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【否認事件】検察のプレスリリースと被疑者の名誉回復

プレスリリース

 

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

☑ 容疑者を〇〇罪で起訴しました

☑ 容疑者を処分保留で釈放しました

☑ 容疑者を不起訴処分にしました

 

このような報道がTVや新聞、ネットニュースで日常的になされています。これらの報道は検察庁のプレスリリースがきっかけになっていることが多いです。

 

なお、「〇〇を逮捕しました」という報道は、検察庁ではなく警察のプレスリリースがきっかけになっています。

 

東京地検のプレスリリースの流れ

東京地検におけるプレスリリースの流れは次の通りです。

 

①事件を担当する主任検察官と副部長が協議してプレスリリースするかどうかを決める。

 

警視庁から「この事件についてはプレスリリースを検討してください。」と申し入れを受けて、副部長がプレスリリースを決めることもありますし、副部長が独自の判断でプレスリリースを決めることもあります。

②主任検察官が事案の概要をまとめた資料を作成する。

③主任検察官がまとめた資料を捜査部の次席捜査官に回す。

 

次席捜査官は事務方のトップです。東京地検では各捜査部に次席捜査官が一人配属されています。

④次席捜査官がプレスリリース用のペーパーを作成する。

⑤プレスリリース用のペーパーを捜査部長の決裁に上げる。

⑥決裁をした捜査部長が検察広報官にペーパーを回す。

⑦検察広報官が東京地検の次席検事にペーパーを回す。

 

次席検事は検事正に次ぐ要職です。各地方検察庁に一人います。

⑧次席検事がマスコミにペーパーを読み上げてブリーフィングをする。

 

ブリーフィングはほぼ毎日実施されています。次席検事の部屋は霞が関の東京地検A棟の11Fにあります。次席検事の執務室につながっている応接室で、司法記者クラブに所属している記者を前に、ペーパーを読み上げます。ひたすら事件の話をしているというわけでもなく、雑談等もされているようです。

⑨新聞、TV、ネットニュース等のメディアで報道される。

 

実名報道による人権侵害を検察庁のプレスリリースで是正する

「〇〇を強制わいせつ罪の容疑で逮捕しました。」-このような報道が連日マスコミでなされています。逮捕直後の報道は(特捜部の事件を除いて)検察庁のプレスリリースではなく、警察のプレスリリースがきっかけとなることが多いです。

 

本人が否認しているケースで逮捕直後に実名報道されてしまうと、大きな社会的ダメージを受けてしまいます。

 

その後、送検されて嫌疑不十分で不起訴になった場合、検察庁から「嫌疑不十分で不起訴にした」という内容のプレスリリースがされないと、傷ついた本人の名誉が回復されません。

 

検察庁のプレスリリースでは、通常、不起訴にした理由までは明らかにされません。しかし、単に、次席検事から「不起訴処分にした。」という内容だけプレスリリースされても、本人の名誉回復にはなりません。

 

「どうせお金を払って示談で不起訴にしてもらったんだろ。」-報道に接した人の多くはそのように判断するからです。

 

嫌疑不十分での不起訴は、検察官が「裁判で争っても勝てない。」と判断したときに出される処分です。その意味で、刑事裁判での無罪に匹敵するといえるでしょう。

 

実名報道によって大きく侵害されたご本人の名誉回復のために、「嫌疑不十分」という処分理由を含めてプレスリリースするよう、弁護士が検察官に申入書を提出すべきです。

 

弁護士がプレスリリースの申入書を検察官に提出するタイミング

検察庁でプレスリリースするかどうかは、事件についての起訴・不起訴が決まるのと同じタイミングで決定されます。

 

そのため、弁護士が検察官に嫌疑不十分での不起訴を求める意見書を提出する際、その意見書の中で、「嫌疑不十分という処分理由も含めて」不起訴にしたことをプレスリリースするよう求めるべきです。

 

弁護士が検察官に電話して、嫌疑不十分で不起訴になったことを確認した後に申入書を提出しても遅すぎるということです。

 

ウェルネスは否認事件の被疑者の名誉回復にも注力しています。否認事件でご家族が逮捕され実名報道された場合はウェルネス(03-5577-3613)までお気軽にご相談ください。

 

 

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