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覚せい剤事件のご質問
このページはウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
Q1-1:昨日、覚せい剤を注射した後、路上をふらふら歩いていたところ、警察官に声をかけられ、近くの警察署まで連行されました。そこでコップに尿を出すように言われ、しぶしぶ従いました。その後、警察官から「今日はとりあえず帰っていい」と言われ帰宅しました。私はこれからどうなるのでしょうか?ちなみに、私には覚せい剤取締法違反の前科が1件あります。
警察が科学捜査研究所に尿の鑑定を依頼します。覚せい剤の陽性反応が出た場合、覚せい剤取締法違反(使用)で逮捕されます。
Q1-2:鑑定結果が出るまでどれくらいかかるのですか?
ケースバイケースですが、早くて依頼後1、2日、通常1週間程度です。
Q1-3:鑑定で陽性反応が出ればすぐに逮捕されるのでしょうか
必ずしもすぐに逮捕されるわけではありません。担当課の繁忙状況等により1か月以上たった後に逮捕されることもあります。ウェルネスで取り扱った事案では陽性反応が出てから2か月以上後に逮捕されたケースもあります。
Q1-4:警察に鑑定結果を尋ねれば教えてくれるのでしょうか?
担当課によりケースバイケースですが、結果が陰性の場合は教えてくれることが多いです。
Q1-5:仮に逮捕された場合、尿をとる手続の違法性を主張できる場合はありますか?
以下の事情がある場合は、違法性を主張する余地があります。
・強制的に警察署まで連行された場合
・暴行・脅迫により採尿された場合
・採尿のために本人を長時間警察署にとどめ置き、がまんできずにやむを得ず出した尿を採取した場合
Q1-6:他の人の尿が私の尿として、誤って鑑定に出されていることはないのでしょうか?
出した尿を警察官があなたの目の前で容器に入れ、封をしていない場合は、取り違えの可能性がないとはいえません。詳細は弁護士にご相談ください。
Q1-7:現時点でするべきことは何かありますか?
覚せい剤を注射した当日に尿を提出していることから、陽性反応が出る可能性が高いです。そのため、覚せい剤取締法違反で逮捕される可能性も高いということになります。まずは弁護士に相談した方がよいでしょう。
Q2-1覚せい剤を自宅で所持しています。もし警察に発覚した場合、どうなりますか?
警察が家宅捜索に入る可能性が高くなります。
Q2-2:家宅捜索の前に警察から連絡はきますか?
家宅捜索は強制処分ですので本人の同意は必要とされていません。そのため、警察からの事前連絡はありません。
Q2-3:警察の自由裁量で家宅捜索ができるのでしょうか?
自由裁量ではありません。まず警察(司法警察員)が裁判所に捜索差押令状の発付を申請し、これが許可される必要があります。
Q2-4:家宅捜索の際、覚せい剤が発見されればどうなりますか?
まず家宅捜索に入った警察官がその場で、覚せい剤の簡易鑑定(予試験)を行います。もし陽性反応が出た場合は、覚せい剤所持の容疑で現行犯逮捕されます。押収した覚せい剤については科捜研に正式鑑定を依頼します。
Q2-5:家宅捜索に入られる直前に覚せい剤の一部を使用していた場合はどうなりますか?
警察から尿を提出するよう求められます。提出後、警察が科捜研に尿の鑑定を依頼し、陽性反応が出た場合は、覚せい剤使用罪で再逮捕される可能性が高くなります。
Q2-6:もし尿の提出を拒んだ場合はどうなりますか?
警察(司法警察員)が裁判所に強制採尿令状の交付を申請し、令状を取得した後に、医師がカテーテルを使用して強制的に採尿する可能性が高くなります。
Q3:覚せい剤と知らずに持っていた場合でも覚せい剤所持罪が成立しますか?
覚せい剤であることの認識が全くなければ、覚せい剤所持罪は成立しません。ただ、「覚せい剤である」と確定的に認識していなくても、「覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物である」と認識していれば、未必の故意ありとして、覚せい剤所持罪が成立します。
Q4:覚せい剤の単純所持と使用で起訴されました。2つの罪で起訴されているので、刑も2倍になるのでしょうか?
