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背任・特別背任とは?要件や弁護士費用について解説
☑ 背任が会社に発覚した
☑ 背任で家宅捜索を受けた
☑ 背任したので会社と示談したい
☑ 特別背任で東京地検特捜部から連絡がきた
☑ 背任の弁護士費用が知りたい
このような方のために、背任・特別背任の加害者側が知っておくべきことをウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎がまとめました。ぜひ参考にしてみてください!
背任とは?
背任とは、被害者(会社)の委託に反して、不正な目的で事務処理を行い、被害者(会社)に損害を与えることです。
【刑法247条】
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背任の要件は?
犯罪が成立するための要件を構成要件といいます。背任罪の構成要件は、他人の事務を処理する者が、図利加害目的で、任務に反した行為をして、会社に財産上の損害を与えることです。
整理すると次の4つの要件に分けられます。
誰が? | 他人の事務を処理する者 |
どのような目的? | 図利加害目的 |
どのような行為? | 任務違背 |
どのような結果? | 財産上の損害 |
それぞれの構成要件についてみていきましょう。
①他人の事務を処理する者
「他人の事務を処理する者」とは、他人(会社)から信任され委託された事務を処理する者です。具体例として、法人の取締役や理事、従業員が挙げられます。
②図利加害目的
「図利目的」とは自己または第三者の利益を図る目的のことです。「加害目的」とは会社に損害を加える目的です。
「自分の利益にもなるし、会社の利益にもなると思ってやった。」というように、図利目的と会社の利益を図る目的が併存していても、会社の利益を図る目的がメインと言えなければ、図利加害目的の要件を満たします。
③任務違背
任務違背とは会社からの委託の趣旨に反する行為をいいます。委託の趣旨に反するかどうかは、加害者と会社との契約内容や当時の状況をふまえてケースごとに判断されます。
株式投資や先物取引といった冒険的取引を任されていた場合は、損失が出たからといって直ちに任務違背になるわけではありません。もっとも、冒険的取引であっても、委託の趣旨に反して取引を行った場合は、任務違背になります。
④財産上の損害
財産上の損害については経済的な観点から柔軟に判断されます。例えば、不正融資のケースでは、銀行から融資先に貸付金が移転しても、銀行には貸付債権が発生するため、法律的には損害がないように見えます。
しかし、融資先が倒産寸前であれば、貸付金を回収できないリスクが高いので損害として扱われます。
背任罪の罰則は?
背任罪の罰則は5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。同じく会社絡みの財産犯罪である業務上横領罪(10年以下の懲役)に比べて刑罰が軽くなっています。
背任罪は実刑になる?
背任罪の刑罰を決める最も大きな要素は会社に与えた損害の額です。損害額が200万円以上で示談が成立せず被害弁償もしていない場合は、実刑になる可能性が高いです。
損害額が1000万円以上であっても、「許す」といった宥恕文言が付いた示談を交わして、損害全額を弁済している場合は、執行猶予が付く可能性が高いです。
背任の時効は?
刑事事件の時効
背任罪の時効は背任行為から5年です。背任行為が複数ある場合はそれぞれの行為ごとに時効が個別に進行します。
民事事件の時効
背任は民事事件にもなり得ます。民事事件の時効は、背任行為が発覚したときから3年または背任行為の時から20年です。民事の時効も事件ごとに個別に進行します。
背任の事例
①銀行の支店長が、回収が困難であることを知りつつ、倒産間近の取引先に融資をして、お礼に金品をもらった。
②会社から貸与されていた法人カードを使って、仕事とか関係のない商品を私的に購入した
③会社に取引に必要な物と偽ってパソコンを購入し、転売した
背任と業務上横領の違いは?
背任と業務上横領は「本人の信頼を裏切る行為により財産上の損害を与えた」という点で共通しています。両者はどのように区別されるのでしょうか?
ポイントは「自分が管理している物」をとったかどうかです。仕事で自分が管理している物をとった場合は、業務上横領になります。
【典型的な業務上横領】 客から集金したお金を自分の口座に入れた⇒客から集金した時点で「自己が管理しているお金」といえ、そのお金を自分の物にしているので業務上横領罪が成立します。 |
業務上横領は「自分が管理している物」を対象にしているという点で範囲が明確です。また、業務上横領(10年以下の懲役)の方が背任(5年以下の懲役または50万円以下の罰金)よりも刑罰が重くなっています。
そのため、両方の犯罪の要件を満たす場合は、業務上横領罪のみが成立します。
特別背任とは?
