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賭博罪とは?構成要件や逮捕後の流れについて弁護士が解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

 

賭博とは

賭博とは、偶然の勝敗に財物を賭けてその得喪を争うことです。

 

 

将棋、麻雀、ルーレット、野球、サッカー、じゃんけんなど勝敗が偶然によって決まるものであれば、賭博の対象になり得ます。

 

 

八百長によって最初から結果が決まっているいかさま賭博については、八百長を知っていた側・知らなかった側の双方に賭博罪は成立しませんが、八百長を知っていた側には詐欺罪が成立します。

 

 

賭ける財物はお金が一般的ですが、借金の免除など財産的な利益があれば財物として扱われます。

 

 

賭博はなぜ処罰される?

賭博は刑法で処罰の対象とされています。賭博は、損失が生じ得ることを当事者がわかった上で行うものであり、被害者もいないことから、刑罰をもって禁止する必要はないとも思えます。

 

 

もっとも、賭博がまん延すると、賭博にはまって真面目に働かない人が増えたり、強盗、恐喝、窃盗、詐欺などの犯罪を誘発するおそれがあります。

 

 

また、賭博は暴力団等の資金源になっていることが多く、賭博によりそ反社会集団に資金が流れていくという面もあります。そのため、賭博は刑罰をもって禁止されているのです。

 

 

刑法では賭博に関する犯罪として主として以下の3つを定めています。

 

 

①単純賭博罪

②常習賭博罪

③賭博場開帳図利罪

 

 

これらの各犯罪について解説していきます。

 

 

単純賭博罪

1.罰則

賭博をすると単純賭博罪が成立します。単純賭博罪の罰則は、50万円以下の罰金または科料です。科料とは1万円未満の財産刑です。

 

 

いったん賭博を始めれば、勝敗が決まる前でも単純賭博罪が成立します。

 

 

【刑法185条】

賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

 

 

2.「一時の娯楽に供する物」とは?

賭博をしても、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる場合、単純賭博罪は成立しません。

 

 

「一時の娯楽に供する物」とはその場ですぐに消費する低額の物です。例えば、缶ジュース1本や少量のお菓子がこれにあたります。判例上、お金はたとえ少額であっても一時の娯楽に供する物にはあたらないとされています。

 

 

常習賭博罪

1.罰則

常習的に賭博をすると常習賭博罪が成立します。常習賭博罪の罰則は3年以下の懲役です。常習性があれば社会に対する悪影響も大きくなるため、単純賭博罪よりも刑が加重されています。

 

 

【刑法186条1項】

常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。

 

 

2.「常習」とは

常習賭博罪の「常習」とは、「反復して賭博をする習癖があること」を意味します。そのような習癖の発現であれば、1回の賭博行為であっても常習賭博罪が成立します。

 

 

常習性の有無は、以下の事情を総合的に判断して認定されます。

 

 

・賭博の種類

・賭け金の額

・賭博を行っていた期間

・回数

・賭博設備への投資額

・前科の有無

 

 

賭博場開帳図利罪

1.罰則

賭博場を開帳して利益を図ると賭博場開帳図利罪が成立します。賭博場開帳図利罪の罰則は、懲役3か月~5年です。

 

 

自らは財産を失うリスクを負わずに、賭客から利益を得ているという点で、単純賭博や常習賭博よりも悪質とみなされ刑罰も重くなります。

 

 

【刑法186条2項】

賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

 

 

2.「賭博場の開帳」とは

賭博場の開帳とは、自ら主宰者となり、その支配の下に賭博の場所を開設し、賭博の機会を与えることです。賭博場は、賭博の主宰者がマンションや雑居ビルの一室を借りて運営していることが多いです。

 

 

野球賭博などのスポーツ賭博については、賭客が特定の場所に行かなくても、主宰者とスマートフォン等で連絡をとりあって賭博をすることができます。

 

 

そのため、スポーツ賭博については賭博場が存在せず、主宰者には賭博場開帳図利罪が成立しないようにも思えます。

 

 

もっとも、主宰者がスマートフォンを使って賭博のやりとりをしていれば、スマートフォンを使ったその時々の場所を本拠として賭博場を開帳したことになり、全体として賭博場開帳図利罪が成立します。

 

 

3.利益を図る目的が必要

賭博場開帳図利罪が成立するためには、「図利」すなわち利益を図る目的があることが必要です。

 

 

利益を図る目的とは、賭博場で賭博をする者から、寺銭などの名目で、賭博場を利用させる対価を得ようとする意思があることをいいます。

 

 

そのような目的があれば、実際に対価を得ていなくても賭博場開帳図利罪が成立します。

 

 

賭博罪は現行犯逮捕が多い

賭博は被害者がいない犯罪であり、密室でひっそりと行われるため、現行犯で検挙しないと犯罪を立証するのが難しくなります。

 

 

そこで、警察は賭博場を内偵捜査し、嫌疑が固まった時点で、裁判所の捜索差押え令状を得て賭博場に踏みこみ、現金や賭博用具を差し押さえた上で、従業員や客を一斉に現行犯逮捕します。

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店長やディーラー、換金係などの従業員を取り調べたり、金銭の流れを捜査することによって真の経営者が判明すれば、後日、真の経営者を通常逮捕します。

 

 

賭博罪で逮捕された後の流れ

1.賭客

賭博場にいた賭客が現行犯逮捕された場合、勾留まではされずに釈放されることが多いです。ただ、釈放されたからといって事件が終了するわけではなく、在宅事件として捜査は続きます。

