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未成年者誘拐とは?逮捕や不起訴について弁護士が解説
SNSで知り合った少女を家に泊めた男性が未成年者誘拐で逮捕されたというニュースを見かけることがあります。未成年者誘拐で逮捕された弁護士もいます。
そのようなニュースを見て次のような疑問を抱かれる方もいるでしょう。
☑ 未成年者が同意しているのになぜ誘拐になる?
☑ 未成年者誘拐で逮捕されたらどうなる?
☑ 未成年者誘拐で不起訴になるための方法は?
「神待ち」男性を募集している家出少女を自宅に泊めたことがあり、不安に思っている男性もいるかもしれません。
このページでは、未成年者誘拐罪の要件や逮捕後の流れ、不起訴になる確率などについて弁護士 楠 洋一郎が解説しています。
未成年者誘拐とは
1.未成年者誘拐罪の「未成年者」とは
未成年者とは20歳未満の男女をいいます。改正民法の施行により2022年4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられますので、その日以降は18歳未満の男女になります。
2.未成年者誘拐罪の「誘拐」とは
誘拐とは、①他人を騙したり誘惑して誤った判断をさせ、②その生活環境から離脱させ、自己または第三者の支配下に置くことです。暴行や脅迫等により相手の意思を抑制する場合は、誘拐ではなく「略取」(りゃくしゅ)といいます。
3.誘拐の目的は不要
成人を誘拐した場合は、「身代金目的」とか「わいせつ目的」、「国外移送目的」など刑法所定の目的が必要とされますが、未成年者を誘拐した場合は目的は要件になっていません。そのため、誘拐しただけで未成年者誘拐罪が成立します。
4.未成年者誘拐と告訴
未成年者誘拐罪は告訴がなければ起訴できない親告罪とされています。そのため、保護者と示談をして告訴を取り下げてもらえれば、確実に不起訴になります。
未成年者誘拐の刑罰
未成年者誘拐罪の刑罰は3か月~7年の懲役刑です。罰金刑は定められていませんので、起訴されれば必ず検察官から懲役刑を請求されることになります。
未成年者誘拐の時効
未成年者誘拐罪の時効は5年です。
未成年者誘拐のよくある事例
① 家出志願の少女に対して、「家に帰りたくないなら泊めてあげるよ。」と言って自宅に一晩泊めた。
②「会って動画を撮らせてくれれば1万円あげる」と言って少女を車に乗せてホテルに行き、客室で3時間一緒に過ごし動画を撮影した。
③SNSで知り合った少女を車に乗せて半日ドライブした。
未成年者の同意があっても未成年者誘拐になる理由
未成年者誘拐罪は未成年者の自由を保護していますが、それと同時に、保護者の監護権も保護しています。
そのため、たとえ未成年者本人の同意があったとしても、保護者に無断で未成年者を連れ去り自己の支配下に置いた場合は、保護者の監護権を侵害したことになり、未成年者誘拐罪が成立します。
一緒に外出することや自宅に泊まらせることについて、本人だけでなく保護者の同意もあれば、未成年者誘拐罪は成立しません。
未成年者誘拐で逮捕されるきっかけ
未成年者誘拐は、子どもが突然いなくなったことを心配した親が警察に相談したり、行方不明者届を出すことによって刑事事件化します。
警察は防犯カメラや未成年者が使っているスマートフォンの位置情報を解析して居場所を特定し、少女を保護するとともに犯人を逮捕します。
自宅に泊める等して未成年者を支配下に置いている間は犯罪が継続している状態ですので、逮捕の種類としては現行犯逮捕になることが多いです。
⇒現行犯逮捕とは?逮捕状なしで誰でもできる逮捕を弁護士が解説
未成年者と行動を共にした後、自宅近くまで送っていったところで待ち受けていた警察官に検挙されることもあります。この場合は現行犯とは言いづらいため、任意同行の後に通常逮捕されることになるでしょう。
中高生の少女を親元から引き離して自己の支配下に置いたとしても、親が警察に通報しないうちに少女を親元に返した場合は、事件化しないケースが多いです。
未成年者誘拐の逮捕率
未成年者誘拐罪で検挙されると逮捕される可能性が高いです。検察庁の統計によれば、未成年者誘拐を含む略取・誘拐・人身売買罪の逮捕率は75%です。
*本ページに出てくる数値は全て2020年版検察統計年報に依拠しています。
未成年者誘拐で逮捕された後の流れ
逮捕は最長でも3日間しかできません。検察官が「拘束を続けなければ逃亡や証拠隠滅のおそれがある。」と考えた場合は、裁判官に対して勾留を請求します。裁判官が検察官の請求を認めれば、勾留を決定します。
未成年者誘拐を含む略取・誘拐・人身売買罪で勾留される確率は90%です。勾留は原則10日ですが、さらに最長で10日間延長することができます。未成年者誘拐罪で勾留が延長される確率は86%です。
このように勾留期間は最長で20日です。検察官はこの期間内に被疑者を起訴するか釈放しなければなりません。
未成年者誘拐の不起訴率
未成年者誘拐罪の不起訴率は72%とかなり高いです。起訴猶予での不起訴と嫌疑不十分での不起訴がほぼ同じ割合になっていることが大きな特徴です。
起訴猶予は、犯罪は成立しているけれども示談などの事情により特別に不起訴とする処分です。これに対して嫌疑不十分は、犯罪を証明するだけの証拠がないと考えられる場合に下される不起訴処分です。
未成年者誘拐罪で嫌疑不十分が多い理由としては、未成年者の安全を最優先するため、見切り発車で捜査に着手することもあるためだと思われます。
未成年者誘拐の要件にあたらないと考えられる場合は、弁護士がその点を検察官に主張し、嫌疑不十分での不起訴を目指します。
逆に未成年者誘拐にあたると考えられるケースでは、弁護士が早期に保護者との示談交渉を進め、起訴猶予での不起訴を目指します。
未成年者誘拐と他の犯罪
未成年者を自宅に泊まらせたケースでは、自宅で未成年者と性行為をしたり、未成年者のひわいな姿態を撮影するケースもあります。
18歳未満の未成年者と性行為(淫行)をすれば、お金を払っていなくても、都道府県の青少年健全育成条例に違反することになります。
未成年者誘拐と淫行(東京都など多くの自治体)を犯した場合の最高刑は懲役9年になります。
18歳未満の未成年者のひわいな姿態を撮影すれば、児童ポルノ製造罪が成立する可能性が高いです。
未成年者誘拐と児童ポルノ製造を犯した場合の最高刑は懲役10年になります。