(1)覚せい剤の単純所持と使用は、「併合罪」(刑法45条)として処理されます。この場合、最も重い罪について定めた刑の上限にその半分を加えたものを刑の上限とします(刑法47条)。2つの犯罪の刑が同じときは、どちらか一方の刑の上限にその半分を加えます。
(2)覚せい剤の単純所持も使用もどちらも10年以下の懲役です(覚せい剤取締法41条の2第1項、同法41条の3第1項1号)。この場合、10年+5年=15年が刑の上限となります。
(3)一方、懲役刑の下限は1か月です(刑法12条1項)。
(4)したがって、覚せい剤の単純所持と使用で有罪となった場合、法定刑の範囲は1か月~15年となります。この幅の中で実際にどれくらいの年数になるのか、執行猶予がつくか否かは、前科の有無など個別の事情によって決まります。
Q5-1:私は覚せい剤使用罪で逮捕・起訴されましたが現在保釈中です。私には同じ覚せい剤使用罪の前科が2件あります。保釈中気をつけることはありますか。
警察が行動確認を実施している可能性があります。道を歩いているときに、いきなり警察官に呼び止められて尿検査を求められ、これを拒むとパトカーが何台もやってきて、多数の警察官に長時間囲まれるといったケースが考えられます。ウェルネスの弁護士が担当した事件でも実際にそのようなケースがありました。
Q5-2:私は保釈中、覚せい剤は一切使用していません。仮にそのような事態になった場合、尿検査をされても痛くもかゆくもないですが、何か納得できません。尿検査を求められれば応じなければならないのでしょうか?
尿検査を拒むんでも、警察が捜索差押令状を取得すれば、医師に強制的に採尿させることが可能になります。もっとも、単に尿検査を拒んだだけで強制的に採尿できるわけではありません。強制採尿の要件のひとつとして、覚せい剤使用の嫌疑が存在することが必要です。
例えば、「目が充血していて意味不明の言葉を呟いている」といったケースでは嫌疑があるといえますが、単に「覚せい剤使用罪の前科がある」、「覚せい剤使用罪で保釈中である」といった事情だけでは嫌疑があるとはいえません。
したがって、そのような意味での嫌疑が存在しなければ、強制採尿されることはありません。ただ、警察官の前でおろおろしていれば、そのような態度自体から嫌疑ありと判断されてしまう可能性があります。やましいことがないのであれば、変におろおろするのではなく、毅然と対応してください。そうすれば警察官も引き上げる可能性が高いです。
Q6-1:2週間前に覚せい剤を所持していた容疑で逮捕されました。もう覚せい剤からは足を洗いたいので、取調べでは知人に覚せい剤を売っていたことも素直に話しました。やはり、覚せい剤譲渡罪でも再逮捕・起訴されるのでしょうか?
覚せい剤を売っていた相手の自宅などから覚せい剤が押収されれば、覚せい剤譲渡罪で起訴される可能性は十分にあります。
一方、相手の自宅等から覚せい剤が押収されなければ、たとえ本人や相手が覚せい剤の取引について自白している場合であっても、覚せい剤譲渡罪で起訴される可能性は低いです。なぜなら、売買された薬物を押収して、それを実際に鑑定しなければ、本当に覚せい剤なのかどうか証明できないからです。もっとも、この場合、麻薬特例法違反*で起訴される可能性は十分にあるでしょう。
*正式名称は「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」
Q6-2:覚せい剤を譲渡した場合に、覚せい剤譲渡罪で起訴された場合と麻薬特例法違反で起訴された場合で何が違うのですか?
法定刑が違います。覚せい剤譲渡罪の法定刑は10年以下の懲役です(覚せい剤取締法41条の2第1項)。営利目的で譲渡した場合は、少なくとも1年~20年の懲役です(同条第2項)。これに対して麻薬特例法(譲渡)の法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です(麻薬特例法8条2項)。
Q6-3:なぜ覚せい剤取締法と麻薬特例法で刑が違うのでしょうか?
麻薬特例法では、「薬物犯罪を犯す意思をもって、薬物その他の物品を覚せい剤等の規制薬物として譲り渡した」ことが問題とされています。つまり、覚せい剤譲渡罪と異なり、譲渡の対象は覚せい剤等に限定されておらず、規制の対象となっていない物品まで広く含まれています。そのため、覚せい剤譲渡罪よりも刑が大幅に軽く規定されているのです。
Q6-4:なぜ本人も相手方も覚せい剤を売買したと認めているのに、覚せい剤取締法違反ではなく、刑の軽い麻薬特例法違反で起訴されるのでしょうか?
本人が捜査段階で自白していても、起訴後に否認に転ずるのはよくあることです。そのような場合、もし覚せい剤の現物が押収されていなければ、売買された物が覚せい剤であることを証明できず、覚せい剤譲渡罪について無罪となる可能性が高くなります。そのため、たとえ当事者双方が自白していても、覚せい剤が押収されていなければ、検察官としても慎重にならざるを得ないのです。
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