 

 

単純賭博罪で起訴されれば、略式裁判で審理され、罰金または科料になります。

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略式裁判は書面のみで審理される簡易な裁判です。被告人として法廷に行く機会がないため、刑罰を受けたという実感を持ちにくいですが、罰金や科料であっても前科がついてしまいます。

 

 

2.賭博店の関係者

賭博店の経営者が逮捕されると勾留される可能性が高いです。ディーラーや換金係、接待係など賭博場で重要な役割を果たしている従業員も勾留される可能性が高いです。

 

 

勾留されれば原則10日、延長されれば最長20日にわたり身柄拘束されます。検察官は勾留の期間内に被疑者を起訴するか釈放しなければなりません。

起訴前の流れ

 

 

賭博店の経営者は、常習賭博罪や賭博場開帳図利罪で起訴されることが多いです。従業員は役割や報酬に応じて、これらの犯罪の共同正犯または幇助犯として起訴されることが多いです。

 

 

起訴されると公開法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されます。勾留されたまま起訴されると、保釈が許可されない限り判決の日まで拘束が続きます。

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賭博罪の弁護活動

1.賭客

単純賭博罪で起訴されれば、罰金になる可能性が高いです。罰金であっても前科になります。前科がつくのを避けるためには、以下のような活動を行い、不起訴を目指します。

 

 

①反省文を作成する

②家族に監督プランを記載した陳述書を作成してもらう

③贖罪寄付をする

 

 

弁護士が不起訴を求める意見書を作成し、これらの資料を添付して検察官に提出します。

 

 

常習賭博で検挙された場合は、上記の活動に加え、ギャンブル依存症のクリニックに通院したり、自治体の更生プログラムを受けることも考えられます。弁護士がこれらの取り組みを証拠化し検察官に提出します。

 

 

2.賭博店の関係者

賭博店の関係者は、経営者など重要な役割を担っている者は、常習賭博罪や賭博場開帳図利罪の共同正犯として扱われます。末端のホール係など賭博への関与が薄い者はこれらの犯罪の幇助犯として扱われます。

 

 

以下のような事情がある場合は、弁護士が捜査機関に対して、幇助犯にとどまることを主張します。

 

 

☑ 賭博店と知らずに調理スタッフとして働き始めた

☑ 実際にも調理がメインの仕事だった

☑ 報酬が一般の飲食店と差がない

 

 

常習性の有無は各共犯者ごとに個別に判断します。以下のような事情がある場合、弁護士が捜査機関に対して、被疑者に常習性がなく単純賭博罪の共犯にとどまることを主張します。

 

 

☑ 賭博罪の前科・前歴がない

☑ 賭博店で働き始める前は賭博の経験がない

☑ 賭博店で働き始めてから1週間しかたっていない

☑ 単純作業しかしていない

☑ まだ研修中で一人で仕事を回せない

 

 

単純賭博罪の幇助犯であれば不起訴になる余地も十分にあります。

 

 

経営者や店長など賭博店の運営に重要な役割を担っている者は、起訴される可能性が高くなります。賭博の仕事から足を洗って正業に就くことにより、処分の軽減を目指します。

 

 

賭け将棋やマージャンで実力差がある場合でも賭博罪になる?

将棋やマージャンの実力に差があっても賭博罪は成立します。実力差があっても偶然性がゼロになるわけではありませんし、偶然性の程度というあいまいな基準で賭博罪になったりならなかったりするのは適切ではないからです。

賭けマージャンは賭博罪になる?

 

 

オンラインカジノは賭博罪になる?

日本国内の店に行き店内のパソコンから海外のオンラインカジノにアクセスして賭博をするインカジについては、賭博罪にあたります。

 

 

店に行くのではなく、日本国内で自分のパソコンやスマートフォンから海外のサーバーで運営されているオンラインカジノに直接アクセスして賭博をした場合も、賭博罪が成立する可能性が高いです。

 

 

サーバーが設置されている海外ではオンラインカジノが合法であったとしても、日本国内からアクセスして賭博をした者については、日本の刑法が適用されると考えられるからです。

 

 

競馬や競輪、競艇、オートレースはなぜ賭博罪にならない?

これらは、観客が偶然の勝敗にお金を賭けて主宰者との間でその得喪を争っているので賭博行為にあたりますが、以下の特別法によって合法化されています。

 

 

競馬競馬法
競輪自転車競技法
競艇モーターボート競技法
オートレース小型自動車競走法

 

 

そのため、これらの公営ギャンブルにお金を賭けても賭博罪にはなりません。

 

 

パチンコはなぜ賭博罪にならない?

パチンコは3店方式が採られていることによって賭博罪にはあたらないとされています。

 

 

3店方式とは、パチンコ店、景品交換所、景品問屋の3つの業者が介在することで、出玉の現金化を行うシステムです。

 

 

具体的には、客がパチンコ店で出玉と特殊景品を交換し、次いで、景品交換所で特殊景品と現金を交換します。その後、景品問屋が景品交換所から特殊景品を買い取り、パチンコ店に卸します。

 

 

もっとも、特殊景品も現金との交換が可能である以上、財物の一種であり、賭博行為に当たるという見解も根強くあります。

 

 

家族が賭博罪で逮捕された場合は、お気軽にウェルネス(03-5577-3613)の弁護士にご相談ください。