盗撮は証拠がなくても自首できる?弁護士が解説

盗撮は証拠がなくても自首できる?

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

自首とは?

自首とは

 

1.自首の意味

自首とは、自己の犯罪事実を自発的に捜査機関に申告し処分を求める意思表示です。

 

 

警察に行って「盗撮をしました」と正直に言えば、他の要件を満たしている限り、自首になります。これに対して「盗撮の疑いをかけられたが自分はしていない」と言っても、「犯罪事実」を申告したことにはならないので、自首にはなりません。

 

 

2.自首の要件

犯罪と犯人の両方が発覚した後に警察に出頭しても自首にはなりません。そのため、盗撮の被疑者として捜査線上に浮上している場合は、出頭しても自首にはなりません。

 

 

捜査線上に浮上しているかどうかは外部からはわかりませんので、自首するためにはなるべく早く出頭する必要があります。

 

 

3.自首のメリット

自首という形で自ら出頭し捜査に協力することにより、逮捕の要件となる逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが低いと判断されやすくなり、逮捕の可能性が下がります。

 

 

逮捕されなければ、有名人でない限り報道されることもありません。

盗撮で自首するメリットは?自首の流れや逮捕・報道との関係

 

 

証拠がなくても自首できる?

証拠がなくても自首できる?

 

自首の要件は次の3つです。

 

 

①捜査機関に自己の犯罪事実を申告し処分を求めること

②犯罪と犯人の両方が捜査機関に発覚する前に申告すること

③自発的な申告であること

 

 

自首にあたって証拠を持参することまでは要件とされていません。そもそも証拠を集めるのは捜査機関の仕事であって、犯人の義務ではないからです。

 

 

もっとも、証拠なしで出頭した場合、自首として受理されないことがあります。警察としても証拠がなければ捜査のしようがなく、刑事事件として取り扱う必要性が低いためです。

 

 

以下では、盗撮事件で証拠がなくても自首できるかどうかについて解説しました。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

盗撮の証拠にはどんなものがある?

盗撮事件の証拠

 

盗撮事件の典型的な証拠は以下のとおりです。

 

 

防犯カメラ等駅構内での盗撮⇒駅構内の防犯カメラ
商業施設での盗撮⇒施設の防犯カメラ
加害者が犯行時に着ていた服(防犯カメラに写っている犯人との同一性を確認するために必要になります)
関係者の供述犯行状況についての被害者の供述
犯行状況についての目撃者の供述
その他加害者が盗撮に使ったスマートフォンや小型カメラ、内臓SDカード
加害者の交通系ICカードの履歴

 

 

これらの証拠のうち加害者が所持している証拠は以下となります。

①犯行時に着ていた衣類

②盗撮に使ったスマートフォン等の媒体

③交通系ICカード

 

 

盗撮の現行犯で捕まった場合、スマートフォン等の撮影媒体と交通系ICカードは警察に押収されます。着ていた衣類は押収されませんが、写真撮影され証拠化されます。

 

 

盗撮で自首を検討している段階では、これらの証拠はまだ警察に押収されておらず加害者の手元にあるはずです。そのため、自首する際にこれらの証拠を持参してもらいます(衣類は着用した状態で出頭してもらいます。)。

盗撮で自首する際に警察に持って行く物

 

 

盗撮は証拠がなくても自首できる?

盗撮は証拠がなくても自首できる?

 

1.被害届が出ている場合

ウェルネスの弁護士は、盗撮でこれまで約100件の自首に同行してきましたが、ほとんどの方は、最初に弁護士に相談に来た時点で盗撮画像を削除していました。

 

 

盗撮が見つかった直後に動揺して画像データを削除してしまうケースが多いです。盗撮の被害届が出ていれば、盗撮画像を削除した後に出頭しても自首として受理されます。

 

 

盗撮目的でカメラを差し向けた事実は、盗撮画像がなくても、防犯カメラや被害者・目撃者の供述によっても立証できるからです。被害届が出ている以上、警察はこれらの証拠の確保に動いています。押収したスマートフォン等から盗撮画像が復元されればそれも証拠になります。

 

 

【盗撮画像を削除したらどうなる?】

盗撮画像を自ら削除することは典型的な証拠隠滅といえます。

 

そのため、出頭後に捜査員から「なんで消したんだ!反省してないだろ!」等と言われることがありますが、それで逮捕された方は、ウェルネスの弁護士が自首同行した方の中には一人もいませんでした。

 

もっとも、「証拠隠滅のおそれ」は逮捕の要件のひとつではあるので(刑事訴訟規則143条の3)、自首を検討しているのであれば、盗撮画像は削除しないようにしてください。

 

 

2.被害届が出ていない場合

警察に出頭した時点で被害届が出ていなければ、自首として受理される場合とされない場合があります。

 

 

盗撮画像を削除していなければ、決定的な証拠があるため自首として受理されます。

 

 

盗撮画像を削除していた場合は、警察が現場周辺の防犯カメラを確認し、盗撮した状況や前後の状況が写っていれば、証拠があるため自首として受理することが多いです。

 

 

防犯カメラの映像は1,2週間で上書きされます。警察が防犯カメラを確認したところ既に上書きされていた場合や、現場周辺に防犯カメラがなかった場合は、本人の供述を裏付ける証拠がなく、出頭しても自首として受理される可能性は低いです。

 

 

この場合、そもそも刑事事件として取り扱われませんので、前科はもちろん前歴もつかず、出頭した本人にとっても不利益はありません。

 

 

削除した盗撮画像が警察によって復元されれば、自首として受理される可能性が高くなります。

 

 

もっとも、削除後に復元できるケースは多くはなく、警察も最初からあきらめモードで、スマートフォン等を押収しないこともあります。

 

 

自首として受理されなかった場合でも、後日被害届が出れば、最初に出頭した時点にさかのぼって自首したものとして扱われます。

 

 

3.まとめ

盗撮の被害届が出ていれば、盗撮画像等の証拠がなくても自首として受理されます。

 

 

盗撮の被害届が出ていなければ、自首として受理される場合と受理されない場合があります。盗撮画像や防犯カメラ等の証拠がなければ、自首として受理されない可能性が高くなります。

 

 

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