会社の取締役、監査役、執行役など会社法で定められている一定の者が背任行為をすると、特別背任罪になります(会社法960条)。
特別背任罪の刑罰は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金です。懲役刑と罰金刑の両方が科されること(併科)もあります。
重要な役職にある者が背任行為をすると、会社に深刻な影響を及ぼすことが多いため、通常の背任罪よりも刑罰が重くなっています。
特別背任と経営判断の原則
会社経営をしていく上でリスクはつきものです。
会社の利益を図るために、取締役がリスクをとって経営判断をしたところ、それが裏目に出て損失が膨らんでしまった-このようなケースは少なくありません。
大きな損失が出てしまうと、会社のためにした行為であっても、後に経営権をめぐる紛争が生じ、特別背任罪として告発されることがあります。
会社経営は、多くの事情を考慮して行われる高度に専門的な判断です。また、経営の専門家である取締役には広い裁量があります。そのため、当時の状況を前提として著しく不合理でない限り、取締役の経営判断は尊重されるべきです。
このような考え方を経営判断の原則といいます。会社の利益のためにした行為が裏目に出てしまった場合は、弁護士が経営判断の原則をもとに、「任務違背」に当たらないことを主張します。
背任の逮捕率は?
2023年に刑事事件として取り扱われた背任事件のうち逮捕されたケースは17%です。
*2023年版検察統計年報をベースにしています(特別背任罪は含まれていません)。
背任で逮捕された後の流れは?
背任は手口が巧妙で複数の人物が絡んでいることが多く、捜査に時間がかかります。そのため、背任で逮捕されると、検察官の勾留請求⇒裁判官の勾留質問を経て勾留される可能性が高いです。
背任で逮捕された被疑者のうち96%が勾留されています。そのうち勾留が延長されたケースは88%です。
*2023年版検察統計年報をベースにしています(特別背任罪は含まれていません)。
検察官は最長20日の勾留期間内に被疑者を起訴するか釈放しなければなりません。この期間内に会社側と示談が成立すれば、不起訴になる可能性が高くなります。
不起訴になれば刑事裁判にならないため、処罰されたり前科がつくことはありません。
背任で逮捕されない場合の流れは?
背任で警察の取調べを受けているものの逮捕はされていない場合、警察での捜査⇒書類送検⇒検察官におる起訴・不起訴の決定という流れで手続が進みます。
警察から最初に連絡があった日から書類送検まで少なくとも2か月、長い場合は6か月以上かかることもあります。書類送検されてから起訴・不起訴が決定されるまで2,3ヶ月かかることが多いです。
⇒在宅事件の流れは?逮捕される刑事事件との違いや起訴・不起訴について
背任の不起訴率は?
2023年に刑事事件として取り扱われた背任事件のうち不起訴になったケースは66%、起訴されたケースは34%です。起訴されたケースのうち92%が公判請求、8%が略式請求されています。
*2023年版検察統計年報をベースにしています(特別背任罪は含まれていません)。
起訴される確率はそれほど高くありませんが、起訴されれば、簡易な略式裁判で審理されるケースは少なく、9割以上が公開法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されます。
背任と示談
背任が刑事事件となり広く報道されると、企業イメージが悪化することから、会社にとっても示談で穏便に解決するメリットがあります。
背任事件は本質的には会社内の問題ですので、告訴状や告発状が提出されなければ、捜査機関が独自に捜査に入ることはありません。
告訴状や告発状が受理される前に示談で解決すれば、事件化を阻止することができます。刑事事件になってしまった場合でも、示談が成立すれば不起訴や執行猶予の可能性が高くなります。
背任事件では被害金額が大きくなりやすく、一括で示談金を支払えないケースが多いです。そのようなケースでは、分割払いの示談をすることになります。
背任・特別背任と特捜部
社会的に影響力のある法人を舞台とする背任・特別背任事件に関しては、東京地検特捜部または大阪地検特捜部が捜査の指揮をすることがあります。日本大学の背任事件についても東京地検特捜部が捜査を手がけています。
特捜部が指揮する背任・特別背任事件は、複雑なスキームが組まれ、巨額の金銭が動いているケースが多いです。事案の真相を解明するために、特捜検事によってほぼ毎日長時間の取調べが実施されます。
ウェルネスの弁護士は特捜事件で執行猶予を獲得した実績があります。また、東京地検特捜部で捜査にあたっていた元検察官の顧問もおります。背任・特別背任の容疑で東京地検特捜部から連絡がきた方はお気軽にご相談ください。
背任・特別背任の弁護士費用は?
背任・特別背任の弁護士費用は、逮捕されていないケースで60万円~120万円、逮捕されたケースで80万円~160万円前後です。
逮捕されたケースでは弁護士が接見に行ったり、釈放のための活動をする必要がありますので、逮捕されていないケースに比べて費用が高くなります。
背任の容疑を否認している場合は、幅広い証拠の検討や関係者への反対尋問が必要になるため、上記の費用相場よりも高くなります。
東京地検や大阪地検の特捜部が捜査を担当している場合は、連日にわたり取調べが実施されるため上記の費用相場よりも高くなります。
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