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【刑法改正】不同意わいせつで痴漢が厳罰化される!?弁護士が解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
【改正前】痴漢は何罪になる?
2023年6月に刑法が改正され、7月13日に施行されました。それ以前は、電車内での痴漢は、都道府県の迷惑防止条例で処分されてきました。
条例ですので罰則は地域によって異なりますが、東京都を含む多くの自治体では、痴漢は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金とされています。
ただし、下着の中に手を入れて素肌を触った場合は、悪質であるとして、迷惑防止条例ではなく、刑法の強制わいせつ罪で処分されていました。強制わいせつ罪の罰則は6か月から10年の懲役です。
迷惑防止条例と異なり強制わいせつ罪には罰金刑がないため、起訴されれば公開の法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されることになります。この点が、略式起訴され罰金で終わることが多い迷惑防止条例違反との違いです。
【刑法改正】不同意わいせつ罪の導入
2023年7月13日、不同意わいせつ罪を定めた改正刑法が施行されました。
これにより、従来の強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪が不同意わいせつ罪に統合され、同意のない状況でのわいせつ行為が処罰されることになりました。
不同意わいせつ罪の罰則は、6か月以上10年以下の拘禁刑(2025年6月までは懲役刑)で期間は強制わいせつ罪と同じです。不同意わいせつ罪の要件は、①同意が困難な状況で、②わいせつな行為をすることです。
①の要件について、刑法は、次の8つの行為・事由またはそれに類する行為・事由により、同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難であることを要件としています。
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【刑法改正】痴漢が厳罰化される?
1.強制わいせつに該当していた痴漢の取り扱い
刑法改正により強制わいせつ罪は廃止され、新たに不同意わいせつ罪が導入されました。
従来強制わいせつにあたるとされていた、下着の中に手を入れて肌を触るケースは、不同意わいせつとして扱われることになります。この点については違和感はないと思われます。
2.迷惑防止条例違反に該当していた痴漢の取り扱い
改正刑法が施行された2023年7月13日以降、これまで迷惑防止条例違反として扱われていた痴漢についても、不同意わいせつ罪で立件されるケースが増えています。
例えば、着衣の上からでん部を触った場合、これまでは迷惑防止条例違反として扱われていましたが、改正刑法の施行後は不同意わいせつ罪で逮捕されるケースが出てきました。
不同意わいせつ罪には罰金刑はないため、略式裁判で審理されることはなく、起訴されれば全て正式裁判で審理され、無罪にならない限り、(執行猶予付きの)懲役刑が科されます。
【刑法改正】痴漢の厳罰化の問題点
これまで迷惑防止条例違反として扱われてきた着衣の上からの痴漢について、不同意わいせつ罪として扱われると一気に刑罰が重くなります。
もちろん痴漢は許されることではありませんが、これまで略式起訴⇒罰金で処分されていた犯罪が、一夜にして懲役刑の対象になるのは、行き過ぎた厳罰化であると見ることもできるでしょう。
【刑法改正】痴漢の厳罰化への対応方法
1.同意が困難なことは確か
不同意わいせつの要件は①同意が困難な状況で②わいせつな行為をすることです。
①の要件については、電車内で痴漢した場合、たとえ着衣の上からであっても、次のいずれかの行為・事由に該当し、同意が困難な状況であったといえるでしょう。
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でん部や胸に一瞬触れたケースは5号に該当します。電車内で着衣の上からでん部を持続的に触った場合は6号に該当します。
2.わいせつな行為にあたるか?
不同意わいせつ罪が成立するためには、「同意が困難である」というだけではなく、加害者の行為が「わいせつな行為」であると評価されなければなりません
痴漢は誰がどう見てもわいせつな行為にあたりますが、ここで問題になるのは、強制わいせつ罪の要件である「わいせつな行為」に該当するかです。
そして、「わいせつな行為」については、刑法改正前の強制わいせつの条文と改正後の不同意わいせつの条文で何ら変更はありません。
【強制わいせつの条文】
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【不同意わいせつの条文】
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そのため、改正法の施行前に、強制わいせつ罪の「わいせつな行為」にあたるとされていなかった着衣の上からの痴漢行為について、改正後に「わいせつな行為」にあたると解釈を変更する理由がないということになります。
弁護士としてもこのような点を警察や検察に主張し、積極的に迷惑防止条例違反への罪名変更を求めるべきです。
ウェルネスの弁護士も、着衣の上から痴漢をして不同意わいせつ罪で逮捕されたケースで、検察官に働きかけて迷惑防止条例違反へ罪名を変更させたことがあります。
⇒解決事例
公務員の場合は、不同意わいせつ罪で起訴されると無罪判決にならない限り確実に失職します。
これに対して、迷惑防止条例違反で略式起訴された場合、3か月程度の停職にとどまることがほとんどです。罪名ひとつで今後の人生が大きく変わってくることもあります。 |