持続化給付金詐欺について弁護士が解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

 

持続化給付金詐欺とは

持続化給付金とは、新型コロナによって売り上げが減少した企業や個人事業主、フリーランスの方に対して国から支払われる給付金のことです。企業には最大200万円、個人事業主やフリーランスには最大100万円が支給されます。

 

持続化給付金詐欺とは、支給の要件を満たしていないにもかかわらず、個人事業主やフリーランスを装い、売上げ等を偽って事務局に申請をし、持続化給付金をだましとる犯罪です。

 

大学生やフリーターがSNS等で指南役から誘われて、軽い気持ちで不正に関わってしまうケースが増えています。

 

持続化給付金の申請はオンラインですが、最終的には人の目によって審査されるため、電子計算機使用詐欺罪ではなく、通常の詐欺罪が成立します。

 

指南役に誘われて虚偽申請に協力したケースでは、通常、振り込まれた給付金(100万円)の一部を手数料として指南役に渡します。ただ、指南役に渡したのは既遂後になりますので、詐欺の被害額としては100万円になります。

 

持続化給付金詐欺の刑罰

持続化給付金詐欺の刑罰は10年以下の懲役です。詐欺罪は窃盗罪のように罰金刑はありませんので、起訴されれば、テレビの法廷ドラマで見るような正式裁判となり、検察官から懲役刑を請求されます。

 

 

持続化給付金詐欺-詐欺と知らなかった場合も犯罪になる?

☑ ニュースを見てはじめて詐欺になると知った

☑ 誘ってきた人から「犯罪じゃないよ。」と言われた

☑ バイト感覚で軽い気持ちでやっただけ

 

このようなケースでも、指南役に指示されて持続化給付金の不正受給に協力すると、詐欺罪が成立する可能性が高いです。

 

詐欺罪が成立するためには、詐欺の故意、つまり「だましとろうとすることについての認識」が必要です。

 

しかし、故意の程度としては、「給付金をだましとろう」という積極的な意欲までは必要なく、「もしかしたら詐欺になるかもしれないが、それならそれでいい。」というレベルの認識で足ります。

 

このような認識を未必の故意(みひつのこい)といいます。

故意とは?確定的故意と未必の故意について弁護士が解説

 

持続化給付金詐欺のケースでも、給付要件に該当しないことを明確に把握していなかったとしても、自分のしていることについて全く問題ないと考えているケースはまずないと思われます。

 

多かれ少なかれ「なんか怪しいな。詐欺かもしれない。」という程度の認識はあったと考えられますので、確定的な故意まではなかったとしても、少なくとも未必の故意が認定され詐欺罪が成立する可能性が高いです。

 

持続化給付金詐欺-自分が申請していない場合でも詐欺になる?

☑ 誘ってきた人に源泉徴収票と免許証のコピーを渡しただけ

☑ あとはその人が全部やってくれた

☑ 自分では何も手続きしていない

このようなケースでは詐欺罪は成立しないのでしょうか?

 

持続化給付金詐欺のケースでは、虚偽の申請をして給付担当者をだますことが詐欺の実行行為です。そのため、指南役に書類などを渡しただけで、自分で実行行為をしていなければ詐欺にはあたらないようにも思えます。

 

しかし、このようなケースでも詐欺罪が成立する可能性が高いです。鍵になるのは共謀共同正犯(きょうぼうきょうどうせいはん)という考え方です。

 

共謀共同正犯とは、判例で認められてきたロジックで、犯罪の実行行為はしていないけれども、実行担当者と犯罪についての打ち合わせ(謀議)を行い、お互いに利用しあいながら、チームプレーで特定の犯罪を実現した人のことです。

 

共謀共同正犯は、刑罰の上では実行行為を担当した正犯と同等に扱われます。

 

持続化給付金詐欺のケースでは、源泉徴収票や身分証明書は犯行を成し遂げるために必要不可欠な書類といえます。

そのため、事情を知ってこれらの書類を実行役に渡したのであれば、自分で申請していなかったとしても、チームプレーでお金をだましとったといえ、詐欺の共謀共同正犯が成立する可能性が高いです。

 

 

持続化給付金詐欺で逮捕された後の流れ

持続化給付金詐欺は複数の人間によって行われることが多く、共犯者間の共謀状況など捜査すべき点が多々あるため、逮捕されると勾留される可能性が高いです。勾留期間は原則10日、最長20日です。

起訴前の流れ(逮捕・勾留あり)

 

検察官は、勾留期間内に必ず起訴するか釈放するかを決めなければいけません。持続化給付金詐欺のケースでは、被害が多額にのぼり、虚偽の申請書等の主要な証拠はデータの形で残っているため、逮捕されれば起訴される可能性が高いです。

 

起訴されれば約1か月半後に初公判が開かれます。争いがなければ審理は初公判1回のみで終了し、1、2週間後に判決を言い渡されます。初犯で詐取した額が100万円のみであれば、返金手続をすれば執行猶予判決を獲得できる可能性が高いです。

刑事裁判の流れ

公判の流れ

 

 

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