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不同意わいせつ罪とは?構成要件や刑罰、改正のポイントを弁護士が解説
【この記事の作成者】 弁護士 楠 洋一郎(第二東京弁護士会所属 / 登録番号第39896号) 【事務所名:ウェルネス法律事務所】 不同意わいせつ事件の豊富な実務経験と最新の法令に基づき解説しています。 |
令和5年(2023年)7月13日に改正刑法が施行され、これまでの強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪に代わって不同意わいせつ罪が新設されました。既に各地で不同意わいせつ罪での逮捕事例が出ています。
このページでは、不同意わいせつ等の性犯罪事件に詳しい弁護士が、不同意わいせつ罪の加害者側が知っておきたいことをまとめました。ぜひ参考にしてみてください!
【お急ぎの方へ】
不同意わいせつで家族が逮捕されていたり、示談交渉や逮捕回避の具体的なアドバイスを求めている方は、以下の実務解説ページを優先的にご確認ください。
⇒不同意わいせつ(旧 強制わいせつ)に強い弁護士へのご相談・解決の流れはこちら
不同意わいせつ罪とは?
不同意わいせつ罪とは、相手の同意なくわいせつ行為をした者を処罰する犯罪です。従来の強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪を統合する形で新たに創設されました。
従来の強制わいせつ罪の要件は、暴行や脅迫を手段としてわいせつな行為をすることです。
⇒強制わいせつ罪(旧刑法)とは?要件や逮捕後の流れなど「知りたいこと」を全解説
従来の準強制わいせつ罪の要件は、相手が心身喪失(泥酔など)や抗拒不能(洗脳など)に陥っている状態でわいせつな行為をすることです。
⇒準強制わいせつとは?逮捕を回避するポイントや慰謝料の相場を解説
これに対して、不同意わいせつ罪は、相手の同意がない状況でわいせつな行為をしたときに成立する犯罪であり、強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪より処罰の範囲が広くなります。
不同意わいせつ罪の「わいせつ」とは?
不同意わいせつ罪の「わいせつ行為」とは、性欲を刺激・興奮させ、人の性的な羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為のことです。以下の行為がわいせつ行為にあたります。
【わいせつ行為の具体例】
①キスをする
②胸をもむ
③抱きしめる
④陰部をなでる(膣の中に指を入れると「わいせつ行為」ではなく「性交等」になります)
⑤陰茎を臀部におしつける
【不同意性交等との違いは?】 不同意性交等の「性交等」とは以下の行為を意味します。 ①性交 ②肛門性交 ③口腔性交 ④膣・肛門に身体の一部(陰茎を除く)または物を挿入する行為であってわいせつなもの
これまで④は強制わいせつに該当する「わいせつ行為」とされていましたが、刑法改正により「性交等」に含まれることになりました。 |
不同意わいせつ罪の刑罰は?
不同意わいせつ罪の刑罰は6か月~10年の拘禁刑です。
不同意わいせつ罪には罰金刑がないので、起訴されれば簡易な略式裁判で審理されることはなく、公開法廷で審理され、検察官から必ず拘禁刑を請求されることになります。
【不同意性交等との違いは?】 不同意性交等の刑罰は拘禁刑5年~20年です。 |
不同意わいせつ罪が創設された理由は?
