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痴漢と盗撮の違い:早期釈放の可能性
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
痴漢も盗撮も、各都道府県の迷惑防止条例で規定されています。このコラムの著者(弁護士楠洋一郎)は、これまで痴漢や盗撮を約200件担当してきました。その中で感じたことは、痴漢の方が盗撮に比べ、逮捕されるケースが多いということです。
もちろん、盗撮事件でも逮捕されることは少なくありません。逮捕後にスポットを当てて、痴漢と盗撮を比較すると、興味深い違いが認められます。それは、痴漢の方が盗撮に比べてより早期に釈放されやすいということです。以前は、痴漢の容疑を否認していれば、ほとんどのケースで勾留されていましたが、最近では、否認していても早期釈放されるケースが増えてきました。
この違いはどうして生じるのでしょうか?
ひとつ考えられるのは、人違いの可能性です。痴漢は通常、混雑した電車内で行われます。そのため、検察官や裁判官としても、常に人違い(=冤罪)の可能性を念頭に置いた上で、勾留の是非を慎重に判断する必要があります。
これに対して、盗撮の場合は、人が一列に並んでいるエスカレーター上で行われることが多く、痴漢に比べると検挙者による人違いの可能性はずっと低いです。携帯電話に盗撮画像が残っていればまず人違いの可能性はないでしょう。このように人違いの可能性という観点から、痴漢についてはより慎重に判断することになります。
もう一つ考えられるのが証拠隠滅の可能性です。痴漢は、盗撮と異なり、明白な証拠が残るわけではありません。これに対して、盗撮においては、画像という明白な証拠が残っている場合が多いです。一般的に、画像データは消去することや別の媒体に移すことが比較的容易です。
被疑者が携帯電話を押収される前に、それらのデータを消去したり、クラウド上に保存している可能性もないとはいえません。そのため、検察官としては、携帯電話等を精査し、画像解析や復元が完了するまでは釈放に対して消極的になりがちです。
もっとも、こうした捜査は、携帯電話などを押収することで遂行可能であり、被疑者の身柄拘束を続ける理由にはならないので、早期釈放を実現するためには、この点を裁判官に重点的に指摘することになります。
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