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保護観察とは?保護観察中にすることや期間、遵守事項について解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

保護観察とは?

保護観察とは犯罪をした大人や非行をした少年を社会の中で更生させるための制度です。刑務所や少年院に収容される施設内処遇に対して、社会内処遇と呼ばれます。

 

 

保護観察は「指導監督」と「補導援護」という2本の柱からなります。社会の中で改善更生するためには、ルールを守って自立した生活を営むことが必要です。

 

 

指導監督とは、保護観察の対象者に再発防止のためのルールを守らせる活動です。補導援護とは、保護観察の対象者に住居や仕事を確保させ自立した生活を営めるようにする活動です。

 

保護観察の4つタイプ

保護観察には次の4つの類型があります。

 

 

1.保護観察処分少年

家庭裁判所で少年審判を受け保護観察になった少年です。

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2.少年院仮退院者

家庭裁判所で少年審判を受け少年院送致となり、少年院に収容された後に仮退院で出所した方です。

 

 

3.仮釈放者

裁判で懲役または禁錮の実刑判決を受け、刑務所に収容された後に仮釈放で出所した人です。

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4.保護観察付執行猶予者

裁判で保護観察付きの懲役・禁錮の執行猶予判決を受けた人です。

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保護観察の期間は?

保護観察の種類に応じて期間も異なってきます。まとめると以下のようになります。

 

保護観察のタイプ

保護観察の期間

保護観察処分少年

次の①か②のいずれか

①20歳に達するまで

②2年未満で20歳に達する場合は2年

少年院仮退院者

次の①か②のいずれか

①20歳に達するまで

②1年未満で20歳に達する場合は1年

仮釈放者

残りの刑期

保護観察付執行猶予者

執行猶予期間

 

 

保護観察は誰が行う?

1.保護観察官と保護司

保護観察の担い手は保護観察官と保護司です。保護観察を受ける全ての方に担当の保護観察官と保護司がつきます。

 

2.保護観察官とは

保護観察官は保護観察所に所属する常勤の国家公務員です。保護観察所は全国50か所に設置されており、約1000名の保護観察官が配置されています。

 

 

保護観察官は、心理学や教育学、社会学などの専門知識を持っており、各自が数十名の対象者を担当しています。

 

3.保護司とは

保護司とは非常勤の国家公務員で民間のボランティアです。給与は支払われませんが、予算の範囲で業務に必要な費用は支給されます。

 

 

保護司は全国に約4万8000人おり、60代の方が多いです。各保護司が1人か2人程度の対象者を担当しています。

 

4.保護観察官と保護司の役割分担

保護観察官は常勤の専門職ですが、一人で数十名の対象者を担当しているため、一人一人の対象者と蜜にコミュニケーションをとりながら監督することまではできません。

 

 

対象者の特性に応じたきめ細かいフォローアップは地域の保護司が行います。保護司は対象者と面接を重ね、生活状況や家族関係を把握した上で、各自の特性に応じた監督や支援を行います。

 

 

保護観察官は保護観察の全体的なプランを作成したり、ルール違反など保護司だけでは対応しきれない問題が生じたときに介入します。

 

 

また、薬物犯罪や性犯罪を犯した方を対象とする再犯防止プログラムを作成し、保護観察所で実施します。

 

 

保護観察中は何をするの?

保護観察になると、まず保護観察所に行って担当の保護観察官から保護司を紹介されます。その後は月に1,2回保護司の家に行き生活状況を報告します。保護司が対象者の家に来ることもあります。

 

 

性犯罪や薬物犯罪を犯して保護観察になった場合は、定期的に保護観察所に行って、保護観察官から再犯防止プログラムを受けます。

 

 

薬物犯罪を犯した方については、強制ではありませんが薬物検査を受けるように言われることもあります。

 

保護観察の遵守事項

1.遵守事項とは

保護観察の対象者には守るべきルールがあります。このルールのことを遵守事項(じゅんしゅじこう)と言います。

 

 

遵守事項には保護観察の対象者全てに適用される一般遵守事項と特定の対象者にだけ適用される特別遵守事項の2つがあります。

 

2.一般遵守事項

全ての対象者が守らなければならない一般遵守事項は次のとおりです。

 

 

① 再犯することがないよう、又は非行をなくすよう健全な生活態度を保持すること

② 保護観察官及び保護司による指導監督を誠実に受けること

③ 速やかに住居を定め届け出をすること

④ 上記の住居に居住すること

⑤ 転居または7日以上の旅行をするときは、予め保護観察所長の許可を得ること

 

3.特別遵守事項

対象者の改善更生のために特に必要と認められる場合、特別遵守事項が定められます。特別遵守事項は以下の事項について具体的に定められます。

 

 

① 犯罪又は非行に結び付くおそれのある特定の行動をしてはならないこと。

② 健全な生活態度を保持するために必要と認められる特定の行動を実行し、又は継続すること。

③指導監督を行うため事前に把握しておくことが特に重要と認められる生活上又は身分上の特定の事項について、緊急の場合を除き、あらかじめ、保護観察官又は保護司に申告すること。

④ 特定の犯罪的傾向を改善するための体系化された手順による処遇として法務大臣が定めるものを受けること。

⑤ 改善更生のために適当と認められる特定の場所であって、宿泊の用に供されるものに一定の期間宿泊して指導監督を受けること。

⑥ 地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を一定の時間行うこと。

⑦ その他指導監督を行うため特に必要な事項

 

 

保護観察の遵守事項に違反したらどうなる?

一般遵守事項であれ特別遵守事項であれ、保護観察中に遵守事項を守らないとペナルティが科されます。保護観察の種類ごとにペナルティの内容を見ていきます。

 

 

1.保護観察処分少年

保護観察処分少年が遵守事項を守らなければ、保護観察所長から警告を受けることがあります。警告を受けてもなお遵守事項を守らなかった場合、保護観察所長の申請により、家庭裁判所の審判を経て少年院に収容されることがあります。

 

 

18歳以上の特定少年が遵守事項を守らなければ、保護観察所長の警告なしでいきなり家庭裁判所の審判を受けることもあります。

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2.少年院仮退院者

少年院仮退院者が遵守事項を守らなければ、地方委員会が保護観察所長の申出を受けて、家庭裁判所に対して、少年院に戻して収容する旨の決定を申請することができます(戻し収容申請)。

 

 

申請を受けた家庭裁判所が相当と認めるときは、少年院に戻して収容する旨の決定をすることができます。

 

 

3.仮釈放者

仮釈放者が遵守事項を守らなければ、保護観察所長の申出により、地方委員会によって仮釈放が取り消されることがあります。仮釈放が取り消されると刑事施設に収容されます。釈放中の日数は刑期に算入されません。

 

 

4.保護観察付執行猶予者

保護観察付執行猶予者が遵守事項を守らなければ、保護観察所長が検察官に対し執行猶予の取消しの申出をすることがあります。

 

 

申出を受けた検察官が裁判所に執行猶予の取消を請求すると、裁判所は対象者または代理人の意見を聞いた上で執行猶予を取り消すか否かを決定します。

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対象者の請求があれば口頭弁論が開かれます。この場合、対象者は弁護人を選任することも可能です。

 

 

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