1.強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪の問題点
強制わいせつ罪の成立要件として暴行または脅迫が必要とされていました。また、準強制わいせつ罪の成立要件として心神喪失または抗拒不能が必要とされていました。
しかし、次のようなケースではこれらの要件を立証するのは困難であり、結果的に泣き寝入りせざるを得ない被害者も少なくありませんでした。
①恐怖のあまりフリーズしている間にわいせつな行為をされたケース
②上司から「言うことを聞かないと降格させる」と言われて、拒否できずにわいせつな行為をされたケース
2.自由な意思決定を尊重する
性的な行為をするかどうかは、本人の自由な意思に委ねられるべきです。たとえ暴行や脅迫がなかったとしても、「やめてください!」と言えない状況でわいせつな行為をされれば、自由な意思決定が侵害されたといえます。
そこで、自由な意思決定を尊重するため不同意わいせつ罪を創設し、「やめてください!」と言えない状況でわいせつな行為をした場合に処罰することにしたのです。
不同意わいせつ罪の3つの種類
不同意わいせつ罪には次の3つの種類があります。
不同意わいせつ罪① | 「やめてください!」と言えない状況でわいせつ行為をしたケース |
不同意わいせつ罪② | 相手が勘違いしている状況でわいせつ行為をしたケース |
不同意わいせつ罪③ | 16歳未満の者へわいせつ行為をしたケース |
①の不同意わいせつ罪は、自由な意思決定ができない状況におかれている人を保護しています。
②の不同意わいせつ罪は、自由な意思決定をするための判断材料を誤解している人を保護しています。
③の不同意わいせつ罪は、自由な意思決定をするための判断能力が十分に備わっていない年少者を保護しています。
【不同意性交等との違いは?】 不同意性交等についても、不同意わいせつと同様に上記の3つの種類があります。この点について違いはありません。 |
不同意わいせつ罪の構成要件は?
犯罪が成立するための要件を構成要件といいます。不同意わいせつ罪の構成要件をまとめると以下のようになります。
【不同意わいせつ罪①】 「やめてください!」と言えない状況でのわいせつ行為 | |
【構成要件】 次の8つの行為または事由その他これらに類する行為または事由により、同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせ(またはそのような状態にあることに乗じて)わいせつな行為をすること | |
8つの行為または事情 | 具体例 |
①暴行もしくは脅迫を用いることまたはそれらを受けたこと。 | 相手を殴って胸をもむ。 |
②心身の障害を生じさせること又はそれがあること。 | 知的障害のある方にキスをする。 |
③アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。 | 泥酔している相手の胸をもむ。 |
④睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。 | 寝ている相手の胸をもむ。 |
⑤同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。 | 背後から近づいていきなり胸をわしづかみにする。 |
⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。 | 夜道で近づき驚いてフリーズしている相手にキスをする。 |
⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。 | 日常的に虐待をするなかで、「一緒に寝よう」と言って体中を触る。 |
⑧経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。 | 上司が部下に「言うことを聞かないとプロジェクトから外す」と言ってキスしたり胸をもむ。 |
【不同意わいせつ②】 相手が勘違いしている状況でのわいせつ行為 |
【構成要件】 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、もしくは行為をする者について人違いをさせ、またはそれらの誤信もしくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をすること |
【具体例】 2人きりで性行為をすると思っている女性にアイマスクを装着させ、友人の男性に胸を触らせた。 |
【不同意わいせつ③】 16歳未満の者へのわいせつ行為 | |
相手が13歳未満 | わいせつ行為をするだけで不同意わいせつ罪になる。 |
相手が13歳以上16歳未満 | 5歳以上年上の者がわいせつ行為をすると不同意わいせつ罪になる。年齢差が5歳未満であれば不同意わいせつ罪にはならない。 |
【弁護士の探し方】 |
不同意わいせつ致死傷罪とは?
不同意わいせつ罪を犯して被害者を負傷させた場合は、不同意わいせつ致傷罪が成立します。死亡させた場合は不同意わいせつ致死罪が成立します。
不同意わいせつ未遂罪を犯して被害者を負傷させたり死亡させた場合も、不同意わいせつ致傷罪や致死罪が成立します。
不同意わいせつ致死傷罪の刑罰は無期拘禁刑または3年~20年の拘禁刑です。不同意わいせつ致死傷罪で起訴されると裁判員裁判で審理されることになります。
【不同意性交等との違いは?】 不同意性交等を犯して被害者を死傷させた場合は、不同意性交等致死傷罪が成立します。不同意性交等致死傷罪の刑罰は無期拘禁刑または拘禁刑6年~20年です。裁判員裁判で審理されることは不同意わいせつ致死傷罪と同様です。 |
不同意わいせつ罪と告訴
不同意わいせつ罪で起訴するにあたって被害者の告訴は必要とされていません。不同意わいせつ致死傷罪についても告訴は不要とされています。
強制わいせつ罪も準強制わいせつ罪もかつては親告罪でしたが、「告訴するか否か」という重い判断を被害者に委ねるとかえって被害者にとって負担になることから、告訴は不要とされました。
【不同意性交等との違いは?】 不同意性交等罪も起訴にあたって告訴は不要とされています。そのため、違いはありません。 |
不同意わいせつ罪の時効は?
