絡先を知っていたとしても自分で被害者に連絡することは禁物です。いきなり加害者から連絡を入れると被害者に多大な恐怖感を与えてしまい、かえって警察に訴えられるおそれが高まってしまいます。
そのため、示談交渉は弁護士に依頼するとよいでしょう。ウェルネスではLINEでしかつながっていないという状況からでも多数の示談を成立させています。
準強制わいせつと自首
準強制わいせつのケースでは、被害者の連絡先を把握しているのであれば、まずは弁護士を通じて、被害者と示談交渉すべきです。
もっとも、「当日知り合ったばかりでSNSを含め連絡先は一切知らない」というケースでは、被害者とコンタクトがとれませんので、示談交渉に入ることができません。
この場合、逮捕を防ぐために警察に自首することが考えられます。余罪が何件もあれば自首しても逮捕される可能性が高いですが、1件だけであれば逮捕を回避できる余地が十分にあります。
示談交渉については、自首した後に、弁護士が警察官を通じて被害者に示談の申し入れをして、電話番号を教えてもらえるよう交渉します。
準強制わいせつを認める場合の弁護活動
準強制わいせつで被害届を出された場合、不起訴や執行猶予を獲得するためには、被害者と示談をすることが最も重要な弁護活動になります。
準強制わいせつは被害者の性的な自由を侵害する犯罪です。そのため、示談という形で被害者に許してもらうことができれば、検察官も裁判官もその事実をふまえた上で、処分を下します。
そのため、示談が成立すれば不起訴になる可能性が高くなります。起訴後に示談が成立した場合は執行猶予の可能性が高くなります。
準強制わいせつの慰謝料の相場
準強制わいせつの慰謝料の相場は50万円~200万円前後です。より罪の軽い痴漢・盗撮の慰謝料が30万円~50万円程度ですので、50万円程度は支払う必要があるでしょう。
慰謝料の金額を左右する要素としては、被害感情が最も大きいですが、加害者側の資力も影響します。資金に限りがある場合は、弁護士を通じて、示談金以外の面で、被害者に納得していただけるような提案をすべきです。
準強制わいせつを否認する場合の弁護活動
被害者の同意があった場合や被害者の同意があると誤解したケースでは準強制わいせつは成立しません。
このようなケースでは特にわいせつ行為後の被害者とのやりとりが重要になります。例えば、被害者が加害者と別れた後にLINEで、「今日はありがとう」等と好意的なメッセージを送信していれば、同意があったことが推認されます。
被害届が出され刑事事件になると携帯電話は押収されますので、SNSやメールのやりとりは全て保存して、弁護士に渡しておくとよいでしょう。
また、取調べで捜査員のプレッシャーに負けてしまい、「同意はなかったと思いますが、衝動を抑えきれず胸を触ってしまいました。」といった内容の供述調書を作成されてしまうと、刑事裁判で同意があったと主張しても、認められないことが多いです。
そのため、弁護士が本人とひんぱんに接見し、自白調書が作成されないようバックアップします。