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逃走罪とは?逃走罪の5つの種類と成立要件について解説

逃走罪とは?

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

逃走罪の5つの種類

逃走罪は自分で逃走する罪と他人を逃走させる罪に分けられます。自分で逃走する罪には、逃走罪と加重逃走罪の2つがあり、他人を逃走させる罪には、被拘禁者奪取罪、逃走援助罪、看守者逃走援助罪の3つがあります。

 

 

【自分で逃走する罪】

・逃走罪

・加重逃走罪

 

 

【他人を逃走させる罪】

・被拘禁者奪取罪

・逃走援助罪

・看守者逃走援助罪

 

 

各犯罪の成立要件などをみていきます。

 

逃走罪

1.逃走罪の成立要件

逃走罪の成立要件は次のとおりです。

 

 

①裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が

②逃走すること

 

 

2.逃走罪になる?ならない?

次の人が逃走した場合は、逃走罪になります。

 

 

①拘置所で勾留されている人

②留置場で勾留されている人

③刑務所で受刑中の人

 

 

次の人は逃走しても逃走罪にはなりません。

 

 

①逮捕中の人

②勾留状の執行を受け刑事施設に移動中の人

③少年院に収容されている少年

保釈中の人

勾留執行停止中の人

仮釈放中の人

 

 

3.逃走罪の罰則

逃走罪の罰則は1年以下の懲役です。

 

 

4.逃走罪の罰則

逃走罪は看守者の実力支配を脱したときに既遂になります。

 

 

【実力支配を脱したといえるケース】

刑事施設の敷地外に出た

 

 

【実力支配を脱していないケース】

房の外には出たが刑事施設の敷地外には出ていない

刑事施設の敷地外に出たが職員に追われている

 

 

看守者の実力支配を脱する前に捕まった場合は逃走罪の未遂になります。看守者の実力支配を脱すれば、その時点で既遂になるため、その後に捕まったとしても、逃走罪が成立していることに変わりはありません。

 

 

5.逃走罪の時効

逃走罪の時効は3年です。ただし、海外逃亡している間は時効期間に含まれません。

 

 

加重逃走罪

1.加重逃走罪の成立要件

加重逃走罪の成立要件は次のとおりです。

 

 

①「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者」または「勾引状の執行を受けた者」が

②以下のいずれかの行為をすること

 

A)拘禁場もしくは拘束のための器具を損壊して逃走すること

B)暴行・脅迫をして逃走すること

C)2人以上通謀して逃走すること

 

 

2.加重逃走罪になる?ならない?

次の人が所定の行為をして逃走した場合は加重逃走罪になります。

 

 

①拘置所で勾留されている人

②留置場で勾留されている人

③刑務所で受刑中の人

④逮捕状の執行を受けた人

⑤勾留状の執行を受け刑事施設に移動中の人

 

*④と⑤は加重逃走罪の主体になりますが、逃走罪の主体にはなりません。

 

 

次の人は所定の行為をして逃走しても加重逃走罪になりません(逃走罪にもなりません)。

 

 

現行犯逮捕された人

緊急逮捕されて令状が発付される前の人

保釈中の人

勾留執行停止中の人

仮釈放中の人

 

 

3.逮捕直後に逃げた場合は加重逃走罪になる?

逮捕直後に手錠を破壊したり警察官に暴行して逃げた場合は、加重逃走罪になります。

 

 

警察官が目を離している隙に逃げた場合は、器具の破壊や暴行・脅迫がないため加重逃走罪は成立しません。また、逮捕中に逃走しても逃走罪にはなりません。そのため、逃走した点について犯罪は成立しないことになります。

 

 

4.加重逃走罪の罰則

加重逃走罪の罰則は懲役3か月~5年です。

 

 

5.加重逃走罪の既遂時期

加重逃走罪は、所定の行為をして看守者の実力支配から脱した時点で既遂になります。実力支配から脱する前に捕まった場合は未遂にとどまります。

 

 

