接見禁止一部解除で家族や恋人に会う方法

接見禁止一部解除

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

接見禁止一部解除とは

接見禁止一部解除とは、裁判官の裁量により、接見禁止の一部を解除し、特定の者に限って被疑者や被告人と接見したり、手紙のやりとりをできるようにすることです。接見禁止の一部解除は、法律で定められているわけではありませんが、実務では広く認められています。

 

接見禁止一部解除は誰でも申請できる

接見禁止一部解除は誰でも申立てをすることができます。内縁の妻や恋人、友人、上司など本人と婚姻関係、血縁関係がない方でも申立てをすることができます。

 

 

とはいえ、通常は、弁護士が申立てをするケースがほとんどでしょう。特に難しい手続ではありませんので、弁護士に依頼すればすぐに申立てをしてくれるはずです。万一、弁護士が動いてくれない場合は、本人や家族、恋人等が直接申立てをすることもできます。

 

接見禁止一部解除を申し立てるメリットとデメリット

メリット

接見禁止への対抗手段としては、抗告や準抗告があります。これらが認められれば、誰でも接見できることになりますが、実際にはなかなか認められることはありません。

 

 

これに対して、「一部のみ」の解除であれば、裁判所としても、本人と対象者との関係などを考慮して柔軟に判断できますので、ずっと認められやすくなります。

 

 

デメリット

準抗告や抗告の場合、却下されると不服を申し立てることができます。不服を申し立てると別の裁判官が判断することになります。

 

 

これに対して、接見禁止一部解除の申立てが却下された場合は、不服を申し立てることができません。この申立ては、準抗告や抗告のように法律で認められた手続ではなく、裁判所に対する「非公式のお願い」にすぎないからです。

 

 

とはいえ、準抗告や抗告よりも認められる可能性はずっと高くなりますので、デメリットはあまり問題にはならないともいえるでしょう。

 

接見禁止一部解除の2つの種類

接見禁止には、①接見を禁止する処分と②手紙のやりとり(書類の授受)を禁止する処分の2つがあります。

 ①接見の禁止+②手紙の禁止

 

これに対応して、接見禁止一部解除にも、①を解除する処分と②を解除する処分の2つがあります。通常は、①の解除と②の解除を同時に申し立てます。

 

 

実務では、①の解除の方が②の解除よりも認められやすいです。そのため、①の解除と②の解除を同時に申し立てても、①の解除しか認められないケースが多いです。

 

 

授受される手紙については、留置係官が内容を確認するので、本来、証拠隠滅のおそれはないはずですが、実務では、②の解除はなかなか認められません。

 

 

家族が遠方に居住している場合は、接見が認められても、手紙のやりとりが認められなければ、あまり意味がないこともあります。裁判所の対応について早急な改善が望まれるところです。

 

接見禁止一部解除の申立て方法

接見禁止一部解除の申立ては書面で行います。弁護士以外の方でも申立ては可能ですが、電話や裁判所の受付で口頭で申し立てることはできませんのでご注意ください。

 

 

申立書には、解除の対象になる方の身分証明書(運転免許証、パスポート、保険証など)を添付します。原本ではなくコピーで大丈夫です。

 

 

裁判所はマイナンバーが記載された書類を受けとることを嫌がりますので、住民票等にマイナンバーが記載されている場合はマスキングして提出します。

 

接見禁止一部解除と検察官の意見

裁判官は、一部解除の申立てを判断する前に検察官に意見を求めます。多くの裁判官は、検察官の意見を参考にして、申立てを許可するか否かを判断します。被疑者が自白している場合は、検察官は被疑者に有利な意見を出す傾向にあります。

 

 

逆に、被疑者が否認や黙秘という形で捜査機関と対決している場合は、被疑者に不利な意見を出してくる検察官が多いです。そのため一部解除が認められづらくなります。

 

接見禁止一部解除の流れ

7月1日

裁判所に申立書を提出

7月1日

裁判官が検察官に意見を求める

7月2日

検察官が裁判官に意見を述べる

7月3日

裁判官が結論を出す→申立人と検察官に連絡する

解除が認められた場合は検察庁から留置施設に連絡がいく

解除された方が接見や手紙のやりとりができるようになる

 

接見禁止一部解除と再逮捕

接見禁止は「人」単位ではなく、「事件」単位で付されます。そのため、複数の事件で勾留されている場合、全ての事件について接見禁止の一部解除をしなければ、本人と接見することはできません。

 

 

例えば、逮捕・勾留され、接見禁止がついた後に、妻の接見について一部解除されたとします。この場合、妻は夫と接見することができますが、再逮捕・再勾留され再び接見禁止がつくと、その事件についても一部解除をしない限り、妻は夫に接見できなくなります。

 

 

もっとも、最初の事件で一部解除が認められれば、再逮捕・再勾留された事件についても一部解除が認められる可能性が高いです。

 

 

検察官によっては、再逮捕・再勾留された事件については、前の事件で一部解除された人を除外して、裁判官に接見禁止を求めることもあります。

 

オレオレ詐欺と接見禁止一部解除

接見禁止一部解除の申立てをすることが多いのは、オレオレ詐欺で逮捕・勾留されたケースです。ケース別におおまかな難易度をまとめましたので参考にしてください。

 

【記号の意味】

〇→認められやすい 

△→どちらともいえない   

×→認められにくい

 

自白しているケース

①起訴前

 

接見

手紙のやりとり

配偶者・親兄弟

×

恋人

×

友人

×

×

 

②起訴直後

 

接見

手紙のやりとり

配偶者・親兄弟

恋人

友人

×

 

 

否認・黙秘しているケース

①起訴前

 

接見

手紙のやりとり

配偶者・親兄弟

×

恋人

×

友人

×

×

 

②起訴直後

 

接見

手紙のやりとり

配偶者・親兄弟

恋人

×

友人

×

×

 

*起訴された後、検察側の証拠調べが全て終了すると、申立てをしなくても接見禁止は全面的に解除されます。

 

 

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