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盗品等関与罪について弁護士が解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
盗品等関与罪とは
盗品等関与罪とは盗品等について次の5つの行為をすることです。
①無償での譲受け
②運搬
③保管
④有償での譲受け
⑤有償処分のあっせん
「盗品等」とは、盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物のことです(刑法256条)。「財産に対する罪」とは、窃盗、強盗、横領(業務上横領・遺失物横領を含む)、詐欺、恐喝のことです。
盗品等関与罪の刑罰は次の通りです。
①盗品等の無償譲受け | 3年以下の懲役 |
②盗品等の運搬 | 10年以下の懲役及び50万円以下の罰金 |
③盗品等の保管 | |
④盗品等の有償譲受け | |
⑤盗品等の有償処分あっせん |
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役「または」50万円以下の罰金です。無償譲受け以外の盗品等関与罪は、窃盗罪よりも刑罰が重くなっています。
盗品等関与罪の故意
盗品等関与罪は故意犯です。そのため、盗品等関与罪が成立するためには、対象となる物が盗品等であることを認識している必要があります。
認識の程度については、「間違いなく盗品である」との確定的故意までは必要なく、「もしかしたら盗品かもしれないが、それでもよい。」という未必の故意で足ります。
窃盗犯と盗品等関与罪
窃盗犯が盗品を保管したり運搬したり有償処分のあっせんをしても、盗品等関与罪は成立しません。窃盗犯が盗んだ後にこれらの行為をすることは当然に想定されることです。
そのため、盗んだ点について窃盗罪で処罰すれば足り、その後の行為については処罰する必要がないと考えられているのです。このような行為のことを不可罰的事後行為といいます。
窃盗に関与していない者が窃盗犯と共同で盗品を保管する等した場合、窃盗に関与していない者については盗品等関与罪が成立します。
窃盗の教唆犯・ほう助犯と盗品等関与罪
窃盗犯が盗品の保管等をしても盗品等関与罪は成立しません。これに対して、窃盗の教唆犯やほう助犯については、盗品等関与罪が成立し得ます。
窃盗の教唆犯やほう助犯が盗品に関与することは、想定の範囲内とはいえません。人に窃盗をさせた上で盗品に関与することは、窃盗そのものよりも悪質といえます。
そのため、教唆犯やほう助犯が盗品に関与した場合は、盗品等関与罪が成立します。
盗品等関与罪の時効
盗品等関与罪の時効は、無償譲受け罪が3年、その他の盗品等関与罪が7年です。
盗品等関与罪の5つの種類
1.盗品等無償譲受け罪
「無償譲受け」とは盗品等の贈与を受けることです。無償で盗品等を借りる行為も無償譲受けにあたります。
盗品等無償譲受け罪が成立するためには、贈与の約束だけでは足りず、実際に盗品等の引き渡しを受けていることが必要です。
2.盗品等運搬罪
「運搬」とは盗品等を移動させることです。被害者の家に盗品を届けた場合、被害者の手元に盗品が戻る以上、盗品等運搬罪は成立しないと考えることもできます。
もっとも、盗品を返すことを条件として被害者からお金を巻き上げるために被害者宅に盗品を運んだケースについて、判例は盗品運搬罪が成立するとしています。
3.盗品等保管罪
「保管」とは、委託を受けて窃盗犯のために盗品等を管理することです。委託者は窃盗犯である必要はありません。
質物として受けとる場合や貸金の担保として受けとる場合も保管にあたります。事情を知らない第三者に保管させることも保管にあたります。
盗品等保管罪が成立するためには、保管の約束だけではなく、現実に盗品等を受けとっている必要があります。
保管を始めた時点で盗品等であるとは知らなかった場合、盗品等保管罪は成立しません。保管中に盗品等であることを認識したにもかかわらず保管を続けた場合、認識した時点以降は盗品等保管罪が成立します。
4.盗品等有償譲受け罪
「有償譲受け」とは盗品等を買い取ることです。買い取り以外に交換・債務の弁済・有償での借り受けも有償譲受けにあたります。窃盗犯自身から買い取るケース以外に、転売によって取得した場合も有償譲受けにあたります。
盗品等有償譲受け罪が成立するためには、売買の約束をしただけでは足りず、現に盗品等の引き渡しを受けている必要があります。売買の約束をして盗品等の引き渡しを受けていれば、代金を支払っていなくても有償譲受け罪が成立します。
引き渡しを受けた時点で盗品等であること知らなければ、その後に盗品等であることを知っても有償譲受け罪は成立しません。
被害者に返還するために盗品等を買い取った場合には有償譲受け罪は成立しません。
5.盗品等有償処分あっせん罪
「有償処分あっせん」とは、盗品等の売買や交換、質入れ等の有償の処分を媒介することです。無償の譲受けを媒介しても有償処分あっせん罪は成立しません。あっせん行為自体については、有償でも無償でもよいとされています。
あっせんをした時点で有償処分あっせん罪が成立します。あっせんした売買等が成立する必要はありません。窃盗の被害者に対して売買等をあっせんする場合も有償処分あっせん罪が成立します。