6.加重逃走罪の時効

加重逃走罪の時効は5年です。ただし、海外逃亡している間は時効期間に含まれません。

 

 

被拘禁者奪取罪

1.被拘禁者奪取罪の成立要件

被拘禁者奪取罪の成立要件は、①法令により拘禁された者を、②奪取することです。

 

 

【法令により拘禁された者とは】

①拘置所で勾留されている人

②留置場で勾留されている人

③刑務所で受刑中の人

④逮捕状の執行を受けた人

⑤勾留状の執行を受け刑事施設に移動中の人

現行犯逮捕された人

緊急逮捕されて令状がまだ発付されていない人

 

*少年院の収容者は対象にはなりません。

*⑥と⑦は逃走罪、加重逃走罪の主体にはなりません。

 

 

【奪取とは】

奪取とは、被拘禁者を看守者の実力支配から離脱させて自己または第三者の実力支配に置くことです。

 

 

2.被拘禁者奪取罪の罰則

被拘禁者奪取罪の罰則は懲役3か月~5年です。

 

 

3.被拘禁者奪取罪の既遂時期

被拘禁者奪取罪は、被拘禁者を看守者の実力支配から離脱させて自己または第三者の実力支配に置いた時点で既遂になります。

 

 

被拘禁者を実力支配から離脱させて逃走させた場合は、自己または第三者の実力支配に置いたわけではないので、逃走援助罪が成立します。

 

 

4.被拘禁者奪取罪の時効

被拘禁者奪取罪の時効は5年です。

 

逃走援助罪

1.逃走援助罪の成立要件

逃走援助罪の成立要件は、以下の通りです。

 

 

①法令により拘禁された者を逃走させる目的で

②器具を提供したり、その他逃走を容易にする行為をすること

 

 

【法令により拘禁された者とは?】

被拘禁者奪取罪の対象者と同じです。

 

 

【器具とは】

縄ばしご、ノコギリなど逃走に役立つ一切の道具です

 

 

【その他逃走を容易にする行為の具体例】

手錠を開錠したり、周辺の地図を渡したり、逃走方法を教えることが挙げられます。

 

 

2.逃走援助罪の罰則

逃走援助罪の罰則は3年以下の懲役です。

 

 

法令により拘禁された者を逃走させる目的で看守者らに暴行・脅迫をした場合は、刑が加重され懲役3か月~5年となります。

 

 

3.逃走援助罪の既遂時期

逃走を容易にする行為をした時点で直ちに既遂になります。被拘禁者が実際に逃走行為に着手する必要はありません。暴行・脅迫を手段とする場合は、暴行・脅迫をした時点で既遂になります。

 

 

4.逃走援助罪の時効

逃走援助罪の時効は3年です。法令により拘禁された者を逃走させる目的で看守者らに暴行・脅迫をした場合、時効は5年になります。

 

 

看守者逃走援助罪

1.看守者逃走援助罪の成立要件

看守者逃走援助罪の成立要件は、以下の通りです。

 

 

①法令により拘禁された者を看守・護送する者が

②拘禁された者を

③逃走させること

 

 

【法令により拘禁された者とは】

被拘禁者奪取罪・逃走援助罪の対象者と同じです。

 

 

【逃走させたとは】

被拘禁者の逃走を容易にする一切の行為をいいます。

 

2.看守者逃走援助罪の罰則

看者逃走援助罪の罰則は、懲役1年~10年です。本来、被拘禁者を看守すべき者が職務に違反して逃走させていることから、他の逃走罪よりも刑罰が重くなっています。

 

 

3.看守者逃走援助罪の既遂時期

看守者逃走援助罪は被拘禁者が逃走することによって既遂になります。逃走が成功しなかった場合は、逃走援助罪ではなく、本罪の未遂になります。

 

 

4.看守者逃走援助罪の時効

看守者逃走援助罪の時効は7年です。

 

 

ウェルネス法律事務所は刑事事件に強い法律事務所です。刑事事件でお悩みの方はお気軽にウェルネス(03-5577-3613)までご相談ください。