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同意のないキスは強制わいせつ罪になる?
無理やりキスしてしまった。強制わいせつ罪で逮捕されたらどうしよう?
このような不安を抱かれている方のために、合意のないキスが強制わいせつ罪にあたるか否かや逮捕を阻止する方法について、弁護士が解説しました。
目次
同意のないキスと強制わいせつ罪の成否
1.強制わいせつ罪の要件
強制わいせつ罪の要件は、①暴行・脅迫を用いて、②わいせつな行為をすることです。13歳未満の男女に対しては、②わいせつな行為をするだけで強制わいせつ罪が成立します。
2.同意のないキスは「わいせつ行為」になる?
最高裁判所は、「わいせつ」の意味について、「いたずらに人の性欲を刺激し、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」と定義しています。
それでは、同意のないキスは、そのような意味での「わいせつ行為」に該当するのでしょうか?
結論から言うと、「わいせつ行為」に該当することもあれば、該当しないこともあります。
キスは、性愛表現の一種ですが、親愛の情を示すためや挨拶として交わされることもあります。
そのため、刑事裁判においては、キスが「わいせつ行為」に該当するか否かは、キスをした時間帯や場所、キスをした部位、相手との関係、キスの仕方、相手の反応、キスをするまでの流れや周囲の状況、キスに対する社会一般の受けとめ方といった諸般の事情を総合的に考慮した上で判断されています。
【キスとわいせつ行為との関係】
| わいせつ行為と判断されやすくなる事情 | わいせつ行為と判断されにくくなる事情 |
キスをした時間帯 | 深夜、未明 | 日中 |
キスをした場所 | 周囲に人がいない場所 | 周囲に多くの人がいる場所 |
キスをした部位 | 唇やその周辺 | 手のひら、おでこ |
相手との関係 | 知らない人、顔見知り | 夫婦、恋人、親しい友人 |
キスの仕方 | 強い力で抱きよせてキスをした | 力を入れずに自然にキスをした |
相手の反応 | 頬をそむけて嫌がっていた、歯を閉じて舌を入れさせない | 嫌がるそぶりを見せていない、舌を絡ませてくる、腕を回してくる |
キスをするまでの流れ | 突然キスをした | 出会って挨拶をした直後にキスをした、 |
周囲の状況 | 2人きり | 懇親会で周囲に人がたくさんいた |
3.同意のないキスは「暴行」の要件に該当する
同意のないキスが「わいせつ行為」に該当しても、相手が13歳以上であれば暴行・脅迫を用いてキスをしたのでない限り、強制わいせつ罪は成立しません。
キスをする前に被害者を抱き寄せたり頭をつかんだ場合は、そのような動作が暴行になります。隙をついていきなりキスをする場合も、それ自体が暴行と評価されます。
結局のところ、同意のないキスが「わいせつ行為」に該当すれば、「暴行」の要件が否定されることはまずありませんので、強制わいせつ罪が成立することになります。
同意のないキスが強制わいせつ罪になるケース
次のようなケースでは強制わいせつ罪が成立する可能性が高いです
出会い系アプリで知り合った女性と初めて会うことになり、居酒屋でお酒を飲んだ後、二人でカラオケボックスに行った。カラオケボックスの部屋で、酔った勢いもあって、強引に女性の唇にキスをした。女性は顔をそむけて嫌がっていたが、両手で女性の顔を押さえてキスをした。 |
合コンで王様ゲームをしているなかで、王様役の男性から、隣に座っていた女性にキスをするよう命令された。女性は「やめてください。」と言って嫌がっていたが、王様の命令には絶対に従うというルールだったし、他の参加者にも煽られたため、女性を抱き寄せて強引に頬にキスをした。 |
*このケースでは王様役の男性も強制わいせつの共同正犯、教唆犯に該当する可能性があります。
同意のないキスで強制わいせつ(未遂)を認めた判例
裁判所・判決日 | 事案の概要 | 判決 |
①東京地裁昭和56年4月30日 | 酔った被告人が早朝、自宅近くの路上で顔見知りの新聞配達員の女性にキスしようとしたが激しく抵抗されできなかった。 | 強制わいせつ未遂で実刑2年(ただし累犯前科あり) |
②松江地裁平成30年2月26日 | 駐車場にとめた車の中で、被害者が被告人の顔を手でおさえて抵抗している状況で、被害者の唇に2回キスをした | 強制わいせつで懲役1年6月・執行猶予3年 |
③札幌地裁令和1年10月18日 | 路上に停車中の車の中で、13歳未満の児童にキスをした。 | 強制わいせつで懲役1年6月・執行猶予3年 |
*弁護士が判例データベースでリサーチした限りでは、同意のないキスで強制わいせつを認めなかった判例はありませんでした。
同意のないキス-強制わいせつで起訴されたら実刑?
前記①の判例では2年の実刑判決となっていますが、被告人には、性犯罪等の多数の前科がありました。
前科・前歴がなければ、もし起訴されても、②や③の判例のように、懲役1年6月・執行猶予3年前後の判決となるでしょう。多数の余罪がない限り、初犯でいきなり実刑になることはないでしょう。
同意のないキス-強制わいせつでの逮捕を防ぐためにすべきこと
同意のないキスをして強制わいせつになる場合、初犯であればいきなり実刑になる可能性は低いですが、被害者が警察に被害届を出せば、逮捕される可能性は十分にあります。
強制わいせつで逮捕されることを防ぐためのアクションとしては次の2つが考えられます。
①被害者と示談をする
②警察に自首をする
被害者が知人で連絡先を知っている場合は、自首をするよりも、被害者と示談交渉をした方がよいです。「被害届を提出しない」または「(提出した)被害届を取り下げる」という内容の示談が成立すれば、逮捕や起訴を回避できる可能性が非常に高くなります。
犯罪の性質上、被害者は加害者と直接コンタクトをとりたくないと思っているでしょうから、たとえ連絡先を知っていたとしても、示談交渉は弁護士に任せた方がよいでしょう。
被害者と面識がなく連絡先がわからない場合は、示談交渉をすることができませんので、警察署への自首を検討することになります。
示談交渉は、自首をした後に、担当の捜査員から被害者の連絡先を教えてもらった上で行うことになります。
捜査員は、加害者本人には被害者の連絡先を教えてくれませんので、この場合も弁護士を選任することになります。
同意のないキスと慰謝料の相場
同意なくキスしたケースで被害者と示談をする場合、慰謝料の相場は30万円超~100万円前後です。
服の上からお尻や胸を触る迷惑防止条例違反(痴漢)のケースでは、慰謝料の相場は30万円~50万円です。
強制わいせつ罪は、迷惑防止条例違反のように罰金刑で終わる犯罪ではなく、起訴された場合は必ず懲役刑を請求される重い犯罪ですので、慰謝料は迷惑防止条例違反(痴漢)の相場よりは高くなることが多いです。
ウェルネスの弁護士は、無理やりキスをしたケースで不起訴・執行猶予の獲得実績があります。無理やりキスをしてしまった方はお気軽にウェルネス法律事務所(03-5577-3613)へご相談ください。