略式裁判のご質問
Q1:否認している場合に略式請求されることはありますか?
否認している場合は、不起訴にならない限り、公判請求されるのが通常です。ただし、全面的に否認しているわけではなく、細かい部分のみ否認している場合は、略式請求となることもあります。例えば、暴行罪のケースで、殴ったこと自体は認めているが、殴った部位や回数のみ否認している場合などです。
Q2:略式請求されるかどうか事前に知ることはできますか?
はい。検察官が略式請求をするためには、略式手続について被疑者に説明し、異議がない旨の書面(略式手続の告知手続書及び申述書)に署名・捺印させる必要があります(刑事訴訟法461条の2)。そのため、検察官から上記書面の提示を受けた場合は、(本人に異議がない限り)略式請求される可能性が高いです。
Q3-1:略式裁判の際、弁護士を選任する必要はありますか?
弁護士を選任する必要はありません。略式裁判は裁判官による書面審理によって行われます。法廷で審理が行われるわけではないので、弁護士による活動は想定されていません。
ただ、略式裁判になる前の段階で、弁護士を選任していれば、示談等の弁護活動の結果、不起訴となり、略式裁判自体を回避できることも考えられます。
Q3-2:略式裁判を回避するためには、いつまでに弁護士を選任すべきですか?
遅くとも検察官による呼出しの前には選任した方がよいでしょう。検察官の取調べを受け、申述書に署名・捺印すると、いつ略式命令で決裁に上げられてもおかしくない状況になります。いったん決裁に上げられると、その後に弁護士を選任しても、不起訴を獲得するのは極めて困難です。
Q4:逮捕・勾留されていない場合、略式命令は郵送で受け取るしかないのでしょうか?同居の家族にばれたくないので、自分で受け取りにいきたいのですが、何か方法はありませんか?
原則は郵送となりますが、下記の方法により裁判所で受け取ることができる場合もあります(最終的には検察官の判断になります)。
(1)検察官に在庁略式で処理してもらう方法
本人が検察庁で取り調べを受けた後、検察官が簡易裁判所に略式命令を請求し、即日、略式命令が発付されます。本人は、簡易裁判所で命令書を受け取った後、検察庁で罰金を納付します。これらの手続は一日で終了します。
在庁略式は、通常、身柄事件(逮捕・勾留されている事件)や交通事件で利用される方式ですが、それ以外の事件でも利用される場合があります。この方法によるときは、半日程度、検察庁や裁判所(近く)で待機することになります。
(2)通常通り処理してもらい、自分で裁判所に受け取りに行く方法
①あらかじめ弁護士が検察官に以下の2点をお伝えしておきます。
・略式命令が発付されたら本人が裁判所に命令書を受け取りに行くこと
・略式請求をしたときに、検察官から、裁判所に、本人が直接受け取りに行くことを伝えてもらうこと
②検察官が略式請求をした時点で、裁判所に本人が受け取りに行くことを伝えます。
③略式命令が発付されたら、簡易裁判所から検察官に連絡がいきます。
④検察官から弁護士に連絡がいきます。
⑤本人が簡易裁判所に略式命令書を受け取りにいきます。
⑥検察庁の徴収課で罰金を納付します。
Q5:罰金の額は誰が決めるんですか?
簡易裁判所の裁判官が決めます。もっとも、実務の運用としては、検察官が罰金の金額について裁判官に意見を述べ、裁判官はその意見通りの罰金を言い渡す場合がほとんどです。検察官は、略式請求をする際、科刑意見書という書面に適当と考える罰金額を記載して、裁判官に提出します。
Q6:罰金を払わなければどうなるのでしょうか?
督促を無視して支払わないでいると、未納金5000円当たり1日として労役場に収容されます。分割払いの交渉にも応じてもらえるので、期限までに一括で支払えない場合は、検察庁の徴収課に連絡し、経済状況や支払い計画をお伝えください。
Q7:略式命令を受けた後、正式裁判を請求するメリットはありますか?
原則としてメリットはありません。略式裁判になっているということは犯罪事実について認めているものと思われます(もし無罪を主張していれば略式裁判になることはありません)。とすれば、正式裁判においても、同様に有罪判決が下されることになるので、時間と手間がかかるだけでメリットはありません。
もっとも、①無罪を主張していたにもかかわらず強引な取調べで自白調書をとられてしまった場合、②早期釈放のため自白してしまったが本当は潔白である場合には、正式裁判を請求し、無罪主張することも十分考えられます。
これらに該当する場合は弁護士にご相談ください。なお、正式裁判を請求できるのは、略式命令の告知を受けてから2週間以内ですので、余裕をもってお早めに相談に行かれた方がよいでしょう。
【関連ページ】