傷害事件の示談金の相場は?示談しないとどうなる?

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

示談とは?

示談とは民事裁判をすることなく当事者間の合意によって紛争を解決することです。合意の内容を書面にした示談書に、当事者または代理人が署名(記名)・押印します。

 

 

示談は民事上の手続ですが、示談書を警察や検察官に提出することにより刑事処分が軽減される可能性が高まります。そのため、示談は民事手続と刑事手続をつなぐ役割をもっているといってもよいでしょう。

 

 

傷害事件の示談のメリットは?

傷害事件の示談のメリット

 

1.不起訴の可能性が高まる

検察官は傷害事件の被疑者を起訴するか不起訴にするかを決めるにあたって、示談の有無を非常に重視しています。そのため、傷害事件の被害者との間で示談がまとまっていれば不起訴になる可能性が高くなります。

 

 

不起訴とは被疑者を刑事裁判にかけない処分です。不起訴になれば処罰されませんので、前科がつくこともありません。

不起訴処分とは?無罪との違いは?弁護士がわかりやすく解説

 

 

2.早期釈放の可能性が高まる

傷害罪で勾留されたら、被疑者として原則10日、最長20日にわたって拘束されます。勾留されても準抗告を申し立てたり勾留取消請求をすることにより釈放されることがありますが、かなりハードルが高くなります。

 

 

勾留後に早期釈放に最もつながりやすいのが被害者との示談です。上で説明したように示談が成立すれば不起訴になる可能性が高くなります。

 

 

不起訴になるのであれば勾留を継続する必要がないため、検察官は被疑者を早期に釈放します。弁護士が示談書を検察官に提出した当日または翌営業日に釈放されることが多いです。

 

 

3.民事訴訟を回避できる

傷害事件の被害者と示談をすれば、通常は示談書に「お互い債権債務なし」という精算条項が入ります。精算条項があればトラブルが終局的に解決したものとみなされます。

 

 

そのため、被害者が示談金を受け取った後に、加害者に対して追加で損害賠償を請求することはできません。

 

 

傷害事件の示談金の相場は?

傷害事件の示談金の相場

 

傷害事件の示談金の相場は、ケガの程度によって異なります。そのため、以下では、全治1~2週間の軽傷事例と全治1か月以上の重傷事例に分けてみていきます。

 

 

1.全治1~2週間の示談金はいくら?

全治1~2週間の軽傷事例のケースでは、治療費を除いて20万円程度が示談金の相場になります。実際の示談金は、被害者の処罰感情や加害者の資力、弁護士の交渉力などによって異なってきます。

 

 

2.全治1か月以上の示談金はいくら?

全治1か月以上の重傷事件では、示談金は交通事故の賠償金の相場を参考にして決められることが多いです。交通事故の賠償金の相場は「損害賠償額算定基準」(赤い本)という本に記載されています。具体的には以下の項目の合計額になります。

 

 

治療費、通院交通費実費
休業損害休業日数×1日あたりの給与額になります。
入通院慰謝料入通院の期間によって決まります。赤本では通院期間1ヶ月で28万円になります。
後遺障害慰謝料後遺症が生じた場合に発生します。後遺症は程度に応じて1級~14級に分類されます。交通事故の場合は後遺症が発生することも少なくありませんが、刑事の傷害事件で後遺症が残るケースは少ないです。
逸失利益

 

相互傷害で相手方にも過失がある場合は、交通事故と同様に過失相殺を主張することもあります。

 

 

傷害事件の示談交渉は弁護士に依頼しよう

傷害事件の示談交渉は弁護士に依頼しよう

 

傷害事件の被害者は「加害者と会いたくない」、「関わりたくない」と思っています。捜査機関はこのような被害者の思いを尊重するので、加害者に被害者の名前や連絡先といった個人情報を教えてくれません。

 

 

弁護士が間に入れば、被害者の個人情報を加害者に教えることなく交渉を進めることができるため、被害者に安心してもらいやすく、名前や連絡先を教えてもらえる可能性が高くなります。

 

 

加害者が被害者の連絡先を知っている場合でも、自分で連絡を入れると、被害者を怖がらせてしまったり、逆に高額な示談金を請求されたりして、さらに事態が悪化するリスクがあります。そのため、示談交渉は弁護士に依頼するべきです。

 

 

傷害事件で示談しないとどうなる?

傷害事件で示談しないとどうなる?

 

全治1か月未満の軽傷のケースと全治1か月以上の重傷のケースにわけてみていきましょう。

 

 

1.軽傷のケース

前科・前歴のない初犯の方が傷害事件を起こしたケースで、被害者と示談しなければ、略式起訴され罰金になることが多いです。略式起訴されると本人の知らないところで審理され、罰金の支払いを命じる略式命令が本人のもとに送達されます。罰金でも前科になりますので注意が必要です。

前科のデメリットについて弁護士が解説

 

 

2.重傷のケース

初犯の方であっても被害者に全治1か月以上の重傷を負わせた場合は、略式起訴ではなく公判請求される可能性が高くなります。

 

 

公判請求されると公開の法廷で審理され、検察官から拘禁刑を請求されます。初犯であれば、執行猶予が付く可能性が高いですが、ケガの程度が重い場合は、いきなり実刑になることもあります。

 

 

【示談なしで民事事件はどうなる?】

傷害事件で示談が成立しないと民事訴訟で損害賠償を請求されるリスクもあります。軽傷事件では費用倒れになる可能性が高いことから民事訴訟になることは少ないですが、重傷事件の場合は、被害者が弁護士に依頼して民事訴訟になることが少なくありません。

 

 

傷害事件の示談を成功させるポイント

傷害事件の示談の成否は、結局のところ示談金の額によって決まってくることが多いです。

 

 

予算に限りがある場合、弁護士費用が安い事務所に依頼すると、十分な示談金を準備しやすくなります。その結果、示談の成功率が上がります。

 

 

これに対して、弁護士費用が高い事務所に依頼すると、予算の大部分を弁護士費用に吸い取られてしまい、十分な示談金を準備するのが困難になります。

 

 

示談の成功率を上げるためにはなるべく弁護士費用が安い法律事務所に依頼した方がよいでしょう。