【常習痴漢】同じ被害者に対する複数の痴漢-逮捕や示談について

痴漢は電車内でたまたま乗り合わせた乗客に行う1回限りの犯行が多いですが、同じ被害者に繰り返すケースもあります。

 

 

同じ被害者に痴漢を繰り返すケースは、朝の通勤電車内で発生することが多いです。地域的には代替路線の選択ができる都心部ではなく、郊外または郊外から都心部を走っている電車内で発生することが多いです。

 

 

被害者も通勤や通学のため、その電車に乗らざるを得ないことが背景にあります。

 

 

このページではウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎同じ被害者に痴漢を繰り返すケースについて加害者側が知っておくべきことを解説しました。参考にしてみてください。

 

 

 

 

同じ被害者に対する複数の痴漢-痴漢の手口は?

同じ被害者に痴漢を繰り返すケースでは、徐々に痴漢の手口が大胆になっていく傾向があります。

 

 

当初は手の甲で被害者の太ももやでん部に触れている程度であっても、だんだんエスカレートしていき、最終的には下着の中に手を入れて胸や陰部を直接触るケースが少なくありません。

 

 

同じ被害者に対する複数の痴漢-どんな犯罪になる?

痴漢は、迷惑防止条例違反、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪のいずれかになります。いずれになるかは接触の程度によって判断されます。

 

 

着衣の上からでん部や太ももを触った場合は、都道府県の迷惑防止条例違反になります。罰則は多くの自治体で6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。常習性が認定された場合は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金になります。

 

 

下着の中に手を入れて胸や陰部を直接触った場合は不同意わいせつ罪が成立します。罰則は6か月から10年の拘禁刑です。

不同意わいせつ罪とは?不同意性交等罪との違いや逮捕後の流れ

 

 

陰部や肛門に手指を入れた場合は不同意性交等罪が成立します。罰則は5年から20年の拘禁刑です。

痴漢の初犯で実刑?痴漢が不同意性交等罪になるケースを解説

 

 

同じ被害者に対する複数回の痴漢は、1回限りの痴漢に比べてエスカレートしやすいことから、最終的には軽い迷惑防止条例違反ではなく、重い不同意わいせつ罪になることが多いです。不同意性交等罪になることもあります。

 

 

同じ被害者に対する複数の痴漢-逮捕までの流れは?

被害者がすぐに声をあげて犯人を取り押さえていれば、そもそも痴漢が繰り返されることはなかったでしょう。

 

 

もっとも、全ての被害者がそのような勇気を持てるわけではありません。痴漢被害を受けながらも声を上げることができず、一人で悩んでいる被害者もいます。

 

 

同じ被害者に対して痴漢を繰り返すケースでは、思い悩んだ被害者が警察に相談して刑事事件になることが多いです。

 

 

被害者が警察に相談すると、複数の私服警察官が被害者と一緒に該当車両に乗り込みます。犯人が被害者に痴漢をしている状況を私服警察官が現認すると、その場で現行犯逮捕します。

 

 

同じ被害者に対する複数の痴漢-勾留を阻止できる?

1.逮捕後の流れ

刑事事件の身柄拘束は逮捕⇒勾留というステップで進みます。逮捕は最長でも3日ですが、勾留は最長で20日にもなります。

 

 

逮捕されると翌日または翌々日に検察庁に連行されて検察官の取調べを受けます。検察官が「逃亡のおそれがある」とか「証拠隠滅のおそれがある」と判断すると、裁判官に勾留を請求します。

 

 

被疑者は勾留請求の当日または翌日に裁判所に連行され、裁判官の勾留質問を受けます。裁判官も「逃亡のおそれがある」とか「証拠隠滅のおそれがある」と判断すると、被疑者を勾留します。

逮捕後の流れを図でわかりやすく解説!

 

 

2.勾留阻止のポイント

近年では痴漢で逮捕されても勾留されないことが多いです。

 

 

もっとも、同じ被害者に対して痴漢を繰り返しているケースでは、被害者が毎朝どの電車に乗るかを加害者が把握していることから、再び被害者に接触して「同意していたよね?」等と威迫するおそれがあります。そのため、1回限りの痴漢に比べて勾留される可能性が高くなります。

 

 

勾留を阻止するために、弁護士が早期に接見し、被害者に接触・連絡しない旨の誓約書や通勤ルートを変更する旨の誓約書を作成させて検察官や裁判官に提出します。

 

 

同じ被害者に対する複数の痴漢-報道される?

痴漢で逮捕されれば報道されるリスクがあります。痴漢は日々発生している犯罪ですので、被疑者が公務員や教員、医師といった目をひく要素がなければ報道される可能性は低いです。

 

 

これに対して、同じ被害者に対する複数の痴漢は、痴漢の中でも珍しい類型であり目をひく要素がありますので、通常の痴漢よりも報道される可能性が高くなります。

 

 

加害者が取調べで「被害者も痴漢されることを望んでいると思っていました」等と供述した場合は、その供述も含めて報道されることがあります。

 

 

同じ被害者に対する複数の痴漢-報道を回避するためには?

同じ被害者に痴漢を繰り返していたケースで逮捕されれば、報道される可能性が十分にあります。逮捕された時点で報道が既定路線になっていることが多いため、逮捕当日に弁護士に依頼しても報道を阻止することは困難です。

 

 

報道を回避するためには警察に自首することが有効です。自首という形で自ら出頭し捜査に協力すれば、逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと判断されやすくなり、逮捕を回避できる可能性が高くなります

 

 

逮捕されなければ、有名人でない限り実名報道されることはありません。

痴漢で自首して逮捕・報道を回避する

 

 

同じ被害者に対する複数の痴漢-不起訴のためには示談が必須

痴漢冤罪のケースでは被害者と示談をする必要はありませんが、同じ被害者に痴漢を繰り返していたケースで痴漢冤罪が問題になることはまずありません。そのため、不起訴を獲得するためには示談が必須となります。

 

 

痴漢の示談金の相場は30万円から50万円です。もっとも、この相場は迷惑防止条例違反に該当する1回限りの痴漢に適用されるものです。同じ被害者に痴漢を繰り返しているケースでは、上記の相場よりも示談金が高くなることが多いです。

 

 

また、示談交渉に際して被害者や家族から「二度と会わないようにしてもらいたい」と言われることが多いです。加害者には別の路線を利用してもらったり、同じ路線を利用せざるを得ない場合は利用時間や車両を限定するなどして被害者側の理解を得る必要があります。

 

 

同じ被害者に対して痴漢を繰り返していたケースであっても、被害者との間で示談が成立すれば不起訴になることが多いです。そのため、示談をすることも最も重要な弁護活動になります。

 

 

同じ被害者に対する複数の痴漢-認知の歪みを矯正する

加害者は自己の行為を正当化するための都合の良い理屈を作り出します。それが認知の歪み(ゆがみ)です。同じ被害者に痴漢を繰り返す加害者は、「痴漢をしても同じ車両に乗ってくるので受け入れてくれている」という認知の歪みを有していることが多いです。

 

 

加害者はそのような認知の歪みに気づくことなく、逮捕されるまで犯行を重ねてしまいます。認知の歪みを矯正するため、性依存症のクリニックに通院して更生プログラムを受けたり、心理士のカウンセリングを受けてもらいます。