不同意わいせつ罪の時効は12年です。強制わいせつ罪の時効は7年でしたが、性犯罪の被害を訴えるのに長期間かかるケースが多いことから、5年延長されました。
時効が経過すると起訴できなくなるので、逮捕されたり家宅捜索をされることもなくなります。
不同意わいせつ致傷罪の時効は20年です。強制わいせつ致傷罪の時効は15年でしたが、同じ理由により5年延長されました。不同意わいせつ致死罪の時効は30年で、強制わいせつ致死罪と同じです。
【18歳未満の方が被害を受けた場合の時効】 不同意わいせつ罪の被害を受けた時点で18歳未満の場合、時効は上記の期間に<18歳になるまでの期間>が加算されます。
18歳未満で被害を受けた場合、自分が被害を受けたことを理解するのに長期間かかるケースもあることから、成人に達するまでの期間が加算されることになりました。 |
| 時効期間 | 18歳未満の場合 |
不同意わいせつ罪 | 12年 | 18歳になるまでの期間が加算される |
不同意わいせつ致傷罪 | 20年 | |
不同意わいせつ致死罪 | 30年 |
不同意わいせつ罪の問題点
刑事裁判では検察官が立証責任を負っているため、検察官が有罪を立証できなければ無罪になります。被告人が無罪を証明する必要はありません。
この点については不同意わいせつ罪も同様です。
もっとも、不同意わいせつ罪の成否は、同意の有無という不明確な事象にかかってくるので、立証責任が検察側にあるとしても、被害者に同意がなかったと言われれば、被告人の方で同意の存在を事実上立証する必要が出てきます。
これまでも「同意していない」と言われて強制わいせつ事件に問われるケースはありましたが、強制わいせつ罪の場合は「暴行」、「脅迫」という明確な要件があったため、その点にフォーカスして弁護活動を行うことが可能でした。
これに対して、不同意わいせつ罪の場合は、暴行・脅迫にとどまらず広く同意の有無が問題となります。そのため、被害者が言っていることの信用性を判断するのがより難しくなり、結果的に冤罪の発生するリスクが高まるといえるでしょう。
このような不同意わいせつ罪の問題点をふまえ、弁護士としては、検察官や裁判官に対して、被害者証言の信用性をより一層慎重に検討するよう求めていくべきです。
不同意わいせつ罪で逮捕された後の流れは?
1.起訴前の流れ
不同意わいせつ罪で逮捕されると、検察官の勾留請求→裁判官の勾留質問を経て、3日以内に勾留されるか釈放されるかが決まります。
逮捕の期間は最長3日ですが、勾留は原則10日、延長されれば最長20日になります。検察官は勾留の満期日までに被疑者を起訴するか釈放するかを決めなければなりません。勾留満期までに示談が成立した場合は、処分保留で釈放されその後に不起訴になることが多いです。
示談が成立しなければ満期日かその前日に起訴される可能性が高いです。
不同意わいせつ罪の逮捕率は56%、勾留率は91%、勾留延長率は84%です。 *逮捕率・勾留率…【2024年版検察統計年報】罪名別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員 *勾留延長率…【2024年版検察統計年報】罪名別 既済となった事件の被疑者の勾留後の措置、勾留期間別及び勾留期間延長の許可、却下別人員 |
2.起訴後の流れ
起訴されれば刑事裁判が始まります。起訴事実を認める場合、起訴から判決までの期間は2か月程度になります。起訴事実を否認する場合は、短くても半年は裁判が続くでしょう。
起訴されればその後も勾留が続きますが、保釈請求が許可されれば釈放されます。
不同意わいせつ罪の起訴率は35%です。 *【2024年版検察統計年報】罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員 |
不同意わいせつに強い弁護士の選び方や弁護士費用については、以下のメインページで詳しく解説しています。















